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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第4話(the heads) 07/14


 携帯の電源を切っておいた自分の聡明さを、心から褒め称えたかった。彼女の携帯は鳴り響いても、オレの携帯は鳴らない。
  彼女の携帯が鳴れば、二人の(オレだけの可能性はあるけれど)罪悪感を刺激するけれど、オレの携帯が鳴れば、オレの申し訳なさだけが増すばかりだ。
  正直、御浜のからの着信音が、オレの彼女への執着をさらに刺激していたのは確かだ。自分でも矛盾してるとは思うけれど、どうしようもない。
  全てが終わってから、とりあえず後悔するのも、どうしようもない……だろう。
  そして、とりあえず後悔したくせに、離れがたくなってる自分もいる。吐き気がするほど矛盾だらけだな、オレは。

 裸のままシーツにくるまり眠っている彼女に、起きる気配がないことを確かめ、携帯を持って脱衣場へ向かう。電源を入れるとたまっていたメールや留守電がどんどん入ってきた。とりあえず無視して、新島に電話を掛ける。
  時間は7時5分。さすがに起きてるだろう。もしかしたら、また電源を切ってる可能性もあるけど。

『なんだよ。デートだっつったろうが。戻ってきたら、お前も孝多もティアスもいなくなってたから、気を使ってくれたんだろうとは思ってたけど』
「……取引しないか?」
『何を?……そういや、お前らあの後どうしたんだ?二人で家に来たくせに……』

 電話の向こうで、状況を判断している新島の姿が見えるようだった。

「お前、どこに出かけてるって言ってるんだ?お前んちの親、普通に五月蠅いだろ?家にいたことにしとけばいいから」
『お前んちはどうなんだ?』
「オヤジは学生時代の友達と出かけてるし、オヤジがいなけりゃ、妹もいない」
『適当だな。幼馴染みの方がよっぽど保護者だな。泉と白神にそう言っとけばいいわけか。良いけどさ』

 察しのいい男で助かる。我ながら、おかしなことを頼んでいるとは思うけど。

『……で、結局お前らは、つき合うことにしたのか?』
「別にティアスと一緒にいるとは一言も言ってないが……」
『いや、そこ否定されても。嘘臭いだけだし』

 頭から決めつけてんなよ、この野郎……。間違ってないけど。察しがよすぎて困るじゃねえか、この男は。

「テツ?何してるの?」
『ほら見ろ』

 シャツだけを着て脱衣場に入ってきたティアスの声に、勝ち誇った様に言った新島が不愉快で、確認をとる前に電話を切ってしまった。

「アリバイ工作中だよ。制服を着てくるんじゃなかったな。このまま学校サボろうかと思ってたのに」

 あと1日遅ければ良かったのにな。週末だったら大手を振って休めたのに。

「サボらなくても、学校は休みじゃないかな?」

 何故か、彼女は満面の笑みを見せ、オレの手を引いて立ち上がらせた。ヘッドレスト側にある窓は、そこが限界なのか、かろうじて外が覗ける程度の隙間が空いていた。外には雪が積もっていた。
  ここ何年か見たことがないくらい、外は真っ白なように見えたけど……。

「大雪警報が出てるって。天気予報で言ってたよ?高校は休みじゃない?」

 オレが電話をしてる間に、彼女がテレビをつけたらしい。朝のニュース番組が気象情報に囲まれて、小さな画面に収まっていた。高速道路も、JRも、私鉄もほとんど止まっているらしい。普段は天気にほとんど左右されない地下鉄も、地上に出ている部分が止まっているようだった。
  とりあえず、柚乃には連絡しとくかな。親父が帰ってきてたら、どこに行ってるんだって話になるし。

「行きたい所あるんだけど、つき合ってくれる?」

 案外、簡単なもんなんだ、って言うのが正直な感想だ。オレのずるさか、彼女のずるさか知らないけれど、なんの縛りもお互いからは与えないまま、寝ることは出来た。次はどうか知らないけれど、オレはもう、そのつもりでしか彼女に近付けないし。彼女に「どう言うつもり?」とか聞けない自分の後ろめたさが辛い。
  だけど、彼女はどうして、最後まで嘘をついたんだろう。女って、やっぱ嘘つきなもんなのかな。愛里みたいに。あの女も、肝心なところで嘘ついてたから。

「良いけど」

 オレの返事と同時に、彼女の携帯が鳴り響く。心臓に悪いから、オレみたいに電源を切っておいてくれればいいのに。手に持ったままの自分の携帯の電源を落としながら、心の中で舌打ちをした。
  着信音が、いつもかかってくる御浜のものとは違っていたことだけが救いだった。いくらなんでも、こんな朝からかけてこないか。学校が休みになったと判ったら、どうでるかは判らないけど。

 御浜のことを思うと気が重い。重いけど、もうどうしようもない。いや、そうでもないか?昨夜のことを無かったことにしたら……。
  そんなこと、オレ自身が出来るわけがないのに。本当にオレ自身が一番判らない。ティアスが目の前にいるのに、いつまでも愛里に執着してるし、何度も思い出すし、簡単にティアスに手を出しておきながら、御浜のことを気にしてるし。
  だけど、一つだけはっきりしたことは、それでもティアスにはオレを見て欲しいんだ。今でも。

「……誰?携帯」
「え?カナだけど……」

 オレの手前(もしかしてオレが嫌そうな顔をしていたからかもしれないけれど)、彼女は携帯に出るのを躊躇っていた。申し訳なさそうな顔をしたまま、鳴り響く携帯を開く。その画面を、ちらっと確認したら、彼女の言う通りだったことにオレは胸をなで下ろした。

「出ればいいのに」

 彼女から離れ、再び風呂場に向かった。手に持っていた携帯の電源を入れ、柚乃にメールを打ちながら。ティアスの行為に、少しだけ心が躍る。彼女の反応に、彼女の行動に、オレのことを見ている実感に、オレ自身が激しく揺さぶられているのを感じていた。最初に彼女と二人で観覧車に乗ったあの日よりも、もっと激しく。
  ティアスだけを真っ直ぐ見ていられたら、どんなに楽しいだろうか。
  そう考えながら、真や相原達がオレのことを枯れたのなんのと言ってたことを思い出して、余計にへこんだ。意外と、当たってるかも……。楽しいだろうか、じゃねえっつの。
  風呂場を出て、彼女が電話を終えるのを遠目に確認しながら、再び携帯の電源を落とした。

「佐伯さん、新島と一緒にいるんじゃないのか?」
「元々、今日は灯路を学校に行かせてから会う予定だったから」
「そっか。いいのか?」

 行きたいところがあるって言ってたのに。

「ん。どうせ夜の話だし。カナだって、美衣がいるからこっちに来るときくらいしか自分だけの時間がないんだし」
「……そっか」

 ミイ?そういや中学生くらいの娘がいるんだよな。つーか、娘とそう年の変わらん男と恋愛してんなよ。不倫じゃないだけマシかもしれんけど。新島とのことを知って以来、雑誌読んでも、ちょっと生々しい感じがするんだよな。

「そういや、佐伯さんって、旦那とかいないのか?」
「え?結婚して、美衣が生まれて2年で離婚したって言ってたよ?彼氏はいっぱいいたらしいけど」
「ふうん」
「興味ある?」

 なんだそりゃ。妬いてんのか?……なんて答えて良いやら。

「別に。それより、さっさと出て、何か食べに行こう」

 あからさまに話を変えたけれど、彼女は黙って頷き、着替えを持って洗面所へ向かった。妙に聞き分けが良くて、ちょっとおかしい感じだけど。
  どうも、釈然としない。

 釈然としてないのは、ティアスも一緒か。何だろな、この微妙な距離感は。もっと近付いても良いと思っているのはオレだけなのか。多くを求めることの出来る立場ではないと判ってはいるけれど。
  いや、立場は良いだろう。オレはフリーなわけだし、ティアスも別に誰とつき合ってるわけでもないんだし。別に何がどうなろうと、つーかなってるんだし、良いだろう。そもそも、誰かに彼女と一緒にいるところを見られて困るのは、オレだけなわけだし。いろんな意味で。オレが見られて困るって言うのが、おかしいのかもしれないけど。

 軽く朝食を食べたあと、彼女の誘導で地下鉄の駅に向かう。案の定、地上部分は復旧作業中だったけど、地下部分は動いていた。名駅の近くに出来た複合施設内の地下にあるジャズクラブに行きたいというので、満足に移動できない彼女のために、オレがそこまで連れて行くはめになる。
  良いんだけれど。この、彼女は使えるものを使っていて、自分はそれに使われている感覚って言うのは、あんまりいい気分ではないな……。彼女が心配にはなるけれど。だけど、それとは少しだけ違う気もする。
  ティアスのこと、好きだとは思うけれど。何かが引っかかってる。それがオレの持つ、彼女への距離感なんだろう。

「来たこと無いの?名駅」

 地下鉄の駅を降りて、きょろきょろと辺りを見渡す彼女がおかしくて、思わずそう突っ込んでしまった。

「ん……最近は、こっちに来たときに乗り越して来ちゃったことはあるよ。後で灯路に聞いたら、ここで乗り換えても良いって言われたけど。昔、こっちに来たときと、随分変わってるんだもの」
「昔?どれくらい?お前、あちこち転々としすぎてて、どこにどれくらいいたかわかんねえし」
「この辺にいたこともあるよ?その時は、義兄さんと一緒に、灯路の家にお世話になってた。テツはずっとこの辺なの?」
「ああ……いや、母親が死んですぐくらいに、ヨーロッパの方に少しだけ住んでたって言ってた気がするけど、あんまり覚えてない。その話がホントなら、オレ未だ4歳くらいだしな」
「そうなんだ。そのころ私もイタリアにいたよ?父さん達が未だ生きてたころで、義兄さんがちょうど寮に入ったころだったから、よく覚えてる」

 そういや、コイツの兄貴の話を聞くことって無かったな。最初のころはブラコンだの何だのと新島に言われてたけど。

「お前の兄貴って、何やってんの?」
「……えっと……とれーだー?」
「何でそんな不安そうに言うんだ。よく判ってないのか?お前んちの収入源だろうが。何の勉強してたんだ。寮に入ったってことは、どっかの学校に行ったってことだろうが」
「何でいつもそう喧嘩腰なのよ。そのころは未だ5歳とかだし、判んないわよ。兄さんはいろいろ教えてくれたけど、自分のことはあまり言わない人だし。……えっと、たしか地政学だった気がする」

 よくわからん。聞くんじゃなかった。知識の無さを露呈したって、ろくなことにならないし。まあ、ティアスも判らなくて、オレも判らないならそれでいい気もするけど。
  彼女の手を取り、地下街を歩いて、地上に向かう階段を登る。電車は止まっているはずなのに、思ったより人がいた。

「あそこ、何があるの?見にいこ?」

 駅前のロータリーの先に、ツインタワーの広場があるのを見つけて指さしていた。

「イルミネーションがあるだけだって。こんな朝っぱらから行っても仕方ないだろうが」

 彼女に引っ張られるままエスカレーターを昇り、広場を廻る。暗くなったらもう一度来ようと約束をしたら、嬉しそうに笑った。彼女と一緒にいる1日が決まったことが、オレも嬉しかった。それで充分な気もしていた。
  入ってきたエスカレーターとは別の出口から出て、ビル内に入る。タワーの高層階にあるホテルに直結してるエレベーターが並んでいた。雪なのに人が多いと思ったら、ホテルの客だったようだ。夜中に止まった交通機関が少しずつ復旧しているころだからか、それとも端にチェックアウトの時間だからか、エレベーターから出てくる客が多かった。

「……愛里?」

 エレベーターから出てくる客の中に、一際目立つ派手なスーツケースを転がしながら歩く愛里の姿があった。一人みたいだけど……。
  向こうもオレに気付いたらしく、笑顔で近付いてくる。

 オレの隣に、ティアスはいなかった。
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