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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第4話(the heads) 06/14


 彼女を連れて、オレの家とは反対方向の列車に乗って、栄で降りた。結局また二人で、あの観覧車に乗っていた。
  だけど、それからは何もかもシナリオ通りに進みすぎて怖いくらいだった。
  観覧車で隣に座る彼女と当たり前のようにキスをする。二人で、以前ここに来たときのことを話しながら。

『邪魔されるのは、いやかな。いやじゃない?』

 彼女の台詞を思い出しながら、あの時と同じように携帯の電源を手探りで落とした。

『そう、良かった。一緒だね、私と』

 あの時の「満たされる」様な感覚の根本が、今ならはっきりと判る。

「雪、降ってきたよ?」

 オレが思ったように、彼女もまた『あの時と一緒』だなんて言うのだ。それが、オレの期待を膨らませる。
  膨らむと言うより……太くなるとでも言うべきか。破裂しそうだ。

「めずらし。この辺、年に1回でも降ればいい方なのに。雪に慣れてないから、ちょっと降ると、すぐに交通網が麻痺しちまう。電車止まったりして」
「そうなんだ。そう言えば、こっちに来てから、あの日くらいかな、雪が降ったのって。あっちにいたときは、雪なんかしょっちゅう降ってたから」

 そうか、とだけ返事をして、彼女の手を取って観覧車を降りた。「あっち」の話は聞きたいと思う反面、聞くのは怖かった。だから、どうしても逃げてしまう。
  家にも戻りたくない、彼女の過去も知りたいけど、積極的には知りたくない。気になるけど、知らないままでいたい。
  オレは何も動きたくないけれど、このままどうにかなってしまいたい。そんな都合のいいシナリオって、あるんだろうか?
  手を引いたまま、観覧車を後目に再び町に出た。

「お前、今夜どうするんだよ?また戻らないつもりだろ?」

 雪がどんどん酷くなってくる。町は酔っぱらいと夜の商売の人でいっぱいなのに、妙に静かで不気味だった。
  行くところがないなら、家に来れば?そう言うつもりだった。だけど、オレは家に帰るつもりはなかったけど。

「沢田先生って、今日はいらっしゃるの?」
「え?いや……和喜さんと出かけるって」

 以前なら、オヤジがいない方が、遠慮しなくて良いと言ってたけど。今はどうだろう?あの時と今とでは、オレとティアスの距離が違う。

「柚乃は?」
「……どうだろ。オヤジが家にいないときは、大抵、家にいないけど。こないだみたいに」
「じゃあ、お邪魔しても良い?」

 それは一体どういうつもりで言ってる?今の状況なら、そう言うつもりで来るととられてもおかしくないぞ?
  何もない、なんて、今のオレには言えない。

「良いよ。……そろそろ終電無くなるから、戻るか?」

 オレは正直、戻りたくないけど。だって、オヤジがいなくても、秀二は勝手に出入りするし、何より御浜がいる。離れたくてここまで来たのに。

「うん」

 彼女は、何故か真っ赤になって顔を伏せた。これは行ける気がする!完全にOKのサインだろうが、これは。
  だけど家に来たら、御浜がいるってこと、判ってるんだろうか。もしかしたら、彼が来ることが判ってて、オレんちに来るのか?
  しかし戻ると言ってしまった以上、必死で余裕の顔を見せながら、地下鉄の駅に向かう。

「……終電、星ヶ丘までだって」

 恵みの雪だった。流される自分の幸運に感謝したくなるくらい。本当に幸運なのかは謎だけど。
  案の定、地下鉄の地上部分がストップしてしまっていた。

「バス、走ってるかもよ?」

 とりあえず地下鉄に乗ろうと、オレを引っ張る彼女を止める。

「吹雪いてるのに?」

 地下鉄もその内、復旧するだろう。多分バスもなんだかんだ言ってこれくらいなら走ってるだろう。雪はどんどん積もるし、風も強くなってくるけれど、この地方に降る雪なんて、そんな大したもんじゃない。
  わかってるけど。帰りたくない。オレが、家に来る?ってきいたけど。矛盾してる行動かもしれないけど。何とかならないものか、なんて他力本願なことを考えてた。

「どうしよう?」

 上目遣いでそう聞く彼女がずるいのか、何も言わないオレがずるいのか、判らなかった。
  黙って彼女の手を引いて、駅を出た。彼女は逆らわないし、何も言わない。雪を避けて地下街を歩く。駅から離れたところで地上に出て、繁華街へと向かう。
  コートの下の学ランを悟られないよう、ホテルの部屋に入ったところで、オレに引っ張られるままついてきた彼女が、扉の前でやっと口を開いた。

「帰れないから、だよね?」

 その言葉に、返事が出来なかった。代わりに、彼女の背中を押して部屋に押し込めた。

「制服着てるから。見られないように、だよね?」

 まるで、オレの代わりに彼女が言い訳をしているようだった。それが妙に申し訳なかった。
  こんな時に、誘いの文句すら言えないのか、オレは。普段のように、軽く誘えばいいのに。現実味が帯びてきただけで、どうしてこんなに怖じ気づいてんだ。

 手を伸ばした後にあるものが、怖くて仕方がない。手に入れる覚悟がない。だって、オレも何も言わないけど、彼女も何も言わない。
  何も言わない代わりに、彼女がオレの言い訳を口にする。

 この状況になって、このまま黙ったまま押し倒すのか?さすがにそれは無理だろう?
  何も言いたくない。オレからは動きたくない。だけど彼女と共犯のまま、オレは彼女と寝ようとしてるのか?
  お互い様だと、オレは自身に言い聞かせるくせに、彼女がその態度を続けることが、こんなにも不安で不満だ。
  オレは動きたくないけれど、彼女には動いて欲しいなんて。虫の良い話だ。
  彼女がオレを好きだから、仕方がなかったんだ。そんな言い訳、通じるわけがないと判ってるのに。

「黙ってないで、何か言ってよ」

 部屋の隅に陣取る、やたらでかい真っ赤な布貼りのソファに腰掛けながら、オレを責めた。スカートの中、見えそうですけど。誘われてるって思うのは、ただの自惚れだろうか。
  黙ったまま隣に座ったら、入れ替わりに彼女は立ち上がり、風呂場へ向かった。

「逃げた?今」
「なんで今出てくる台詞がそれなのよ」

 怒ったのかと思った。だけど、彼女は何故かちょっと暗い口調のまま、風呂場の扉の前で立ち止まって、こちらを見ていた。

「……そういえばテツには、昔、彼女いたって聞いたことある。こういうとこ、来たことあるの?」

 ホントに、どう言うつもりなんかな、この女は。今まで何度も聞くタイミングはあったはずなのに、初めて突っ込んできた。

「……一応」

 まあ、ウソついても仕方ないしな。なんか責める口調だったから、気にしてるみたいな言い方だったから、ウソついた方がいいような気もしたけど。今さら初めてですっつっても、白々しいし。
  人のことは言えないけど、コイツも一体何を気にしてるんだか。

「でもまあ、真達の言ってたことで、大体当たってるけど」
「そうなんだ。佐藤さん、いるもんね」

 愛里愛里って五月蠅いよ。

「お前は?お前こそ、蓮野……」
「今まで彼氏とかって、いたことないし。こういう所来るのも初めてだし」

 逃げるように風呂場へ入っていった。自分が初めてだから、オレを責めてたってことか?よく判らんし。
  それにしても、蓮野とはホントに何もなかったのかな。逆にあんだけ否定されると、疑わしい。何もなかったのに、芹さんがわざわざベルギーから来るだろうか。芹さんが極端なのかもしれないけど。
  蓮野のことも気になるけど、御浜のことも気にならないでもない。彼と二人でいるかどうかもオレは結局知らされない。後から「一緒にいた」って聞いて、どうして良いか判らなくなることはあるけれど。
  蓮野のことは、少なくとも過去のことかもしれないけれど、御浜のことは現在進行形だ。彼に対して彼女が悪い印象を持っていないのも知ってるし、仲が良いのも知ってる。何より、御浜はティアスに執着してる。驚くほど。
  ずっと御浜の横にいたから、オレが誰よりそれを感じとってる。
  だけど、オレはもう、引き下がれない。引き下がる気もないけど。ただ、覚悟が決めきれないだけで。

 彼女は、良いってことなのか?多分、その風呂場の扉に鍵はないと思うぞ?ガラスで中が丸見えじゃないだけ、ましな方だ。
  風呂場の扉のノブに手を掛け、押し開けようとしたら、鍵はかかってないけれど、重くて動かない。中でバリケードでも作ってんのか?妙な悪あがきをしやがって。

 仕方なく扉の前で座り込んで彼女を待つ。待っていたら、ソファのある辺りから携帯の着信音が鳴り響いた。ティアスの携帯だった。そう言えば、カバンを置いていったような気がする。よく知ってる着信音だ。これ以上聞きたくなかったから、必死に聞かないように、見ないようにしていた。

「……何してるのよ」

 髪をまとめたまま、Tシャツにミニスカートで風呂場から出てきた。中に着るものとかあったろうが。ホントに往生際の悪い。

「いや、待ちきれなくて?」

 その台詞に怒るかと思ったら、妙にしおらしくなって、顔を赤く染めた。立ち上がって彼女の手をとり、抱きしめた。

「……何も言ってくれないんだね」

 彼女は不満そうにそう言ったけれど、いつものように、オレを抱きしめ返した。
  オレも、あのクリスマスの日から、なるべく会うようにし、なるべく触れるようにしてきた。だけど、彼女が受け入れなかったら、それも出来なかったはずだ。
  キスをしてから、風呂場の扉の横にあったソファに彼女を押し倒した。彼女は抵抗しなかった。
  なのに、御浜からの着信に、彼女は手を伸ばす。

「とるな」

 自分でも驚くほど強い言葉で、彼女の手を押さえた。

「……とらないから」

 オレに体をすりよせ、腰に手をまわして抱きついた。

「テツも、もし佐藤さんから電話があっても、とらないでよ?」

 やっぱりオレは、彼女の問いに答えることは出来なかった。

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