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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第4話(the heads) 05/14


 芹さんがいなかったら、オレは多分、彼女を抱き寄せてただろう。あれ以来、言葉に困るとそうしてきたから。それで伝わると思ってた。甘えでもあった。
  だけど今は、俯く彼女からも、真っ直ぐきらきらした目で見つめてくる芹さんからも、逃げられない。

「一人だと……」

 弾けないから。指が動かないから。言い訳に思われても、ティアスにはそう言おうと思った。
  愛里のことを気にしすぎてるのも本当だし、ここまで近付いた彼女に対してウソがないのも本当だ。それを判って欲しいとは言えないし、何を言ってもウソになる気がした。
  だからせめて、それ以外のことでは、きちんと答えようと思った。楽になれるかもしれないって言う期待がなかったわけではないけれど。

「あの、テツ、良いの。ごめんね。言わないで」

 オレの言葉を遮り、頭を下げたのは彼女だった。まるで、オレの台詞を判っていたかのように。

「なんで?一緒に練習しよう。ここなら、夜遅くても大丈夫なんだろ?あと、英語も教えてくれるって言ってたくせに。責任とらせるって言ったろうが」

 手くらい握っても良いよな……。芹さんは、さすがに怒り出したりはしないだろうから。
  震える彼女の手にそっと触れ、軽く握った。

 それにしても、冗談だって思われてるって判ってるときは、愛里にも歯の浮くようなことを簡単に言えるのに。どうしてこんな子供をあやすような台詞にさえ、オレはこんなに必死なんだ?

「うん」

 小さく頷いて、手を握り返してきた。その部分だけ、妙に血の巡りが早いような、そのおかしな感覚に、目の前がくらくらする。
  この女はずるい。オレは、ただ一人と言い切れないくせに、完全にはまっていた。
  彼女も、オレを見てる。このまま抱きしめたかった。芹さんがいなければ。

 ……勝手に二人の世界に入ってたけど、この人、もしかして怒ってる?恥ずかしいって言うより、怖いぞ。

「仲直りした。良かった」

 子供みたいに喜んでいた。なに考えてんだ?蓮野のことを口にしつつも、ティアス狙いか?とも思ったけど、何か、違う。つーか判らん!!

「仲直りっつーか……この恥ずかしい絵ヅラを見て、お前は何も感じないのか」

 ティアスに気を取られていて、見てなかったけれど、いつの間にか新島が戻ってきていて、芹さんの後ろに立っていた。さすがに新島に見られるのはメチャクチャ恥ずかしいんですけど。恥ずかしい絵ヅラとか言うな。

「え?なんで?ティアスも喜んでるみたいだし」
「……よ……喜んでるって言うか……」

 彼女はオレから手を離すと、あり得ないくらい顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまった。オレもそうしたい気持ちだったが、コイツがやるのは可愛いけど、オレがするのはどうだ。

「お前、ハスヤリョウヘイがどうとか言って、沢田に噛みついてたろうが」
「でも、ティアスが喜んだら、蓮野さんも喜んでたし」
「つき合ってんのかどうか、突っ込んだくせに?」
「だって、いいかげんだったら、あんなにティアスのことを大事にしてきた蓮野さんがかわいそうだと思って」
「判らん。その考えの軸が判らん!」

 新島、もっと言え。

「大体、沢田もティアスもはっきりしないっつーか。あからさまなくせに。めんどくせえな」

 ……それ以上喋んな。にらむぞ。 

「そんなことより灯路、カナは?」
「あ、そうだ。人のことに構ってる場合じゃなかった。カナさん、もう名駅に着いたって言ってたから。こっちで店を予約してあるらしいし」

 そう言って、携帯で時間を確認をした。リビングの片隅においてあったコートハンガーに向かい、掛けてあった黒いダッフルコートを羽織った。

「いつもの所?」
「そうそう」

 自分のことでいっぱいだな。あっさり話変えたし。まあ、あんまり会えないみたいだしな。妙に浮かれてる新島が、不愉快でもあり、ほほえましくもあった。

「だったら、二人でここに戻ってくるよね?」
「ああ。今日は泊まれるって。じゃ、オレもう出るから。続きは勝手にやっといてくれ」

 言いたい放題言って、それか。
  しかし、めんどくせえ、か……。当の本人は、充分判ってんだけどさ。
  新島を見送った後、ティアスがまた申し訳なさそうにこっちを見ていた。

「……ピアノ、また今度にしようか?一緒に練習するんでしょ?」
「ああ」

 頷いてから、彼らに気を使って出ていこうと言った、彼女の台詞を思い出した。

「コートを持ってくるから、待ってて」

 やっと普通に笑顔を見せてくれた。彼女の言葉に再び頷いて、オレも掛けてあったコートを羽織る。芹さんも同じように、ジャケットを着た。
  さっき着替えてくると言ったときより、随分早かったわりに、彼女はしっかり着替えていた。初めて見るミニスカート姿だった。
  オレとティアスが並んで歩き、その後ろを芹さんがついてきた。ここに来るときと同じように、彼女を自転車の後ろに乗せ、動き出そうとしても、彼は未だついてきた。

「……えっと……芹さん、どこに今いるか知らないですけど、戻らなくて良いんですか?」

 いつまでもついてきそうな雰囲気の芹さんに、たまらず突っ込んでしまった。かなり迷ったけれど。二人でいるのが当然、と思われてなかったらどうしようかと思って。
  いや、当然ではないのだけれど。

「だって、オレ、今あの部屋に寝かせてもらってますから。行くところないし。灯路がいないときに、灯路のうちに世話になれないですしね」
「は?あの部屋って……」

 ティアスと一緒に暮らしてるってこと?!

「……たまに、灯路の家に行ってるのよね、孝多は。それに、カナが結構いきなり来ることもあるから、灯路もしょっちゅういるし……」

 荷台に座ろうとしていたティアスが、オレから目をそらしつつ、妙なフォローを入れた。
  そんなフォローはいらん!!

「どしたの、ティアス?」
「……あんたの天然ボケは、罪深いと思うわ」

 しかも芹さんは天然か、やっぱり!

「オレのこと、怒ってる?」
「そう見えるなら、そうかもね」

 ティアスの溜息と共に、オレの怒りも空回りした。なんというか、調子の狂う人だな。いや、オレが怒る理由なんて、無いはずだけど。別にオレは、ティアスとつき合ってるわけでもないし、この女がどこの誰と一緒に暮らそうが、関係ないわけだし。
  関係ないこと無いのは、オレだけで。それが、最悪なくらい不愉快だ。

「あの、テツ?誤解しないで欲しいんだけど。怒らないで」
「誤解?オレが何を?別に怒ってないし」
「思いっきり怒った顔してるくせに、何でそうなの?良いからもう、行きましょ?」
「行きましょ?って、お前な!」

 これって、オレが怒ってる理由を、ティアスは理解してるってことだろ?そのくせ、「良いから」って、一体何がよいと言うんだ!お前は良いかもしれないけど、オレはよくない!

「……何よ」

 って、言ってやりたいけど、言えない。みっともないのが判ってて。完全に怒りにまかせて怒鳴ることが出来たら、楽な気がするけど。こんな時、妙に冷静な自分が嫌いになる。
  こういう女だって、判ってるのに。大体、新島だって普段、コイツとあの部屋に二人きりで泊まってくことがあるのも知ってるし。でも、やっぱり、新島がするのと、芹さんがするのとは違う!
  せめてここに芹さんがいなかったら、外じゃなかったら、あの夜のように、言いたいことを言えるんだろうか。

「とりあえず、ここに突っ立ってると、他の住人に迷惑では?」

 誰のせいだ。他人事みたいに言う芹さんを、オレ達は睨み付けるが、彼は気付いてるのかどうかといった態度だった。

「行こう、テツ?」
「あのな……」
「孝多。私ね、テツと一緒に行きたい所あるから。二人にして欲しいの」

 この女も、言うに事欠いて、二人にして欲しいって!?つーか、コイツ、その台詞が何を意味してるか……。

「あ、じゃあ。オレは適当に時間潰してるから」

 え?しかも、そんなあっさり引くの?なんなんだこの人?

「部屋にも、カナと灯路がくるんだから。判ってる?」

 彼女の言葉に黙って頷いて、彼は手を振りながら立ち去っていった。その、あまりにさっぱりしすぎた態度に、呆気にとられてしまった。
  てか、これはこれで、どうよ?ティアスの台詞は嬉しいような恥ずかしいような、妙な感じだけど。芹さんのこのティアスに対する服従っぷりは?!どんな関係だよ?

「なんでそんな変な顔してんの?」

 驚いてんだよ。あきれてんだよ。おかしいと思え、この状況を!!自分の言った台詞の重さと衝撃を!
  そうとは言えないけど。

「変な顔って言うな。つーか、あの人は犬か?お前がこうしたいっつったら、あっさり聞くのか?おかしくない?」
「私の言うことを聞いてるわけじゃないよ。それより、行こう?」

 オレの服の裾をつまんで、引っ張り、自転車に乗るよう促した。彼女たちの妙な関係を、これ以上、「怒りながら」突っ込んでいても仕方ないと思い、言うとおりにした。
  夜は長い。彼女の意志が、オレと同じなら、この後ゆっくり聞けばいい。出来ることなら、オレが彼女との関係を握りたい。
  何かはっきりさせたくないことがあるのは、お互い様だ。

「ホントに行きたい所なんかあるわけ?」
「無いよ?」
「そう。なら良かった」

 オレの台詞をどう受け取ってくれたのか、彼女は黙ったまま、オレの腰に回していた手に力を入れ、抱きついた。

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