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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第4話(the heads) 04/14


 着替えると言っていたはずの彼女だったが、コートとセーターを脱いで、Tシャツで出てきただけだった。
  当たり前のようにオレの右手側に当たる、ソファのアームに腰掛けた。

「灯路、カナは何時頃来るの?」
「さあ?今夜来るとは言ってたけど、あれから連絡ないし。移動中じゃねえのかな?今日は大阪だって言ってたし」

 ……佐伯さんが来るのは判ったけど、芹さんは何でここにいる?いや、悪い人じゃないんだけどさ。ちょっと噛みつかれてるだけだろ?オレは。ティアスのことで、妙な疑いを持たれてるだけで。
  よく考えたら、何でオレばっかりそんな目で見られるんだ?他にもいるだろうが。知らないだけなのか?さっき礼を言ったその口は紡いだまま、またじっとオレを見てるし。

「あ、カナさんだ。もしもし?」

 いつものように雨に唄えばのメロディを奏でる携帯をとり、新島はオレ達から距離をとるためにキッチンに向かった。できれば、芹さんをコントロールしといて欲しいんですけど。

「テツ、ピアノ弾いてよ。一曲弾いたら、出かけようか」
「出かける?」

 彼女がリビングの隅にある例の小さなピアノを指さすが、オレは動く気になれなかった。

「うん。カナ、もう名駅に着いてると思う。灯路に電話してくるってことは。だから、カナが来る前に出ていこう?カナが来たときにここにいたら、止められちゃうから」
「まあ、あの人らに気を使うのは判るけど……それで良いのか?お前、佐伯さんとは」

 お前のプロデューサーでもあるわけだろ?彼女は。

「良いの良いの。私に用があるときは、私にかけてくるから。カナはその辺、ちゃんと線を引いてるよ。灯路と私が一緒にいるのを知ってても、みんなで会ってても」
「ふうん。一緒にいるなら、つながりやすい方でいい気がするけどな。いつ来るのか聞くくらいなら」
「カナの、灯路への気遣いよ」

 ……新島のプライドを、そんなことで守ってるとでも?端から見てる分には、彼は振り回されているようにしか見えないけれど。オレはそんなのは嫌だけど。
  嫌だけど、振り回されてるのか、オレも。

「何よ、怖い顔してる。睨まないでよ」

 ソファから離れようとしないオレの手を引き、立ち上がらせた。お前も愛里も、オレのことを振り回すくせに。振り回されるオレが悪いのか?なんでそう言うことを簡単に出来るんだ。芹さんの前で、オレの手を取るなんて。
  ちらっと芹さんを確認したけれど、睨まれてはいなかった。見つめられてはいたけれど。

「待ってて、楽譜持ってくるから」

 彼女は無理矢理オレをピアノの前に座らせておいて、奥の寝室に戻ってしまった。

「やっぱ、仲良いんですね?」

 彼女がいなくなった途端、芹さんはオレに声をかけた。

「……そう見えますかね」

 背中から視線を感じる……。ものすっごく見てるよ。保護者か?それとも、蓮野のことを口にしながらも、実はティアスのことを狙ってるんじゃねえのか?

「でも……うーん。白神くんといるときは、蓮野さんといるときみたいだったから。彼との方が仲良く見えたかな」

 ちょっと待て、いつ御浜と会ったんだ、この人!?オレ、かなり頑張ってティアスと会ってたぞ、この2週間。この人単独で御浜と会うってコトは考えにくいし……。昨日か?
  思わず、芹さんの方を向いてしまった。オレは相当嫌な顔をしていただろうに、彼は特に気にすることなく笑顔のまま答えた

「そう言えば、幼馴染みだって聞いてます。一緒にいた、背の高い……」
「泉 真?」
「あ、そうですそうです。彼がそう言ってました」

 真の策略か。気にするなと思っても、気になってしまうし、気にしてしまう自分も嫌で仕方がない。何でよりによって、御浜なんだ。
  だけど、御浜が彼女に興味を持たなかったら、オレはそもそも彼女を見ようとしていたか?

「あれ?灯路ってば、未だ電話してる。お待たせ、テツ」

 ちっとも戻ってくる気配のない新島を後目に、ティアスがオレの横に戻ってきた。そして、手書きの楽譜をオレに差し出す。

「……これ、お前が書いたの?」
「ううん?カナよ」

 初見で弾けってか?知らない曲を。そんなにしっかりやってないぞ、オレは。オレの後ろに立つティアスを睨み付けたかった。
  ピアノ曲として書かれてはいるけれど、随分テンポも速いし、これって……。

「ロック?あれ?でも、原曲は……」
「クラシックだよ。知ってるでしょ?」

 確かに、原曲は練習曲として弾いたことあるけど。指が動いたり動かなかったりのこの状況で、初見の、こんなアレンジの曲を弾けと?この女。しかも佐伯佳奈子の手書き?!
  それにしても……最近は女優業の方が目立っているとは言え、本業はこっちだもんな。ちょっとすごいな。

「ちょっと練習……」
「いいよ」

 とりあえず、時間稼ぎも兼ねて弾く真似だけでもしよう。今までティアスの前では、指が動かなかったことはなかったし。一人だと、弾けないんだよな。
  仮に弾けても、練習不足が露呈しそうだな。
 
  心配していたよりはずっと、スムーズに指が動き始めた。ただ、危惧していた通り、練習不足は否めなかった。愛里が戻ってくるまでに、何とかしないと。課題も出されてるし。
  それにしても、何でティアスの前では、御浜の前では、弾けるんだ?

「すごい!楽譜見ただけで弾けるんですね!」
「テツ、あんまりピアノを弾いてないの?」

 案の定、芹さんは誤魔化せても、ティアスは誤魔化せなかった。しっぽがちぎれんばかりに振ってるのが見えるかのような芹さんに比べて、彼女の態度はちょっと棘があった。

「いや、普段、あんまり弾かない感じの曲だし」

 練習しろっての、自分。出来るなら、いや、しないといけないのに、何でかっつーか。

「この間、弾いてくれたとき、良かったんだけどな」

 今は悪いってか?しかし、この女は歯に衣着せるっつーことを知らんのか?

「お前、オレを楽しくしてやるっつったじゃん?」
「言ったよ?」
「オレのピアノが綺麗だって言ったろ?」
「言った」
「要するに、楽しそうに見えないし、綺麗でもないってことだろ?今のオレは。つまらなそうなまま、ってこと。それに今さら失望した、と」

 彼女はさすがにオレの側から逃げるような真似はしなかったけれど、その台詞に返事をしようとはしなかった。多分、オレの声に卑屈さと、多少の怒りが混じっていたから。
  きついことを平気で言うくせに、最後の最後で踏み込んでは来ないんだな。

「えっと、オレ、何かよく判んないんですけど」

 オレとティアスの間に流れる妙な空気に、芹さんはいつもの口調で、何のてらいもなく割り込んできた。振り向いて彼の顔を見なくても、いつものように笑顔でと言うことは判った。

「ティアスは、沢田くんのピアノが好きだって言ってたから」

 どうしてこの女は、オレ以外の前ではそう言うことを言うかな。照れるだろうが。オレの前で言ったときは、この程度の照れではすまなかったけれど。

「言……言ったけど」

 恥ずかしそうに呟き、オレの背中を指でつついた。今さら何を照れてるのか。

「ティアスが一緒に練習すれば良いんじゃない?練習不足だって言うなら?」

 何言ってんだ、この人!オレとティアスが仲の良いことを気にしてるくせに、その発言に至る意味が判らない!

「ちょ……孝多……テツに迷惑でしょうが。何で簡単にそう言うこと言うのよ。テツには佐藤さんて言う先生がいてね?」
「でも、沢田くんは、責任とれないのに不用意な発言をするなって、ティアスに怒ってるように聞こえたから」
「いや、芹さん!オレ、そこまで言って……」

 思わず振り向いて、噛みついてしまうところだったが、彼は平然とした顔をしていた。だから、「そこまで言ってない」と、彼の言葉を否定することも出来なかった。
  何だ、この人?ただのほんわかした兄ちゃんかと思ってたのに……、妙に鋭くて調子が狂う。何だかそう言うところは、御浜みたいだとも思ったけれど、御浜ならこんな場面で口は出さない。
  御浜なら……。いや、今の彼なら、彼女が好きな彼なら、違うかもしれないけど。でも、距離の取り方は確実に御浜の方がうまい気がする。だって、オレもティアスも、どうして良いか判らない。

「さ……佐藤さんが帰ってくるまでの間でいいですから……」
「おう」
「一緒に、練習しませんか……?」

 何でおどおどしてるんだ、この女。しかも、何故か敬語になってるし。
  彼女の方に体を向け、座ったまま、真っ赤になって俯いていた顔を見上げた。

『テツに、……いて欲しいよ』

 そう呟いた時の彼女と、同じ顔をしていた。
  別に普段、頼み事もお願いも命令も簡単にするくせに、何でこんな風に申し訳なさそうな、恥ずかしそうな顔をするんだ?

「え?沢田くん、ティアスと一緒に練習すると困るんですか?こういうのって、一人でやらないと行けないんでしたっけ。ごめん、オレ、よくわかんなくて」
「いや、何で芹さんが謝るんですか。別に、困るとかそう言うわけじゃ……」

 あー、もう、この人、調子狂うな。何でこう、ストレートなんだ。

「でも、ティアスが何か、ものすっごく申し訳なさそうにしてたから。何か理由があるのかと思って」

 やっぱり、申し訳なさそうにしてるように見えるんだ。何でだ?理由なんか、オレが知りたいっつーの。

「だって、テツには佐藤さんがいるし」

『沢田くんなんか、佐藤さんのことばっかのくせに!何よ!』

 愛里のこと、気にしてる?もしかして嫉妬してるってことか?

『佐藤さんが帰ってくるまでの間でいいですから』

 違う。愛里のことを気にしすぎてる、オレに気遣ってるだけだ。
  どんなにティアスにキスをしても、抱きしめても、オレはやっぱり愛里を見ている。彼女はそれを知ってるだけだ。
  気にしなくて良い、って。愛里のことなんか関係ない、って。何度言っても、彼女は信用しない。
  オレが心からそうは言ってないことを、彼女は知ってるから。

 オレのせいだ。

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