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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第4話(the heads) 02/14


「下見って?」

 相原の質問責めは続く。オレが聞かずにすんでるから、実はありがたかったりするけど。興味なさそうな顔をしながらも、聞くことはきっちり聞いとかんとな。

「今度、ここで歌うの。だから、その下見」
「それ、昼か?」
「ううん。夜だけど。でも、7時くらいかな」

 そりゃ良かった。こんな所で、そんなチャンスをもらってるなんて愛里が知ったら、またいちゃもんつけかねん。佐伯佳奈子がバックにいる話や、音無悠佳とも何かありそうな話なんか絶対出来ねえな。
  まあ、する事もないだろうけど。

「歌う?歌手?アイドルとか?」

 アイドルて……。確かに、顔は相当可愛いけど。でも、それを聞きながら珈琲飲むのはちょっと勘弁かも……。

「違うよ。ジャズなの。この間、紹介してもらったジャズピアニストの人が、ミニライブをするから、一曲だけゲストで私も出るの」

 ジャズか……。音無さんと佐伯さん、どっち経由かな?いや、そもそも音無さんと連絡はとってるのか?ほとんど話を聞かないけど。間を取り持ってくれるのは賢木先生なのか、それとも投げられっぱなしなのか。オレはオレで、オヤジに聞くことも出来ないけど。
  そう言えば、佐伯さんはオレとティアスが一緒に舞台に立つことを推してたな。正直、そんなすごいこと出来るとは思えないけど、ちょっとだけ憧れるかな。簡単に舞台に立つ彼女を見てると。
  オレも、なんだかんだ言って、コイツに嫉妬してるのかもしれない。
  思わず、オレの膝に乗せられた彼女の手を強く握ってしまった。微かに彼女の顔が歪んだけれど、何食わぬ顔をし続けた。

「ジャズ以外も、何度かライブやってるよな」

 彼女の方を向いてそう言ったら、何故か顔を赤らめ、黙って頷いた。

「えー何だよ。沢田は見てんのかよ。誘えよな」
「新島に言えよ。オレはたまたまだっつーの」
「今度やるときはオレも呼んで。絶対見に行くから。ここでやるのもさ。どうせ沢田は平日はレッスンとか言ってつき合い悪いしさ。携帯、教えてよ」

 軽いなあ……。早いよ、番号聞くの。ティアスも教えちゃってるし。アグレッシブと言うか何というか。

「陽向さん、依藤さんいらしてますよ」
「あ、ありがとうございます。テツ、私ちょっと行って来るね」

 店長に呼ばれ、立ち上がる。一瞬、オレに手を伸ばしかけたが、やめて店内に入っていった。

「ヒナタ?あの子、ティアスじゃないの?」
「陽向は日本での名字だってよ。何か説明聞いたけど、よく判らん。何つってたかな。パスポートを見せてもらったんだけど、『陽向ティアスるい』とか何とか書いてあった気がする。本人がティアスだっつってんだから、それで良くない?」
「ふうん。日本人っぽい顔だと思ったんだけど……」
「その辺、あんまり詳しく聞いてない。新島に聞けば?オレはよく知らん」
「そうなんだ。てっきりつき合ってんのかと」
「さっき全否定してたろうが、あの女が」

 しつこいな。あんまり突っ込むなよ、面倒なこと。

「そんな風に見えなかったけど。でも、良いねあの子。オレ、ああいう子、好みだな。佐藤さん見に来たけど、楽しみが増えたかも。……佐藤さんは?」
「顔が良ければ何でも良いのか、お前は」
「そう言うわけでもないけど。せっかく身近に好みの顔がいるから。目の保養だよ。沢田だって、クリスマスに女といるような真似してるくせに、硬派ぶったって遅いって」
「いないって。誤解だろうが」

 別にぶってるわけではないんだが……。硬派でも何でもないし。何かオレを誤解してるな、この男は。他のヤツも似たり寄ったりだけど。
  いいか。この様子だと、ティアスの顔に興味はあるみたいだけど、それ以上でもないみたいだし。相原は結構判りやすいからな、そう言うとこ。愛里のことも「可愛い」ばっかりで、別に何をするわけでもなかったし。

「ホントに何にもない?男付きは、ちょっとな。あわよくばって言う妄想の邪魔になるし」
「妄想って……。何にもないっつーの。本人がそう言ってただろうが。大体。あの女と知り合ったのだって、12月の頭くらいだし。まだ一ヶ月しか経ってない」

 そう言って、そんなに短い時間だったことに自分でも驚いた。

「ふうん」

 相原は、何だか納得のいかない、と言った顔をしていた。知らない顔して珈琲を飲んで見せたが、中身が既に空っぽだったことに気付いて、バツが悪かった。

「そういや、沢田はこういうとこで弾いたりしないのか?あの子、知り合いなら、紹介してもらったりとか……」
「……あんまり、そう言うのは……」

 なんと返して良いのか。だけど、どうしても素朴な疑問をぶつけているだけの相原の顔を見ることが出来なかった。

「でも、クラシックやってるヤツって、発表会とかコンクールとか子供のころから出たりするんじゃねえの?」
「オレは、そんなには……。ピアノはやってるけど、別にこの道に進むと決めたわけじゃ……」

 しどろもどろでしか答えられない、自分がみっともなかった。こんな大事なことなのに。

「だよなあ。受験も狭き門だって言うし。佐藤さんの行ってる大学なんて、めっちゃ人数少ないだろ?やっぱ堅実に生きるのが一番だよなあ」

 相原の言うことも、もっともだった。よく判るけど。

「よし。じゃ、オレもう行くわ。彼女によろしく」

 立ち上がり、コートを羽織りながら笑顔を見せた。

「ホントに愛里の顔見に来ただけか。わざわざこんな所に来ないで、さっさと新しい女でも作ればいいじゃねえか」
「だから今から、畑中主宰の合コン☆向かいのカラオケでやるからさ、レッスン無いなら沢田も来れば?あの子連れて」
「いや、良い。レッスン無くても、愛里から課題出てるし」
「そうなんだ。……変なの。あ、陽向さん。オレ帰るけど、またよろしくね」

 店内入口に向かう相原と入れ替わりで、ティアスが戻ってきた。

「ティアスで良いよ。またね、相原くん。ライブの時間が決まったら教えるからね」

 手を振りあう二人を、オレはかなり不愉快な顔をしながら眺めていたに違いない。眉間の皺が跡になって残りそうだった。

「どうしたの?怖い顔」
「生まれつきだ」

 じっと、立ったままの彼女を見つめるオレの視線が照れくさかったのか、そそくさとオレの隣に座って視界から逃れようとした。隣に座るなら、直に触れるだけだけれど。

「……お前、今日は暇?」

 彼女がしたように、オレも彼女の膝に手を乗せた。

「依藤さんと打ち合わせがあるけど、この後30分くらい」
「その後は?」

 オレが彼女をじっと見ていることに気付いて、真っ赤になりながら首を横に振った。
  どう考えても、オレに気があるように見えるんだけどな。全否定されたけど。

「お前の部屋に行くけど、良い?」

 俯いたように、黙って首を縦に振った。ストレートすぎて、オレが恥ずかしい。

「ピアノ……」
「ピアノ?」

 俯いたままの彼女の声がよく聞こえず、顔を近付ける。ますます顔を熱くする彼女に、オレもつられる。あくまでつられただけだと思う。

「ピアノを弾きに来るなら、良いよ?」
「判った」

 とは言ったものの、多分オレの顔は相当強張っていただろう。
  正直、クリスマス以来、彼女の前でピアノを弾いていない。もちろん、御浜の前でも。それどころか、一人だとまた弾けなくなってしまっていた。何とか、愛里が戻ってくるまでに弾けるようになっておかないといけないのに……。

「何で、ピアノ?」

 いっそ、ティアスには弾けないことを……。

「テツのピアノ、聞きたい。こないだ家に来たとき、弾いてくれたの、すごく良かったから」

 言えない。こんな風に言ってくれるのに。

 だったら、御浜に……。
  いや、それもない。あいつは心配してくれてるし、微かだけど気付いているからこそ、これ以上心配をかけたくない。それに、今はあまりあいつと突っ込んだ話をしたくない。ティアスのこともあるし。何か彼に責められたら、オレが何もかも悪いような気さえする。彼が責めることはないのだろうけど。

 何だろう、こういうのを八方塞がりとか言うんだろうな。なるようになれとも思えない自分の弱さが情けない。

「テツ!それにティアスも。あれ?今日はレッスン無いって言ってなかったっけ?」

 何というタイミング。御浜が珍しく、秀二と一緒にラテを片手にこんな場所に。

「無いよ。今日はやたら人に会う日だな。それにしても……そのカップ、似合わんな、秀二」

 御浜と目は合わせられなかった。隣に座る彼女から、少しずつ距離をとってしまっていた。

「余計なお世話ですよ。どいつもコイツも、私のこと、幾つだと思ってるんでしょうね!こんなでかい息子がいるわけもないのに!」
「……なんか、不機嫌ね、シュウジさん」

 隣に座った御浜に、ティアスが目配せをした。たったそれだけのことが、酷く引っかかる。

「いや……今日さ、進路相談があって。親を呼んでこいって言うんだけど、うちの父親、いま調子悪いから、秀二に来てもらったんだ」

 私立だからか、御浜の高校はそんなコトしてるんだな。うちはなくて良かった。ホントに良かった。

「もう随分年だもんな。最近、会わないけど」

 親子と言うよりは、祖父と孫くらい年が離れてるからな。定年間近にやっと出来た子供だって聞いてるし。そもそも30近い秀二が、御浜の甥だって言うんだから。調子が悪いって言うのは聞いてたし、外に出てくる姿をあまり見かけなくなったけど。

「あ、でも、おじさんや覚さんや佐和さん達も来てくれるし、父さん自体は大丈夫なんだけど……。秀二がね」
「言うに事欠いて、この子の担任と来たら、私のことを父親だなんて言うんですよ!?全く、最近の若い教師ときたら、人を見る目がありませんね」

 ……長くなりそうだな。ティアスも御浜も苦笑いしてるし。

「どうせ大卒1年目とかだろ?そんなんから見たら、30も40も一緒だろう。大体、お前は老けて見えるし」
「あなたの発言の方がよっぽど老けています!何ですか、まだ10代だって言うのに、その人生に疲れ切ったような態度は」
「……えっと……私、打ち合わせあるから……また……」

 説教が始まると知って、逃げたな。まあ、人を待たせる羽目になるから、正しい選択だけど。ずるいな。

「また?」

 くどくどと文句を言い続ける秀二を後目に、御浜がオレに疑問をぶつける。その意味を、オレは計り知ろうとして、怖くなってやめた。

「また今度、ってことじゃねえの?何か、ここでライブやるって、一曲だけ。さっきまで、同じクラスのヤツも一緒だったから、営業してた。今日は下見に来たんだと」

 そこまで言って、先手を打ちすぎたかもしれないと反省をした。だって、どうしても彼の顔を見ることが出来ないし、何か彼女に絡んだことを言われるたびに心臓が痛い。御浜はたった一言言っただけなのに、過剰反応かもしれないけど。
  説教を続ける秀二の声の方がはるかに大きいのに、オレは、御浜の息づかいまではっきりと聞こえそうなほど、彼の一挙一動に意識を向けていた。

「そうなんだ。レッスン無いって言ってたから、てっきり」
「てっきり?」

 弱気になっちゃいけない。嘘をつくときは、自信を持たないと。そうは思ってるけど、強気になりきれない自分がいた。必死に取り繕っていることがばれないと良いけど。

「あ、いや。昨日ティアスに会ったとき、テツの話がよく出てたから、会いたかったのかな、って思って」

 揺さぶられる。彼の一言に、こんなに簡単に。
  昨日、夜まで彼女と連絡が取れなかったと思ったら、会ってたんだ。
  彼にどうしようもなく嫉妬してるのは判ってるけど。だけどどうして良いのか、どうしたいのか、オレには判らなかった。
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