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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第2話(the heads) 10/11



「つーか、いきなり遊園地か。まあ、人数もいるし、保護者付きとはいえ、よく会ってるみたいだし。まあ、こんなモンかな」

 観覧車から降りた後も、何故かオレと真は、4人を離れたところから追うように歩く羽目になる。
  真なりに、御浜に気を使ってるのか、微妙な修羅場に巻き込まれたくないだけなのか、どっちだ。

「急に何だ。意味が判らん」
「いや、距離感がどうかなあってさ」
「距離感?」

 コイツの言うことは、よく判らん。

「いや、いきなりがっついたら、女の子は退くかなあって思って」

 ……いきなり2人で観覧車に乗ったり、腰撫でたりしましたが……。
  それって、がっついてる?

「経験上?」
「経験上」

 しかも言い切ったし。

「まあ、適切なんじゃねえの?そう言う意味では」
「テッちゃんからそんな台詞が出るとは思わなかったけど」
「何で?出るだろ、それくらい」
「いや、テッちゃんて、ティアちゃんに気があるのかと、オレ、わりと本気で思ってたのね」
「意味がわかんねえ」
「オレもだけど。愛里ちゃんいるのにね」
「……愛里の話はするな」

 ダメだ。どうして表情に出ちゃうんだ。

「御浜がかわいそうだからさ」
「御浜、本気かな」
「どうだろね。まだ判んないよ。2週間?3週間くらいだっけ?」
「そんなもんだな」

 そんな短い期間で、人間の何が判断できるというのか。

「あー、でも、いるよね。クラス替えしたとたん、3日くらいでつきあい始めて、1週間くらいで別れちゃう奴」
「そう言うの、つき合うってカウントして良いのか?」
「本人達がそう思って、やることやってりゃ、そうなるんじゃね?」
「自分のことか?真」
「オレはそんな、即決即断は出来ないって」

 笑い飛ばすが、やってそうな気がするな。それとも、つき合うってカウントしてないか。……後者かな?
  どっちにしろ、めんどくせえ。オレはごめんだな。
  1人の女のことを考えるのだって大変なのに、そんなのがめまぐるしく変わったら、疲れてしまう。

「オレ、やっぱ戻ろうかな……」

 携帯を開くと、メールが入っていた。相手は、愛里。
  どうせ大した用じゃない。彼女から連絡があるときは、レッスンでオレが遅れたときか……オヤジのこと。

「何?こんな時にメールとか見てんなよ?」
「重てえから寄っかかんな」

 でけえ図体で、オレの肩を寄せ、乗っかってきた。もしや逃げられないように?

「……寂しいねえ。何、このメール」

 メールには『鉄城どこにいるか知ってる?』とただ一言。

 オレが知るかよ。大学じゃねえのか。……あ、もう休みだって昨日言ってたな。出勤するらしいけど。
  大体、愛里は海外に行ってるんじゃねえのか。

「いつものことだよ」
「こないだ言ってたこと、ホントなんだ。なんか、愛里ちゃんも振り回されてる感があるけど」
「振り回されてるっつーか、相手にされてないっつーか」
「へえ……。テッちゃんこわーい……」

 そう言いながら距離をとる。

「このメールのために戻るの?」
「そう言うわけじゃないけど」

 思わず、御浜とティアスに目がいってしまった。
  その様を、真にはしっかり見られたが、知らないフリ。

「だって、こんなん来たって、オレにどうしろと?!しらねえっつの」

 ……なんかここにいて、こんなメール見てると、おかしくなりそうだ。

「ふうん。返信するの?」
「……え?」
「……するんだ。どうしろっていうの、このメールに」
「考える」
「へえ……。ドMだよね、テッちゃんて」

 ドMて!!

「何を根拠に」
「根拠って言った。認めてんのかお前は」
「認めてるか!?」
「認めてるでしょう?このメールのために帰りたくって仕方ない?」

 違うって。ただ、寂しいだけ。
  ……そうなんだ。なんでか知らないけど、寂しいんだ。ずっと寂しくて苦しくて、仕方なかった。
  愛里のメールが、それに拍車をかけた。

「沢田くん」
「……うわ!」
「……うわ、って。この人、失礼よね?いつものことだけど」

 目の前に立っていたのはティアスだった。笑いながらオレを指さし、真に同意を求めていた。

「どうしたの?具合でも悪い?」
「別に?」
「なんか、あれだよね。ほっとけない顔してる」

 何つーことを!?そう言うこと、さらっと言うか、この女は?
  思わず隣の真の顔を見てしまったが、何故かちょっと照れていた。

「……何で照れてんだよ」
「いやあ……ねえ」
「何よ、2人とも」

 彼女はむっとしてみせる。ホントによく表情の変わる女だ。黙ってると、綺麗なんだけど。

 ……違うな。そう言うことじゃ、ないな。
  引っかかるんだけど、……なんて言ったらいいか。

「何?私の顔、なんかおかしい?じっと見て」

 今度は彼女が照れていた。

「別に」

 わざと、オレは笑ってやった。嘲るように。

「ホントに失礼よね、沢田くんて。いこ、真。何で2人だけ、こんなに離れてんのよ」
「あはは。ごめんごめん。男同士で内緒話なんだわ」
「なにそれ。気持ち悪くない?」
「あ、やっぱ?オレもそう思うんだけどさ、ほら、テッちゃんて根暗でひきこもりで人見知りじゃんね。だからあわせてやったわけよ」
「真だって、人見知りじゃない」

 彼女は少しだけまじめな顔でそう言った。

 よく見てるな。

 それがオレの、正直な感想だった。
  このヘラヘラした男が、いかに人見知りで、人を選んで接しているかなんて、理解するのは難しいだろうに。
  オレだって、御浜に言われて気付いたぐらいだ。言われてみれば、思い当たるフシがある、その程度だった。それ以後は、気をつけて真を見て、つき合っていれば、よくよく判ることだったのだけれど。

「オレはそうでもないよ。テッちゃんみたく、友達少なくないし」
「友達の数は関係ないでしょ?良いけれどね」

 彼女は笑顔で、前を歩く御浜達の方へ行こうと指さした。

「すぐ追いつくから、もどんなよ。根暗は根暗同士、話してるんで。ついでに、そろそろ腹減らない?って、聞いといて」
「自分で言えばいいのに」

 彼女は、あっさりと引いた。走って御浜達の元へ向かう。

「よく話してんの?あの女と」
「そうでもないよ。彼女の行動範囲は限られてるからさ。偶然会ったり、御浜と一緒にいるときに一緒にいたり。そんなもんかな。話もしやすいしね」
「そうなんだ」

 全然、知らなかった。話をしてるって言うのは聞いてたけど。ティアスのメールにもあったし。

「意外と、距離あるね、2人」
「何が?」
「だから、テッちゃんとティアちゃん。あの子、テッちゃんの顔みないし、沢田くん、なんて呼んで、よそよそしい感じ。基本、フランクな子なのにね、彼女」
「あっそう。オレ、そう言うの苦手だな。いきなり馴れ馴れしいの」
「そうなんだ、ドMのくせに」
「それ、関係あんのか?」
「いや、気の強い女に虐げられてんのが好きなのかと……」
「あるか!?」

 何でそうなる。愛里のことは、別に虐げられてるわけじゃねえって。
  ……似たようなものかも知れないけど。



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