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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第2話(the heads) 09/11



 なんでこのクソ寒いのに、オレ達は動物園にいるんでしょうか?

「テッちゃん……思いっきり不愉快な疑問がありますって顔、しないの!」
「オレのその不愉快な疑問が判ってるなら、答えをくれ、答えを」

 吐く息が白いっつーのに、どうしてこんな所にいるのか。
  騒ぎながら園内を歩く御浜達の後ろから少し離れて、オレと真がゆっくりあとを追う。
  園内にある遊園地に向かうエスカレーターに乗った。

「まあ、もう昼過ぎてたしねえ。オレ達、車もないから、足ないしさ」
「近場ですませたってわけか。でも、なにもこのクソ寒いのに、わざわざ動物園?」

 しかもこの動物園、壁もないし、微妙に山の上にあるから、冬は寒いし夏は暑い。

「いや、動物園じゃなくて、あのタワーとか、観覧車とか、ちっさいコースターとか、いろいろあるじゃない、遊べるもの」
「お前だって、普段こんな所来ないだろ?」
「そうでもないよ。ここ安いし、こういうの好きな女の子、いるよ」
「お前が言うと信憑性があるな」
「統計とってますから」

 マフラーに顔を埋めながら嫌味を言ったんだが、当然といった顔で返された。一体何人と「おつきあい」してきてるんだか。

「まあ、金ないし、町中ふらつくか、カラオケかってとこじゃない?」
「ボウリングとかでも良いじゃねえか。室内だし、町外に出るならN市に出てもO市に出ても同じだろ?」
「……先に言ってよ、それ。ボウリングで良いじゃん。大人数で楽しめそうだし。健全そうだし。……でも、テッちゃんちからだと乗り換えとかめんどくさいや」

 そう言いながら、真もまたマフラーに顔を埋め、肩をすくめる。

「女の子ってさ、あんなミニスカートで寒くないのかな?」
「寒いだろうよ。中身、相当着込んでるぞ、柚乃なんか」
「まあ、なに着てても、外見が可愛ければ良いんだけど、あんまり酷いとがっかりするかな」
「酷いって、どれくらい?」
「うーん」

 透視でもする気か?その目つきは。

「テッちゃんてさ、ティアちゃんとどうなの?」
「何が?意味が判らん、その質問の。つーか、その呼び方こそどうなの」
「良いんだよ、オレはこう言うので。なんかさ、こそこそ目配せしあったりして、やらしい感じ」
「してないって、別に」
「新島とはホントになんもないみたいだし」
「だから、新島とも、オレともないって」

 そう言ったじゃねえか。全く、何を探りにきてんだ、コイツは。

「……御浜が、何か言ってるわけ?お前に」
「いや。あんな感じよ、いつも。今日だって、『せっかくだからみんなで出かけようか』なんて可愛いこと言うから、うっかり来ちゃったわけよ」
「可愛いねえ?」
「幼いとか、初々しいとか言うけど」
「ああ、そうですか」

 完全に楽しんでやがるな、コイツ。

「観覧車、3人ずつで乗る?」

 いつの間にか観覧車の前に来ていた。少し距離のあるオレ達に御浜が大声で声をかける。
  ……いや、3人ずつって、どんな組で分かれろと!?

 柚乃は御浜と乗りたがるだろうし、御浜はティアスと乗りたがるだろうし……。かといって、そんなバランスの悪い組合せは逆にどうよ?ってかんじだし。ティアスがどうでるか判らんけど、いつものように保護者よろしく新島と一緒に乗るかも知れないし……。

「あー、オレ、テッちゃんと話してるから、4人で乗れば?乗れるでしょ?」
「……男2人で観覧車?気持ち悪!?」
「まあまあ、たまには良いじゃない。女の子となんて、いつでも乗れるでしょう?」
「……いつでも?」

 ティアスがオレ達を指さし、嫌そうな顔をした。
  真は、そんな彼女の言葉を無視して、ほぼ強引にオレを引っ張って、御浜達を追い抜き、観覧車のゴンドラの中に押し込めた。
  御浜達4人は、その様子を呆気にとられたように見ていた。

「……いつでも、は乗れませんけど」
「なに、ティアちゃんと乗りたかった?」
「なんで?」

 こないだ一緒に乗ったし。

「愛里ちゃんとはどうなったの、美人女教師は!?」
「どうもこうもあるか、別に」

 思いださせんなよ、ちくしょう。


「……不機嫌?」

 いつもの笑顔のまま、向かいから顔を覗き込む真が、余計に不愉快だった。

「うるせえな」
「そういや、休み中ってレッスンとかしないの?」
「御浜みたいなこと聞くなよ。愛里がどこかに旅立ってるから、レッスンはなし。自主練習!」
「それで機嫌悪いの?ホントに愛里ちゃんのこと好きだよねえ」

 ……この男は……一体何が言いたい。こんな密室で。
  なんか……蒸すな……。

「なんか、不満そうだね。テッちゃんの顔が赤いのは、とりあえず置いといて」
「うっさい!いちいち言うな!」

 余計恥ずかしいっつーの!

「オレなりに御浜にも柚乃ちゃんにもティアちゃんにも気を遣ったつもりだけど」
「まあ、角は立たないけどよ、あの組合せは。違和感もあんまないし」

 御浜達は4人でゴンドラに乗り込んでいた。上から見下ろした限りでは、御浜の隣に座る新島が苦笑いを浮かべているのが見えた。

「新島が不幸だな」
「仕方ないんじゃない?保護者なんだし」
「そうだな。借りもあるらしいし、きっちり返させとけばいいか」

 なんかくだらない会話ばかりしてる気がするが……しかし色気がねえな。男2人で観覧車って……。

「テッちゃん、そんな嫌そうな顔して人のこと見ないでよ。何でそう常に喧嘩腰?」
「元々こういう顔なの!うっせえな!」
「喧嘩腰じゃない人は、うっせえな、何て怒鳴んねえっつうの。なんだろね、常に心に何かやましいことがあるから喧嘩腰なのかな?」
「……そんなことはないと思うが」
「テッちゃんて、難しいよねえ。なんか子供みたいだからさ」
「誰が子供だ」

 ちくしょう、早く下につかねえかな。

 こないだは、こんなコト思いもしなかった。
  隣に座る彼女と、ホントは何を話して良いか判らなかった。必死だった。でも、あっという間にゴンドラが下について、それが何だか寂しかった。

 あの時の状況に動揺してたオレに対して、あまりに普通に彼女はかわした。だから悔しくて彼女をわざとからかった。オレにだって、それくらいの余裕はあるんだと。
  別に、好きじゃないから、なんだって出来る。

 何だって出来るはずなのに、どうしてこんなに引っかかってるんだろう。

「ティアちゃんのこと、見過ぎだよ」
「別に、あの女を見てるわけじゃねえし」
「そう、だったらいいけどね」

 本当にただ、あの女を見てるだけなら、そんなに簡単なことはないのに。いや、簡単ではないけれど。少なくとも、オレの中では楽になる。御浜のことは気に掛かるけど。

 だって、こんなにも愛里の存在が、痛い。
  彼女はオレに対して、いい顔など見せやしないのに。それどころか、オレを簡単に突き落とすくせに。

 本当は、もう、何年も前から、彼女のことなんか忘れたかったのに。

「何だよもう、黙るなよ。こっちだって、男2人で観覧車は初めてで緊張をだね……」
「うるさい、黙れ」
「ひど!ボケを拾う気すらないのかよ!あんまりまじめな顔しないでくれる?オレがいじめてるみたいじゃん」
「つーか、今のボケ?つまんねえ」
「鬼か!テッちゃん冷たすぎ!てか、顔怖いって」

 彼女に相手にされないから、彼女に裏切られ続けているから、オレがこんなに寂しくて苦しいままだから。
  だから他に逃げ道を探しているのか?

 オレにとってティアスって、もしかして逃げ道なのかな?
  だから、自分でもよく判らないまま、引っかかっているのかな。
 


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