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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第2話(the heads) 07/11



 会えない時間って言うのは、どうしても妄想過多になってしまう。
  毎回そうなんだ。
  愛里は学校が休みになると、どこかへ出て行ってしまう。オレには行き先を告げず、突然。別に、そんな仲じゃないけど、一応……オレの先生なんだから、連絡くらいよこしても罰は当たらないと思う。

 この間は……たしか、秋の3連休のころだったかな。ちょうどその時期に教授がいなかったからと言って、1週間くらいフランスに行っていたらしい。帰ってきたとき、その話をやっと聞けた。

 今回もそうだ。この間、新島の家に泊まったときに来たメール以来、いっさい連絡無し。電話はつながらない。かといって、愛里の実家にそれを聞くのもどうだろう。

 彼女は今ごろどこでどうしているのだろう、なんて、考える。
  無駄な行為と知りつつ、オレはそれを繰り返す。あまりに非生産的だ。

「……この、大量の課題が悪いと、オレは思うんだ」
「何が悪いの?」
「いや、とにかくだ、何もかも」
「要するに、うまく進まないってコトでしょう?ピアノも良いけど、冬休みって宿題とかでないの?テツの高校」

 ピアノの前で、愛里の残していった課題を前にぼやくオレに、何故かうちのリビングでだらだら過ごしつつつっこんできたのはミハマだった。

「あるに決まってんだろ?お前んとこはないのか」
「あるよ。内申書に響くからね。やってるよ、それなりに」

 人んちのピアノの横でソファに座りながらジャンプを読んでるヤツの台詞か、それが?

「オレだって、やってるわい。……それなりに」

 英語以外だけど。

「……何かクリスマスっぽいモノ弾いて」
「何だ、ぽいものって」
「だって、思いつかないし!町中で流れてたって、曲名まで判んないって?!」
「思いつきで言うなよ、もう」

 そう言いながら、練習に飽きていたオレは、棚から楽譜を探す。確か昔、母が使っていた楽譜の中にあった気がする。
  探している最中、呼び鈴が鳴った。

「御浜、出てこい」
「……テツんちじゃん」

 ぼやきながら、彼は玄関に向かった。
  戻ってくるときには真を連れてきていた。

「なんだよ。お前の客じゃねえか」
「よく判ってるじゃない、テッちゃん。ミハマんちに行ったら、ここだって言うから。あ、……何かクリスマスっぽいモノ弾いてよ」

 ピアノを指さし、指定する。どいつもコイツも、思いつくのはそれかい!

「なんだ?誰の携帯が鳴ってる?」

 オレの言葉に、真と御浜が首を振る。……オレか。
  ソファの上の携帯を手に取り、着信相手を見て、思わず御浜の顔を見てしまった。

「どうしたの?」
「いや……、ちょっと……」

 携帯片手に、御浜達から距離をとって、リビングを出る。

「……なんだよ」
『なんだよって、随分よね。どうしてそんなにいつも喧嘩腰なの?』

 ティアスも、愛里と一緒で突然なんだ。
  まるで彼女のように、オレを振り回す。

「いや、喧嘩腰……ではない」
『だとしたら、自分を知らなすぎるわね』

 コイツは……ホントに、ああ言えばこう言う。
  でも、電話に出てしまう自分が悲しい。なんでだろう。

「だから、なんの用だよ?」
『冬休みじゃないの?』
「冬休みだけど?」
『御浜に一緒に出かけないかって誘われたんだけど、一緒にいるの?』

 ……すみません、質問の意図が全く持って判らない。
  思わず、リビングの扉を見つめる。何だか怖くなってきて、少しずつ、リビングから距離をとる。

「一緒にいるけど……。二人で出かければいいじゃねえか」
『御浜が、みんなで出かけようって言ったの』
「ますます持って意味がわからねえ!」
『いるんならいいよ。それだけ』

 電話切りやがった……。御浜も意味わかんねえけど、コイツも意味がわかんねえ。
  ……また呼び鈴鳴ってるし。仕方がないので、今度はオレが出る。
  玄関にいたのは、ティアスと新島だった。

「どっから電話かけたんだよ」
「そこ」

 御浜んちの前の方を指さすティアス。

「へー。そう言えば、沢田んちって初めて来たかも。お坊ちゃんか、お前は。でけえ家だな」
「グランドピアノあんのよ、この家」
「クラシックやるヤツは、大抵金持ってるって言うけどなあ……」

 人んちの玄関で、人んちを値踏みしないでくれ。

「なんで新島まで来てんだよ?クリスマスなら、彼女といればいいじゃん。こんなガキといなくても」
「ガキとはなによ!!失礼ね!!」
「まあ、仕事だし」

 ……そりゃそうか。思わず納得。
  それにしたって、電話の意味が判らん。

「なんで電話なんか……」

 人が質問してんのに、二人揃って勝手に上がってるし。

「まだ入れとも、良いとも言ってませんが」
「まあまあ。呼んだのは、白神だしな」
「何で家なのか……」

 我が物顔か?御浜!?意味が判らん。

「テッちゃん、ただいま。御浜さん、まだいる?……お客さん?ティアス?」

 帰ってきた柚乃が、玄関に上がっていたティアスの姿を見つけて挨拶をする。なんかどんどん人が増えていくな。

「テッちゃんの友達?」
「新島って会ったことなかったっけ?ティアスの保護者だよ」
「間違ってねえけどな」

 柚乃は新島に簡単に挨拶をすると、ティアスと一緒にリビングに向かっていった。その後を、オレと新島はゆっくりついていく。

「お前の妹、予想はしてたけど、むっちゃくちゃ可愛くない?!明らかにお前と同じ顔の遺伝子が入っているのだけが気に入らんけど」
「……兄妹なんだから当たり前だろうが。てか、そんなに似てる?オレら。自分たちじゃ全然わかんねえけど。親父ともそっくりって言われるけど……」
「本人達はそんなもんだって。端から見たら、よく似てるよ。あんなに可愛いのになあ……」
「オレを見るな、オレを」

 しかも嫌そうに!!

「てか、何でオレに電話なんかするんだよ、あの女は。思わず御浜達から逃げちゃったじゃないか」
「たち?」
「いや、真がいるんだよ」
「あっそ。てか、何で逃げてんのか、その方がわかんねえし」
「電話の方がわかんねえって。どうせ来るんなら、電話する必要ないし。オレが呼んだ訳じゃないし」

 新島は不審そうな顔でオレを見つめながら、わざとらしく目を伏せ、大きく溜息をつきやがった。
  失礼なヤツだ。意味が判らん。

「そんなの、考えなくたって判るじゃん。大した理由なんかないし。だって、メールはしてんだろ?」
「……えっと」
「何でそこでエロ本見つかった中学生みたいな態度になるかな……」
「わざわざ隠さないし」
「メールは隠すのに……」
「だって、さっきの明らかにおかしいし」
「おかしくないし、何でこだわんのかの方がオレにはわかんねえや。電話来たなら、『オレに電話がしたかったんだな』って納得して喜んどけば?」

 喜んどけばって言われても……。

「いちいち理由なんか考えてたら、疲れるだけだって」
「いや……気になるだろ?」
「お前、映画とか考えてみるタイプだよな?」
「あんまり見ない」
「あっそ。理由考えるより、これからどうしようかなって考える方が楽しくない?」

 そう言って、新島は笑う。

「……新島って、そうやって彼女とつき合ったんだ」
「そうやって、つき合ってるんだよ」

 彼はオレの言葉を訂正してから、リビングに入っていった。
  どうしてそんなに良いように考えられるのか、不安がないほど安定しているからなのか。
  理由は判らないままだけど、オレは無性に新島の状況がうらやましくなった。

 彼は決して、陽の当たる恋をしているわけではないのに。



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