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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第2話(the heads) 05/11


 
 結局、終電で帰り、オレは歩いて家へと向かった。
  雪は積もることなく、降ってはやみ、降ってはやみを繰り返していた。

 携帯の電源を切っていたことを思い出し、ポケットから取り出す。
  電源をいれた途端、メールが何件も入ってきた。
  留守電も入っていた。 

 大きくため息をつく。吐いた息は白く、空気にとけていく。

 意を決して、まず留守電から……。

『ちーっす。新島でーす。ティアスから今朝Tellあったんだけど、その後連絡とれません。何か知ってたら連絡ください。てか、すんません、ホント。迷惑掛けてます』

 ……留守電でこれって言うことは……メールもこれ関係ってコトか?
  思わず、道ばたで座り込んでしまった。

『新島からテッちゃんともティアちゃんとも連絡とれないって連絡来てるよ。どこ消えた?』
『真から早退したって聞いたけど、具合悪い?』

 か……帰りたくねー。

 でも、今日は親父も家にいるはずだし、御浜が家に来る可能性は……。てか、親父がいても、なんか余計なこと聞かれそうだよな。
  どうすっかな。

 ……しょうがない。借りを返してもらうかな、早速。


 

 息子も家を出ていたせいか、深夜に一緒に帰ってきたオレを、新島の両親は快く受け入れてくれた。
  新島んちって初めて来たけど、……こう言っちゃなんだが、ホントにフツーの家だ。築10年って所だな。この辺じゃ何も珍しくない、猫の額程度のお庭がついてるマイホーム。
  ますますティアスの住んでるマンションっつーのが怪しいな。どこでそんな女と……。

「こんな遅くに突然押し掛けても、何も言わないんだな、お前んとこの親」
「いや、今日はたまたまだ。ちゃんと連絡いれてたし、そのついでにお前を連れてきたことになってるし。いつもうるせえよ?昨日もいなかったから怒られたし。お前んちの方が絶対楽だって」

 新島は自分の部屋にオレを案内すると、床にクッションをおいてそこに座るよう促した。言われるままに座ると、冷えた缶ビールを投げ渡された。

「この雪の降ってる日になあ……」
「文句言うならやらん」
「いや、飲むけど」

 部屋に小さな温冷庫があった。ナマイキな。

「何?ティアスとなんかあった?もしかして。わざわざ家に帰らず、オレんちに泊めろだなんて」
「いや、別に何もない」
「でも、学校抜けて、ティアス拾いに行って、そのまま栄でデートしたんだろ?ティアスに聞いた」
「何、出かけてた用事って、ティアスと会ってたってコト?」

 そう言ったオレを、新島が目をむいて見ていた。

「……ああ、そう言うこと?違うって、彼女と部屋にいたら、ティアスから電話かかってきたから、駅まで迎えに行ったんだ。その時聞いた。留守電も聞いたろ?」
「さっき聞いた」
「何、ご丁寧に電源切ってたわけ?」
「お前こそ、今日は『風邪で休み』って親が連絡いれて……」

 親?ここんちの親は休んだことすら知らなかったみたいだけど……誰が連絡したんだ?

「彼女が連絡いれてくれました」
「そういやお前の女って、一体何者?!」
「……佐伯佳奈子」
「マジっすか!」

 そうだ、昨日確かにいた!ティアスの後ろでキーボード弾いてた!ライブ中に騒がれてた!確かに彼女くらいの女なら、マンションの一つや二つ持ってるだろうし、音楽関係にも顔が利く!昨日のライブも彼女がティアスを引っ張ってきたと考えたら、判らないでもない。
  でも……

「中学生くらいの娘がいるって、雑誌で書いてるの見たことがある……」
「よく知ってるな。ああ、そっか。クラシックの雑誌読むんだっけ、お前」
「いや、そんな普通にしなくても」
「だって、何もおかしくない」

 うちの親父より年上だっつーの!

「いいじゃん、東京タワーみたいで」
「まあ……美人だしな。それで言わなかったわけね、彼女のこと。てか、なんでオレにその話をするわけ?確かに怪しかったけど、黙っとけばいいじゃん」
「別に、このままティアスとお前がつき合い出したら、その内絶対ばれるからさ。先に言っとこうと思って」

 そう言って、彼は一気にビールを飲み干す。

「……なんで黙ってんの?」
「誰と誰がつき合うって?」
「だから、沢田とティアス。わざわざ気のない女のために学校抜けるわけないだろ?しかも、白神と顔あわせたくなくて、わざわざオレんちに逃げ込んだんだろ?泉だと、白神に連絡しそうだし。そんなに気い遣わなくて良いんじゃない?別に白神とティアスだってつき合ってるわけじゃないし。お前と一緒にいる時間の方がよっぽど長いし」

 何それ、オレとティアスって、つき合ってるってコト?

「いや、別に何もないし」
「うん。聞いた。迎えに来てもらって、そのまま一緒に遊びに行っただけだって」
「まあ……成り行き?」
「あ、そう。成り行きね。佐藤さんのレッスン振ってまで」
「いや、今日はレッスンは休みで……」
「なるほど、計画的か。昨日、ティアスが泊まったときになんかあったかな……。アイツも沢田に対してエライ好意的になってたし」
「え、そうなの!?」

 どうしてそうやって、あからさまに引いた目でオレを見るかな!?

「沢田って……なんか、泉の言ってたことって、的を射てるわけね」
「なにが?」
「いや、判んないなら別に良いんだけど。要するに、沢田はあれだろ?白神がティアスのこと狙ってるの知ってるのに、ティアスのこととっちゃおうとしてるから、白神に会わせる顔がない、と。だから、さっきも言ったけど、そんなことは気にする必要は……」
「ないの?なんで?」
「ないだろ。だって、つき合ってるわけじゃねえんだし。確かに、気まずいかもしれんけど、彼女が選んだんだからって話だし。何をそんなに白神のこと怖がってるかな?」

 誰が、誰を怖がってるって?
  誰が、誰をとっちゃおうって?

「オレは別に、ティアスのことなんか、好きとか嫌いとかつき合おうとか考えたこともない。大体、あの女はついこないだ知り合ったばかりだぞ?」
「つき合うまでに時間は掛けるかもしれんけど、好きになるのに時間は関係ないだろう。そうでなくても、お前ら、充分濃いって」
「でも、オレは……」
「はいはい、佐藤さんね。判りやすいよな」

 ……えっと……、新島にもばれてるわけね。てか、オレってそんなに判りやすい?

「オレは……別に御浜のことなんか怖がってないぞ?アイツの何が怖いって言うんだ」
「その態度のどこが怖がってないんだ?」

 おっさんの顔をしながら、新島はため息をついた。
  空き缶を二つ持って部屋を出ていき、しばらくしてから布団を持って帰ってきた。

「布団、しばらく使ってなかったけど、これで良い?」
「……ああ……??」

 さっきの話はこれで終わり?
  結局新島が何を言いたかったか、よく判らなかったぞ?
  オレが御浜を怖がってるだの、オレとティアスがつき合うとかつき合わないとか……。

 新島はオレの存在がいないかのように、フツーにしていた。部屋着に着替えて、布団に入る。オレもそれに倣った。
  もう1時近かった。外は雪が降っている。
  カーテンを閉めたら、音がしないことに違和感が生まれた。

「観覧車の写真、見せてもらった」
「……うん」

 恥ずかしいな、何見せてんだよ、あの女は。
  オレにも送ってもらったけど、一緒に写ったヤツ。

「あんまり、振り回さないでくれよな、ティアスのこと。オレ、保護者だから」

 電気を消しながら、新島は責めるわけでもなくそう言った。

「……振り回されたのはオレだっつーの」
「あ、そ。自覚してるなら良いけど。オレから白神には言わないよ。ティアスにそう言うな、とは言えないけど」

 オレの表情は、新島には見えないはずだった。
  でも、まるで彼にはオレの表情が見えてるみたいだった。

「御浜だけじゃなく……真にも言うな。頼むから」
「なんで?」
「真は、例えそれがどんな状況でも、御浜の味方だ」
「なにそれ。あの、泉が?アイツ、執着とか、真剣味とか、無縁な感じじゃん?」
「そうでもない。極端だから。その代わり、オレも彼女のこと誰にも言わない」
「そうしてくれると助かるよ」

 眠れるはずもなかった。



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