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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第1話(the heads) 10/11


 どうしよう。とりあえず、ティアスには事情を説明するしか……。

 そうだ、それで帰って貰おう。余計な誤解を生んでも嫌だし。あ、帰るとこはないんだっけ?

「ねえ、誰もいないみたいだけど?」
「えと……悪い、今日、妹もオヤジも出かけてたらしい……。オレも今知った。いや、ホントに、マジで。ほら、メールの履歴、0時になってるし!」
「……そんな必死にならなくても」

 わざわざ携帯まで見せてんのに、あっさりしたもんだった。 
  てか、必死になるっつーの!お前、もしかしてオレを男扱いしてないな?襲われるぞ?
  それに、御浜が……。

 そうだ!御浜んちに……。

「もう無理よ。御浜の家はお父さんがご高齢で、この時間はもう寝てるって言ってたし。うるさくしたら悪いよ。沢田くんさえよければ、この家に泊めて貰っても良い?沢田先生とかいない方が、逆に気を遣われなくてすむし」
「……あんたがよければ、それで良いけど」

 うっわー、冷静だな、おい。一人でおたおたしてるオレが、かっこわるいだろ?

「……和室でいい?布団もあるから」
「ありがと。でも、沢田くんのピアノが見たいな?どこにあるの?」

 そんな展開になるような気がしてたけど。他に興味がないのか。心配するとかさ。
  別に減るもんじゃないので、リビングに彼女をいれ、電気をつけた。
  彼女はためらうことなくピアノの前に座った。

「スゴイね、グランドピアノ持ってるんだ」
「母さんのだよ。弾くなよ。もう遅いから。近所迷惑」
「判ってるよ。どうしてそう言う言い方しかできないかなあ?」
「お前だって相当だと思うけど」
「失礼よね。……お母さんは?」
「オレが子供のときに死んだ。音楽の先生だったらしいけど」
「そうなんだ」

 彼女はオレを見ることなく、ただ黙ってピアノの前に座ったまま。
  会話が続かないので、彼女を置いてキッチンに向かった。

 案の定、冷蔵庫にはシュウジが作った夕飯が残っていた。今日はレバニラ炒め(ピーマン混入)だった。一応、柚乃のメモが残ってる。
  そういや、何も食べてなかったな。

「こんな時間にご飯?妹さんが作ってくれてるの?沢田先生?」

 いつの間にかリビングからこっちに来ていたティアスが、普通にオレの向かいに座った。(隣に座るかと思っていた)
  オレが作ったという発想はないのか?!(作らないけど)

「オヤジも妹も作るけど、これはシュウジが作った」
「誰?」
「親父の後輩で御浜の甥で、お向かいさん」
「???え?……うーんと、男の人?いくつなの?」
「10年近く女のいない、悲しい32歳だ」
「わざわざご飯作りに来てくれるの?」
「うーん、それもあるだろうけど、趣味もあるかな?テレビ見て料理作るわりに、あいつんちにレトルトの食材とか調味料とかあるの見たことないし。老酒とかテンメンジャンとかフツーにおいてあるんだぞ」
「スゴイね……」
「……お前、食いたいの?」

 ものすっごく物欲しそうな顔してるんですけど。

「食べたい」

 ハラ減ってんなら言えっつーの。
  仕方ないので、かろうじて炊飯器に残ってるご飯をよそい、箸と作ってあった海苔と卵のスープを用意してやる。

「すごーい、おいしい!」

 ……よーけ食うなあ……。ほとんど二人分残ってたからよかったものの。まあ、うまそうにしてるから良いけど。シュウジにも言っといてやろう。

 あんなきついことを言う女だから、どんなかと思ったけど、笑ってれば可愛い。美味しそうに食べてる姿も。

「ごちそうさま」

 綺麗に残さず食べてるし。よっぽどハラ減ってたかな?

「沢田くんの笑った顏、初めて見た」

 彼女はそう言って、また笑った。
  オレ、今笑ってた?

「オレだって、笑うことくらいあるし……」

 あー、ホントだ。なんか顔が緩んでる。何でだ?

「笑ってた方がいいよ。なんか、そうしてる方が話しやすそうに見えるし」

 普段は話しにくそうってコトですか?そうですか。

「笑ってたら、ピアノ……楽しくなると思うよ?残念だな、こんな時間じゃなかったら、沢田くんのピアノが聞きたかった」
「つまんないって言ったくせに」
「だって、君がつまんなそうだったから。楽しそうに弾いたら、変わるよ。私は、沢田くんのピアノ、好きだけどな。だから、つまんなそうなのはもったいないって思っただけ」
「……言葉がたりねえよ、お前」
「それは、お互い様よ」

 この女は~!ああ言えばこう言いおってからに!

「コーヒーいれて良い?」
「ああ。コーヒー豆は戸棚だ」

 彼女はオレの顔を見ずに席を立ち、人んちだと言うのにコーヒーをいれようとする。わけわかんねえ、この女。
  大体、今さっきまた。お前はオレに喧嘩を売っただろうが。

 ……ホントに、この女は……。

「だーっ!何やってんだ、さっきからおとなしく見てりゃ!コーヒー一杯まともにいれられねえのか!しかもコーヒーメーカーなのに!漫画かお前は!」

 コーヒーメーカーにフィルターペーパーも敷かずに、豆も挽かずにいれやがった。こーいうわけの判らんヤツって、ホントにいるんだな。

「コーヒー、いれたことないの?」
「インスタントなら……」
「良いから貸せって、座ってろ」

 コーヒー二人分をテーブルに出し、牛乳もご丁寧に温め、ピッチャーにいれ、角砂糖も用意する。
  うん、何でオレがこんなコトしてるんだ?

「スゴイね、沢田くん……。美味しいよ、これ」
「当たり前だ。インスタントと一緒にするな。てか、お前、ホントに何も出来ないんじゃないの?一人暮らしだろ?今」
「……まあ、何とかしてます。……何でしょうか、その珍しい生き物を見るような眼差しは?」
「別に……」
「ごめんなさい……」
「何、謝ってんの?」
「怒ってたし」

 もしかして、それでコーヒーいれて誤魔化そうとか思ってたんだろうか。
  謝るんなら最初から謝れっつーの。
  まあ、オレの言い方も悪かったけど。

「別に。オレ、こういう言い方しかできないんだろ?」
「やっぱり怒ってるし。しかも根に持ってるし……」

 彼女の頬に、右手を伸ばす。
  髪に触れ、耳の後ろ側を軽く指でなでる。

「持ってないって、別に」
「……顔が怒ってるし」

 少しだけ、彼女の顔は赤くなっていた。
  自分でも、何で彼女に手を伸ばしたかは判らなかったけど、今さら引っ込めることも出来なかった。

「テッちゃん?まだ起きてるの?……って、何してんの?!女の子連れ込んでる!スゴイ!あり得ない!明日、地震!?」

 そう言うオチか……!オヤジじゃないだけマシか。
  それでも、彼女の頬から手を離さない自分がいた。
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