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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第1話(the heads) 07/11


「こんちは。灯路に聞いたらここだって言うから」

 昨日の暴言を忘れたかのように、笑顔でそう言ったのはティアスだった。
  彼女の後ろでは新島が苦笑いしてる。

 いつものように、いつものスタバで愛里を待つ長い時間。誰か一緒にいれば喋ってるけど、一人の時は大抵譜面を読んでることが多い。
  新島も、いつもというわけではないけれど、仲はよいのでここで話をすることもある。

「昨日の譜面、読んでくれてるんだね」

 オレの手元を見て微笑む。思わず手で伏せてしまったが、もう遅い。

「……別に。ついでだよ。大体、あんた、何のつもりでこんなもの?」

 いかんいかん。落ち着いて、冷静に喋ろうと思っているのだが……。口からどうしても暴言がっ……。
  彼女一人ならまだ良いけど、新島が隣にいるってのがな。

「だって、すっごい真剣にこっちを見ててくれたじゃない、昨日。だから、好きなのかと思って」

 席は4つ。彼女は極当たり前のようにオレの左隣に座った。……近いよ。

「ティアス、なんか飲む?ついでだから買ってくるけど」
「あ、ホットカフェミスト、ディカフェでトールね。よろしく☆」

 愛里と同じのかよ。って、何でこんな小さなことに反応してんだオレは。乙女かよ。
  大体、ここは愛里の席だし、愛里だってこんな近くには座んねーっつーの!向かいだよ、フツーは。

「何でディカフェ?」

 あえて目をそらしながら話してるのに、彼女はオレとの距離をさらに縮め、でっかい目で下から覗き込むようにオレの顔を見つめた。

「いつもコーヒー飲み過ぎちゃうから。カフェインの摂取過多でしょ。日本はディカフェ少なくて困るんだ」

 彼女の返事に、少しだけ困ってしまった。どうしても愛里と比べてしまう。
  彼女はこんなにも愛里と違うのに、同じことばっかり言うのだ。
  ここで焦ったら、みっともないだけだ。

「君と同じこと言った女がその内ここに来るよ。オレはその人待ってんだけど」

 無理矢理笑顔を作って、覗き込む彼女と目を合わせた。
  一瞬、彼女が目をそらしたのに、オレは満足した。

「ふーん。それって、昨日一緒にいた人?賢木先生と沢田先生がなんか言ってたなあ……。確か、佐藤さん?」
「そう。何、君も一緒に飲んでたの?うちの父と、賢木先生と」
「ううん。帰ったよ。灯路も一緒だったし、沢田先生も「今日中には帰る!」って叫んでたし」

 そういえば、朝はしっかり帰ってきてて、シジミのみそ汁とか作ってたな。

「私は、あなたのことが知りたくて来たんだけど」
「……オレ?つまんないとか言ってたくせに」
「あなた自身は面白そうよ?灯路の話を聞いても、御浜の話を聞いても」

 ……なんか、不審な名前が出たな。

「ってか、何で昨日の今日で御浜と、オレの話なんかしてんだよ!」
「んー……メル友?今日のお昼くらいまでで、20通くらいしたかな?今日もこれから会う予定だし」
「何じゃそりゃ?!いつのまに?!」
「そんなこと言われても。御浜が会いたいって言うんだもん。私も別に御浜のこと、嫌いじゃないし。あの子は一緒にいると楽しそうだし」

 いや、まあ、御浜はこの女のこと相当気に入ってたみたいだから、良いことだけどさ。
  それにしても、意外と手が早いな、御浜……。今までそう言うことがなかったから、たんに奥手なのかと思ってたけど、対象がいなかっただけなのか。押しまくってんな。
  しかし、20通は、普通会ったばかりなら退くと思うけど、この女も相当変わってるよな。
  それとも、女の方もまんざらじゃないっつーことか?

 うーん……相手が御浜だと思うと、なんか変な気分だ。

「御浜が、沢田くんのこと気にしてたから。仲いいんだなって思って」
「仲いいっつーか……まあ、隣にいても構わないってくらいだけど」
「そうなの?まあ、そんなもんなのかな。でも、御浜の話であなたに興味を持ったのは確かだよ」
「何言ったんだよ、あいつ……」
「沢田先生の息子さんだって聞いてびっくりしたけど」

 新島が二人分のドリンクを持ってオレの向かいに座る。
  ティアスがドリンクを受け取りながら、笑顔でお礼を言った。

「沢田の父さん、かっこいいよな。優しいお兄さんだけど、いざってとき頼れるって言うか、しっかりしてるって言うか。まあこんなでかい子供がいるから当たり前なんだけど、若いからかっこよく見えるっつーか。オヤジっぽさゼロだしな。ティアスもああいうの好みじゃんね?フケ専だし」
「灯路……フケ専て、言葉が悪すぎ!ちょっと年上の人のが好みなだけよ。沢田先生はかっこよかったけど、あの人がかっこいいのは、子供がいるからよ?」
「そうなの?……不倫願望?」
「だーかーら、そう言うのじゃないってば」
「知ってるって。ティアスはブラコンだから」
「だから!もうやめてよ、沢田くんの前で恥ずかしいし!」

 なんか変な単語いっぱい出てきたし。

「フケ専なの?年下王子様系さわやか美少年(近所のおばさん談)は恋愛対象外?」
「は?沢田くん、何言ってんの?」

 こころなしか、顔が赤い。

「いや、判んないなら良い。てか、うちの親父はぶっちゃけかなりモテルよ?」
「だから、そうじゃないって。聞いてた?」

 やっぱり顔が赤い。
  ちゃんと聞いてたって。親父をかっこいいとか、いい男とか言う女は結構いるけど、「子供がいるところが」って言ったのは多分初めてだ。ダシにされたことは数知れないけど。

「ブラコンなんだ?」

 おっと、いかん。うっかり顔がにやけてしまう。なんか弱みを掴んだ気がするぞ。

「……違うもん」

 なんだ。可愛いじゃん、この女。俯いて照れちゃって。拗ねてやんの。

「まあ、ここんちの兄ちゃん、苦労してるからな。年も離れてるし。性格は歪んでるけど、結構すごい男だよ。だから、ちょっと男選びの基準がずれちゃっただけだよな?」
「……やっぱ、ずれてるかな?あの人、相当よね」
「うん、相当だよ?」

 新島は自分でまいた種を刈り取るように、さりげなくフォローに入った。

「あれ、ティアス!何でここにいるの?待ち合わせは……」

 何故か店に現れた御浜は、そう言いながら、空いているオレの右隣の席に座り、携帯で時間を確認した。
  別に御浜とも待ち合わせなんかしてないけど、コイツがいろんなことを突然行うのはいつものことだ。

「うん。まだ時間あるから。沢田くんの様子を見に来たの」
「そう。奇遇だね。俺もちょっと早く学校終わったから、テツの様子見に来たんだ」

 何でだ……。
  何でオレがお前らに様子を伺われなくちゃ行けないんだっつーの……。

「これ、昨日の楽譜?」

 まったく、ティアスも御浜も、めざとい。手で隠してたのに。
  そろそろ愛里が来るころだ。ついでだし、しまっておこう。
  多分、愛里がこれを見たら、不機嫌な顔をするだろうから。

「……愛里が来るまで、時間があったからだよ」
「また、弾いてオレに聞かせてよ。それで、ティアスが一緒に歌えばいい。きっと、賢木先生の時よりすごくなるよ」
「お前ね、芸大の先生と比較して、何言ってんの?」
「なるよ」

 そう言って、御浜は笑う。
  新島は少し苦笑いしていたけど、誰も彼の言葉を否定はしなかった。茶化すことすら。

 オレだけかな?御浜の言葉に力を感じているのは。
  ティアス達の様子を見る限り、そうじゃないと思いたい。

「かもね」
「うへー、沢田、自信過剰」

 何でオレだとそう言う話になるんだよ。

「そういやさ、佐藤さんて、いつ頃くるの?」
「さあ……今日は遅いほうかな?」

 御浜に言われ、思わず携帯を見た。連絡はない。
  まあ、酷いときは全く連絡なしで3時間くらい待たせるしな。

「ティアス、昨日メールした本さ、今から見に行こうか。ここ、上に本屋があるから。今日、夜は用事があるって言ってたろ?」
「うん。……灯路も……」

 御浜と一緒に立ち上がるティアスが、新島に視線をくれる。
  何だろ、どういうつもりなのかな、この女。

「後で行くわ。オレ、もうおっさんだから、ゆっくりさせてくれ。コーヒー残ってるし」

 彼女はオレをちらっと見る。視線がぶつかったとき、思わず目を背けてしまった。
  それは彼女も一緒で、もうオレを見ることなく、御浜の後ろについて行った。

「何だよ、御浜に気い使ってくれた?わざわざ」
「いや、オレ、邪魔かなー?と思ってさ。ティアスがついてこい、っつーから来たんだけど」

 意外。あの女がついて来いっつったんだ。メールの話を聞いた後だから、変な感じだな。
  新島は空のカップを弄びながら、オレの顔を見ずに話を続ける。

「てかさ、よく判んないけど、白神ってさっき気を遣ったよな?お前になのか、ティアスになのか知らないけど」
「ああ、愛里のこと?」
「そ、佐藤さんの性格じゃ、ティアスと合わないのは明白じゃん?昨日もかなり睨んでたし、そうでなくても怒らせてたし。佐藤さんほどじゃないけど、ティアスも性格きっついから、衝突すんの目に見えてるし。女同士はえぐいからな……」

 確かに。そんな怖い状況に立たされるのは嫌だ。もしかしてその礼ってコト?
  昨日も思ったけど、新島って、こういう所スゴイっつか、えらいっつか……。今まであんまり気にしてなかったけど。

「なんかさ、ティアスの保護者みたいだな」

 時計仕掛けのオレンジのテーマが流れる。渋い着メロ。さすがにオレはその選択はしないな。

「わりい、ちょっと出させて。はいはい、なんすか、お兄さん?ティアスですか?いや、オレ、知らないなあ。うちの親とか連絡しました?……ああ、そりゃそうですよねえ。オレも聞いてないですもん」

 そう言ったところで、新島は電話を切った。
  明らかに相手が途中で切った、って感じだけど。

「……ついさっきまで目の前にいたじゃん、ティアス。相手誰よ?」
「ティアスの義理の兄ちゃん。まあた、うっさい上に自己チューなんだわこれが。電話も勝手に切るし」
「……兄貴かよ」

 さっきさんざん二人でずれてるだの、歪んでるだの言ってた、あの兄貴ね。どんなヤツだろ。

「教えてやればいいじゃん。てか、家出?」
「似たようなもんだよ。居場所ばれるといけないから、うちの親とかにももちろん内緒。アイツ、めちゃくちゃだよ?」

 メチャクチャっつーか、クソ度胸はありそうだけど。

「ベルギーにいたのに、わざわざ兄貴の元から出てきて、なんでこんな片田舎に」
「さあ、あんまり詳しく聞いてないから知らん。横浜に兄ちゃんのマンションがあるから、そこに行くって言って飛行機代だけ借りて日本に来て、東京から『ながら』でわざわざここまで来たからほとんど金なし。いきなり携帯にかかってきて、どうしようって言われてな」
「どうしようって言われて、どうしたんだ?お前んちの両親とか知らないんだろ?」
「ああ、それは何とかしてる。携帯も昨日持たせたし」
「……何とかって……。てか、何でそこまですんの?いくら従姉妹だからって。もしかして」

 新島って、ティアスのこと好きなんじゃ……。てことは、御浜の存在って、邪魔じゃない?

「いや、ないない。あの女、ガキだし。可愛いけど、年上だけど、妹みたいなモンって言うか……まあ、アイツには借りもあるし」
「借り……?」
「そ。だから、別に白神がティアスのこと落とそうと落とすまいと、どっちでも良いって。そう言うことだろ?」
「いや、落とすかなあ。ああいうのと無縁の男だからな、御浜って。まあ、本気なら、うまく行けばいいかと思うけど」
「……ああ、そう。オレさ、別にどうでも良いけどさ」
「何だよ」
「もし、……もしもだよ?ティアスの意志が違うところにあったら、オレはそれを尊重するよ」

 遠回しに言ってるつもりかもしれんけど、それって、今の時点でティアスは御浜のことそうでもないってコト?幸先不安だな。

「お互いのことだろ?」
「こう言うのは環境もあるって。タイミングとかね。沢田はそう言うことなかった?」

 入口に、愛里の姿が見えた。

「なさそうだな。沢田って基本的に『待つ』タイプだしね。オレ、そろそろ行くわ」
「ティアスの所?まだ30分もたってない」
「いや、一応、連絡あるまでは待つさ。あいつ、白神のこと、まんざらでもないみたいだし」

 今度はオレに気を遣ったってわけね。
  ご丁寧に、テーブルに残ってた3人分のカップをまとめて持っていった。
  それにしても……どっちだよ。あの女は御浜に気があるのかないのか、はっきりしろって。

 結局、その後何も言わずに、新島と入れ替わりで愛里が来た。

「テツ、今、新島くんいたけど、ここにいたの?……テツ?」
「……あ、悪い、愛里。ちょっと考えごとしてた。なんだっけ?」
「だから、新島くんよ」

 もしかしたら、嫌な気分だったかな?アイツ。
  何であんな根ほり葉ほり聞いてるかね、オレって。ティアスがどこに住んでようが、どうやってきてようが、関係ないじゃん。

  あんな女、どうだって良いじゃん。
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