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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第1話(the heads) 03/11


 「つまんないですって!何なのよ、あの女!」

 新島達の姿が見えなくなったのを見計らって、オレに怒鳴りつける愛里。もう慣れっこだ。

「お前だって、同じこと言ったじゃねえか、愛里」
「私が言うのと、あんな一回聞いただけの女が言うのは別問題!あんたは私が教えてんのよ?私がバカにされたのも一緒よ!」

 ……ごめんな、愛里。
  そう言うけど、オレはあの女の言うとおり、ホントは楽しくなかったんじゃないかって思うんだよ。
  オレのピアノがつまんないって言うより、オレが楽しくないことの方がオレには問題だ。

 だって、こんなに心の奥の方がざわついてるんだ。

『ピアノ、真剣にやりたいなら、私とやろうか?絶対楽しくしてあげる』

 それにしても、何であんなに自信たっぷりなんだ……。信じられん。

 ムカツク。感じ悪い。
  でも、売り言葉に買い言葉とは言え、オレも相当やな態度をとってた気がする(だって、新島があんなに申し訳なさそうにしてた)

 ていうか、何でこんなにオレ、自信喪失しちゃってんの?!

『つまんなそうだから。パワーゼロって感じ』

 おかしいな。今日に始まったことじゃない気がする。

「……ちょっと、どうしちゃったのよ、テツ。なんか元気ないわね」
「いや、別に……。オレ、そんなにつまんなそうにピアノ弾いてた?」
「うーん。まあ、誰にでもそう言う時期はあるわよ。迷っちゃったり、判らなくなっちゃったりしてさ。メンタル面がどうしても強く出ちゃうから。楽しいだけじゃどうしようもないことってあるわけだし。弾きたくなかったら弾かなきゃイイだけの話。自分を追い込んで、一皮むける人もいるけど、それで壊れちゃう人もたまにいるから、無理しない方がいいわよ」

 ようするに、オレは相当つまんなそうに弾いてたわけね。

「もっとポジティブに考えなさいよ。誰だって迷う時期はあるんだから。受験シーズンじゃなくて良かったじゃない」

 なんだよもう、受験受験って……。

「どうする?今日の練習。テツの好きにすればいいわよ?」
 
  彼女はそう言って、ちらっとドアの方を見た。

 正直、今日はもう弾く気にはなれない。でも、愛里がこれからどうしたいのか判っていたから、ホントは動きたくなかった。

「親父、来てるって……」
「会いに行くに決まってるじゃない。こんな堂々と会えることなんて最近無いから。ちゃんと帰って来てんの?鉄城は」

「そりゃ、あそこしか家はないみたいだし、夜と朝はいるよ。たまに夕食作って待ってるし」
「そうなんだ。受験シーズン近いから忙しいとか言ってたのに、そんなコトしてるんだ」

 愛里にはそんなこと言ってんだ。オレ達には何も言わずに、いつも通りだったけど。

 愛里も親父も、お互いに何もあるわけがないって言う。
  でも、愛里はずっと親父を追っかけてる。
  家に来るのは遠慮してるみたいだけど。

 本当のところはどうなんだろう。そんな言葉なんて、信じられるわけもないのに。


「他に別宅の一つや二つありそうだけどな、あの親父は。モテるし。よく女から電話かかってくるし」

「ないわよ。確かにモテるから、女の一人や二人や三人はいるだろうだけど、そう言う男じゃないのよ、あんたの父親は」

 人の目って言うのは……主観と理想が入り交じって、見たいものしか見えないものだよ、愛里?
  何でそんなに親父が好きなの?

「オレ、一緒に行った方がいい?」

 そう、精一杯気を遣ったオレの言葉を受け、彼女は

「あんた、時々子供みたいね。でも、嬉しいわ。来て欲しい。会いやすいし……あんたの話もしておきたい」

「オレの話?」

 オレの手を引き、練習室から引っ張り出して、扉に鍵をかけた。

「あんたの受験の話よ。本気で受験する気があるなら、いいかげんちゃんとした先生つけないとね。私だけじゃダメなのよ。そしたら、お金がかかるでしょ?お金出すのは鉄城なんだから」

「ああ、受験……」

 なんか、いろんな意味で気が重いな……。


 

 

 普段なら、どの練習室にいるかとか、教務室に聞きに行くのだが、今日はその必要はなかった。

「な……なによ、あれ!?」

 音楽科棟内の一番はしにある大練習室。そこには異常な人だかり。
  40人くらいだろうか?(一学年に40人もいないのに)普段は広すぎる練習室が狭く感じる。
  その中心にいたのはピアノを弾く賢木先生と、歌うティアス。
  奥の方に新島と親父が控えていた。

 何故か、隣で騒ぐ愛理の声が、耳に入らなくなってきた。

 クラシックかと思ったら、ロックだった。
  だとしても、それを抜きにしても……彼女の歌声はすごい、の一言だった。

 楽しくしてあげる、って言葉、案外嘘じゃないのかもしれない。

 ピアノと歌い手。たったそれだけの存在が作る場なのに、この大きな部屋と、彼女たちを囲む人間を揺さぶっている。

「テッちゃん!これ、なんて曲?」

「え!?」

 人混みの中から声をかけてきたのは、真だった。
  隣には御浜と……、確か真の遠縁にあたる南 紗良さんだ。クールビューティーって言葉がぴったりの美人だが、いつ会っても笑顔が固い。そういや、彼女も芸大だ、っつってたな。

「知らない。ロックっぽいけど聞いたこと無い。何でお前らここにいんの?美術じゃなかったっけ?彼女」

 真が大学に出入りしている話はよく聞いてた。南さんに会いに美術科の方によく行くんだって。こんな山奥の、交通の便の悪いところまでわざわざ。
  知ってたけど、大学内で会ったのは初めてだった。

「たまたまだよ。なんかすごい子がいるって美術の方にも噂が流れてきてさ。見に来たの。まあ、8割はその子がすっごく可愛いってことだったんだけど」

「あれ、なんかプロの人が来てるとかって話もなかった?」

「そうだっけ?なんか情報が錯綜してるけどね。気分転換に見に来たってわけ。部室の近くだったし」

 真と御浜がいたらしい「部室」がどこにあるかは俺はよく知らないが、美術科棟はこの音楽科棟から(心理的に)ちょっと離れている。(といっても、通り道が草木の手入れがしてなくて移動しづらいだけで、距離的には同じ敷地内なのでそうでもないのだが)

「すごいね、彼女。きれいな声だし。なんて言うか力があるよね。オレ、音楽のことよく判んないけど、彼女は何だか良いよね。すごく楽しそうで。見ててこっちも楽しくなるって言うか。そう思わない?テツ」

 御浜の言葉は、いつでもオレに重くのしかかる。
  今までも、これからも、きっと。
  でも、今日の言葉は……

「そ……そうかもね……」

 重いっつーか、……痛いっつーの!
 
  曲が終わり、彼女が一礼をすると、歓声と共に拍手がわき起こる。
  クラブやライブハウスではなく、大学の練習室でこんなことってあるのか?

「テッちゃん。聞きたかったんだけど、なんで奥に新島がいるの?テッちゃんの親父さんがあそこにいる理由は御浜に聞いたけど」

「あー、なんかあの女の従兄弟で付き添いらしいよ?さっき挨拶に来た。今日はやけに知り合いに会う日だな」

「ふーん。あの人、友達?」

 新島の方を見てそう言う御浜。そういや、知らなかったっけ。

「まあ、そんなもんかな。テッちゃん、御浜にお友達紹介してないの?」

「お前が紹介すればいいじゃん……」

 いろんなヤツと仲よさそうにしてるくせに、どっか一線を引いてるような所があるよな、真は。

「じゃあ、紹介して、オレのこと」

「良いけど。珍しいね、御浜。あんまりそう言うこと言わないくせに。なに、彼女に興味持っちゃった?新島から紹介して貰おうってハラ?」

「言い方悪いけど、そうかな?」

 ……あれ?

 なんだ?なんか今、やな感じがした。
  さっきティアスと話したときにざわついた場所が、引っかかれてるみたいに痛かった。

「オレ、あの子のこと、好きになっちゃうかも」

 何言ってんの?
  御浜の言ってること、よく判んねーって。

 ティアスは、歌ってただけなのに?
  お前、そんなこと言うようなタイプじゃないし!

「へー。いいね。御浜、そう言うこと言わないから、オレ、手伝っちゃおっかなー」

「邪魔するのはよく見るけど?」

「うわー、酷いこと言うね、紗良。御浜みたいなお子さまにまでそんなコトしないってば」

「何だよ、お子さまって」

 怒って見せる御浜は、オレの知ってる御浜だった。

 人混みの向こうで、ティアスが賢木先生や親父と話している。
  何の話をしてるか判らないけど、先生達は楽しそうで、新島が一人判らなそうな顔をしてるところを見ると、専門的な話でもしてるんだろう。
  親父も、多少なら話が分かるし、賢木先生達といるといつも楽しそうにするからな……。

 その様子を遠巻きに見ながら、唇をかみしめる愛里の姿があった。
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