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W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】(W.E.M[World's end music])

W.E.M【世界の終わる音が聞こえる】 第1話(the heads) 02/11


 普通は受験のためにきちんとした先生をつけるものだ。

 この待ち合わせのスタバからほど近い芸大で、オレは受験ために愛里にピアノを習う。
  その様子を見た他の先輩達はみなそう言った。

 佐藤愛里は舞台映えもするし、ピアノ科の院生の中でも巧い。だけど…って話らしい。
  でも別にそんなことはどうでもよくて、オレは愛里にピアノを教えて欲しかっただけで、何だって良かった。

 芸大に出入りしてるのだって、別にここに入りたいからってわけじゃない。(そもそも部外者だし)
  愛里の練習の見学とか手伝いとかいう名目で入ってるだけで、ホントにそれだけのつもりだし。
  別に大学なんか、この近辺なら上から下まで選び放題だし。入れりゃ何処だっていい。

 もう2年も終わりだから、真剣に。特に音楽系は早めの対策をって言われるけど。
  別に、なあ…。

「テツ、この曲は好きじゃない?」

 大学の練習室でオレのピアノを聞いていた愛里がオレを制す。

「なんで?」
「つまんなそうだから。パワーゼロって感じ。ピアノだっていつもはヤバいくらい神経質に触るのに」

 神経質…。あのなあ。オレがどんな思いで…。

「受験は来年なんだから、今は好きなことしようよ。つまんないヤツはつまんないものしか造れない!…ですって」

 受験は…てセリフはまずいだろう。目の色変えてるヤツもいるのに。

「造る?ピアノなんだから弾くで良いだろ?」
「だって、これ言ったのは陶磁科の後輩(同い年)なんだもの」
「ピアノ関係ないし…」
「あら、芸術に限らず全てにおいて、生み出すものには創造主の全てがにじみ出るものよ」
「じゃあ、オレのピアノは愛に溢れてるはずだ」
「あら~、ナマイキに高尚なこと言うわね。音楽への愛だなんて」
「愛里へのだよ」
「あら残念。私、子供には興味ないから」
「奇遇だな、オレもおばさんには興味ないや」
「…テツ、あんまり失礼なこと言ってると後が怖いわよ?」
「…自重します」

 ホントに何かしそうで怖いっての。

 ここで、本気で話せば、何か変わるのか?
  冗談にしか取らないってわかってるから、何だって言えるさ。
  ハズカシイなオレってヤツは…。
  真の言う通りかもしれないな。

「失礼しま~す」

 練習用の個室に人が入って来るのはよくあることだったが、その時の声は、なぜか学校で聞いた覚えのある声だった。

「おー、ホントに沢田がいる。マジでピアノ弾いてたんだ」
「いつもそう言ってるだろうが。新島こそ、なんでこんなとこに?」

 新島灯路も真同様、よくあの場所に集まってくる。つるんでることもよくあるけど、芸大で会うのはさすがに初めてだ。

「いや、従姉妹がさ、ここの声楽科の編入試験を受けるとか言ってて、見学に来たわけよ」
「なんでお前まで?」
「案内だよ。ベルギーから来たばっかだし、こっちの地理に疎い上に方向オンチだし」
「ベルギーならあっちの音楽学校の方が…」

 愛里が少しうらやましそうに言ったが、

「いや、あいつ学校行ってないはず…。なんかここの教授の名刺もってたし。編入が無理なら、まだ18だし、4月から入学でもいいしって…。人数少ないし、年齢幅もあるから居心地は悪くないとか言われて…なんかその教授に招待されたって言ってた」
「なにそれ、そんなおかしな話あるわけ?!留学生かなんか?」
「いや、名前は向こうの名前みたいなのついてるけど、ほとんど日本人ですよ?」
「愛里、なに噛みついてんだよ」
「噛みついてなんかないわよ。」

 噛みついた理由が少しだけ判った気がする。愛里はこの大学にはいるのに結構苦労してるから、降ってわいたようなチャンスを貰ってる新島の従姉妹とやらが、気に入らないだけだ。

「灯路、知り合い?」
「何だよ、ティアス。賢木先生はもう良いのかよ」
「賢木先生ですって~?ピアノ科の先生じゃないのよ?なんで声楽に……」

 あー、なんか愛里の逆鱗に触れまくってるなあ……。しかも、拾ってきたのはあの賢木先生っぽいし。
  親父の旧友で、ピアノ科の助教授。愛里としては気に入られときたい相手だしな。

「さあ?なんか友達が来たからって、そっちに行っちゃったわ。勝手な人。ねえ、ここで誰かピアノを弾いてたでしょう?」

 声と共に、軽やかな足音が徐々に練習室に近付いてくる。
  どんな美人が出てくるか、当然のように期待してしまう。あの賢木先生が気に入ったってことは、相当美人なんじゃないの?そのティアスって女。
  女の手が扉の向こうにちらっと見えた。その後、ゆっくり入ってきた。

「ねえ、ピアノひいてたの、誰?ここの学生さん?」
「違うよ。オレの同級生だよ。あいつ、沢田鉄人って言うんだ」
「ふうん」

 じろじろとオレを見る女。確かに賢木先生好みの美人だけど……確か、年上だったと思ったけど?すっげえ童顔。賢木先生、これはロリコンじゃねえ?確かに体はすごいけど。
  ダメージデニムに薄手のグリーンのニット。栗色の髪は多分地毛だろう。ショートカットに切りそろえていた。
  さっぱりした格好で俺は嫌いじゃないけど、確実に愛里は嫌いだな、こういう女は……。全然タイプが違う。

「君さ、なんか、さっき賢木先生の所に来てた人に似てるね。兄弟かな?お兄さんとかいる?」
「あー。それ、オレの親父じゃないかな?賢木先生の友達」
「そーなんだ。じゃあ、君は高校生だけど、この大学の関係者ってこと?」
「いや、別に……。てか、あんた、妙にオレに突っかかってない?」

 感じ悪ーい。この女、さっきからじろじろオレを見てるし、なんか話し方には棘があるし。美人だからよけーに冷たく感じる。

「べつに。ここの大学の人ってどんな感じなんだろうと思っただけよ。だってさっきのピアノ、つまんなかったんだもの」

 ……なっ?!

 言うに事欠いて、つっ……つまらないだとお?!

「ちょっと!あんたねえ?賢木先生のお気に入りだか何だか知らないけど、失礼にもほどがあるわよ?私が教えた子よ?」
「……なんで?だって君、ああいうの、弾いてて楽しかった?」

 ……そう言われると……。それは、どうだろう?

「ティアス、どうしてお前はそう気が強いんだよ。愛里さん怒ってんじゃん。すいません、ホント。沢田も気い悪くすんなよ?コイツ、ちょっと口が悪いから。悪いな。ほら、謝れよ」
「なんで?怒らせたから?」

 別に怒らせるつもりで言ったんじゃない、とでも言いたげな顔だった。

「気分悪くするようなこと言ったから。別に何を言うのも自由だけど、言い方に気をつけろってことだよ、もう。佳奈子さんが言ってただろ?」

 なんか新島って、思ったより大人だなー……。人の受け売りとは言え、そう言うこと言えるか?

「あ、そっか。そうだね。ごめんね」
「謝って済むわけ?相当失礼よ、その子!」
「愛里……。こいつ、謝ってんじゃん。……それにつまんないって思ったの、ホントなんだろ?えっと……ティアス、でいい?」

 ティアスはオレを真正面から見上げたまま、頷いた。
  確かに、彼女の言うことをオレは認めてはいたけど……さすがにへこむな。

 彼女はまだ何か言いたげにオレを見上げている。

「何だよ?」
「名前、何だっけ?」
「沢田鉄人。ホンットに失礼な女だな、あんた!」

 さっき新島が説明してただろ!あったま悪いんじゃねえの?

「沢田くん。ピアノ、真剣にやりたいなら、私とやろうか?絶対楽しくしてあげる」
「自信過剰じゃねえの、あんた?世話になんかならねえよ」

 オレには愛里がいるのに。

「そう。残念」

 意外にも、ティアスは特に怒った風でもなく、オレに笑顔を見せた。
  少しだけ、胸の奥の方がざわめいた。
  それが彼女の台詞のせいなのか、笑顔のせいなのかは判らなかったけれど。

 声楽科の教室に戻っていくティアスの後を新島が追いかける。
  新島がティアスには聞こえないように、俺達に身振りで謝ってるのが見えた。

 
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