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Voice【最果てから呼ぶ声】(Voice[that is called farthest])

第8章
01
 
 知流と帰った後、夜になって戻って来た千紗と、台所で二人だけで話していたカホがオレの部屋にやって来たときには、時計の針は11時を廻っていた。

 何度も、何度も言葉を飲み込んでいたせいか、満足に言葉をかわすことが出来なかった。

 黙って、何かを紛らわせるように、繰り返しキスを重ねる。

 彼女の顔を見ていたかったけれど、オレの顔を彼女に見せたくなかった。彼女の目を暗闇で閉じさせ、オレは月明かりだけを頼りに彼女の姿を焼きつける。

 言葉を飲み込むたびに、オレは当たり障りの無い台詞を考える。

 彼女は向こうに帰りたがってる。彼女の家族が、国がある。知流のカホに対する思い。カホとクロガネの関係…。全てが、オレから言葉を奪う。

 今まで、ずっとそうだった。オレは、何も伝えられなかったんだ。オヤジにも、カホにも。あの時まで。

「カホ」
「……なに?」
「いつになるかわかんなくても、落ち着いてからでいいから戻ってこいよ。少しの間だけでもいいから」

 言葉を選んで、なるべく彼女の負担にならないように。
 でも、このまま帰してしまうのだけはどうしても嫌だったから。

「……よけいに、寂しくなるよ、きっと」
「そうかな?」
「私に執着しちゃダメよ。離れる時は離れなきゃ」

 くり返される言葉。

 カホにとって大事なのは、自分の国のことで、オレや知流じゃない。
 執着しちゃダメよ、と彼女は言えるけれど、オレには言えやしない。
 ……その程度ってこと?

「ふざけんなよ……」

 どうしても押さえられなかった。
 怒りに身体が震えているのが判る。何が『好き』だ。そんなの、誰が……!
「え」
 顔をあげ、彼女の顔を見た瞬間、窓から入ってくる月明かりがちょうど逆光になって、はっきり見えなかった。一瞬の出来事。
 微笑んでたけど、泣いていたようにも見えた。

「ふざけてなんかない」

 声が震えていた。
 それで、オレは何も言えなくなってしまった。

「おやすみ」

 彼女は、オレを見ることなく、部屋から立ち去った。

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