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Voice【最果てから呼ぶ声】(Voice[that is called farthest])

第6章
01
 
 東堂家の日本家屋に増築された洋風のリビングは、そんなに広くない。にも関わらず、何故か七人(巨人二名含む)も集まってしまった。
  人当たりはよいが、意外と人見知りで、なかなか人にうち解けない(様には見えないのがまた厄介な)知流にしてみればこんなことは初めてじゃないだろうか。

 別に集まろうと思って、集まったわけではないのだが。

「せっかくの休みだというのに、何だか大学にいるみたいで、やですねえ」

 入試の準備で忙しくて、やっと今日から休みに入ったのに。と愚痴をこぼした。確かに年末年始いれて五日しか休みがないのは、俺からすれば考えられない。大人になっても忙しそうな会社に入るのはやめよう……。
  さらに煙草の吸えないストレスからか、相当な不機嫌ヅラの次郎。だったら、何もこんな人の多い時間に来ないで、いつものように台所で煙草を吸ってりゃ良いもんだが。他の連中がソファに座ってるのに、いくら最後に顔を出したとは言え、絨毯の上に座ってるのも彼の不愉快感を増しているのだろう。

「話には聞いていたけど、君があの時、研究室で治療してた子か。治ったようで、何より」

 誰に対しても、きっとこんな感じなのだろう。優しいし、正直だけど、酷く不器用で固くてぎこちない。サムライ魂だな。
 澄未さんとまともに面と向かって話したのは初めてのはずのカホは、そんな彼女の様子を見て思わず吹き出し、

「ええ。もう平気よ。澄未さんておかしな人ね。可愛い」
「カホちゃん、澄未ねらい!? 」
「……あんた、どうしてそう言う発想しかできないわけ? 」

 まったくだ。それにしても、たまにしか来てなかったのに、カホは麻斗のことを怯えなくなってるな。ていうか、かなり仲良いし。いつのまに? 俺や次郎は毎日来てたから判るけど。油断ならねえ、こいつ。

「姫君、お身体の調子はどうですか? 」

 麻斗と一緒に騒ぐ様子を見て、声をかけた様子の次郎。

「ええ、調子良いよ。ありがとう」
「それは何より。……で、今日は何のご用ですか? あなたが呼んでると聞いて来たんですが」
「ええ。迷惑ついでに次郎さんにお願いがあるのよ。……大学の中、案内してくれない? あの中にクロガネがいるはずなんだから」
「状況的に、その可能性は非常に高いですがね。見つけたらどうするおつもりで? 」

 彼女は握り拳にぐっと力を込め、目を輝かせながら

「もちろん、捕まえて戻る方法を聞きだして、それから地下組織を壊滅させて……ええとそれから……」
「捕まえるって、どうやってですか? 出来れば具体的にお聞きしたいですねえ」
「……ええと、力ずく? 」
「人の職場を暴行事件の現場にする気ですか? 申し訳ないですけど、今は戦国時代でも中世欧州でも戦争中でもありません。何ですか、その好戦的な態度は」
「……こっちは戦争中だもの。殺すつもりはないけど……でも」

 不意に真剣な目をするカホに、違う世界を感じたのか、いつもならこれから延々二時間は続くであろう説教が、ピタッと止まってしまった。

「コタ、あなたが妙な本を読ませたりするから……」

 で、こっちに話を振るわけだな。

「ビデオも見せてたよね。何だっけ、あれ? 」

 知流、余計なことを……。当たり前のように隣同士に座る彼らが、今となってはこの心苦しさを増長させる。

「違うって、見たいって言うから。この女が好戦的なのは最初からだって。ケガしてたからおとなしくしてただけで」
「なに、『俺だけは最初から判ってました』みたいな言い方しちゃって。ね、澄未? 」
「……そうかな? 」

 澄未さんとの間に巨人が座ってて、話が出来ない。もしかして、メールしてんのがばれたかな? 研究室で会ったときに、こっそりチェックしてるとか言ってたし。別に他意は無いんだが、こいつは聞く耳持たないだろうしな。

「好戦的は言い過ぎかな? ……ちょっと乱暴でせっかちなだけで」
「ちょっとぉ、知流まで」

 むくれた顔をして見せるが、お互いに笑い合っていた。そう言うのはじゃれ合うって言うんだよ。

「でもね、カホ。俺も、君が直接大学に乗り込むのには反対かな。言っちゃ悪いけど、君は目立つし、たとえ中に詳しい次郎に案内して貰ったとしても……」

 知流の言い方じゃ、優しすぎる。言わなきゃいけないことはきちんと伝えるし、言うときには決める男だけど……彼女相手じゃそれも期待できない。
 少しだけいらつく心を何とか静めながら、彼の代わりに喋り始めることにした。

「次郎じゃどっちかっつうと、足手まといだよなあ。お前が力ずくで、と考えているように、相手だって同じことを考えてる可能性があるわけだ。いくらこの国が平和だからと言ったところで、事件はあちこちで極当たり前のように起きてるからな。敵がこっち側の人間だとしても、そんなこと気にせずに襲ってくるかもしれない。あんなケガでうろついてたんだから、それくらいの危機感はもちろん持ってるよな? 」

 自分でも、嫌味な言い方をしたもんだと、よく判ってるけど。

「当然でしょ? 」
「判っててそう言うこと言うか、お前? 大体、短絡的すぎるんだよ。お前と相手じゃ立場が違う。お前は敵を見つけなくちゃならない。でも、敵はお前が国に戻って自分の正体をバラされなきゃ良いわけだ、最終的には。状況的にお前が断然不利! 相手はここと向こうを行き来しながら、お前が現れるまで待てばいい」
「相手が積極的にカホちゃんを殺そうと思ってたらどうすんだよ? 」

 真面目に話してんのに、人の顔を掴むな、麻斗。

「確かにその可能性もないことはないけど、低いと思う」
「何で? 」
「……カホが生きてるから……だよね? 」

 知流が代わりにそう答えたので、俺はただ頷くだけにとどめた。俺の用意していた言葉より、ずっと彼女の負担にならない言葉を、彼は選んでくれた。

 本当に殺すつもりなら、彼女を研究室には連れてこない。連れてきたとしても死体のままだろう。生きた人間と、死体。どっちも処分するのは厄介だが、喋らない方を選ぶ気がする。要するに、処分する気がないか、出来なかったか、だ。

 彼女をこちらで殺すのも、向こうで殺すのもリスクが大きいだろう。彼女は向こうでは王女だし、こちらでは人一人の死体を処分するのは難しい。

「相変わらず、あなたの頭の中はサバイバルですよねえ。『あっち』の方が向いてるんじゃないですか? 姫とも仲良いみたいですし」

 とうとう我慢できずに煙草を吸い出したが、目の前のソファに座る千紗に取り上げられていた。年齢、倍のはずなんだけどな……。

「危機感を持って生きてるだけだよ。別に仲も良くないし。大体、それを言うなら麻斗の方が殺伐としてるだろう? 」
「俺? 俺は平和な世の中を地道に渡ってくのが似合ってるから」
「ああ、そうそう。それで麻斗を呼んだんだけど。地道に渡ってる人に協力して貰おうと思ってさ」

 全く、全然、完全にそう思ってないだろう、知流。そんな奴に何を協力させようと。

「俺に? 何を? 」
「クロガネの調査。大学に潜入して、ね。カホよりは目立たないだろ? 」
「……それなら、どうして私にそう言う話をしないんですか……」

 悲しそうに呟く次郎を、全員の視線がさらに追い打ちをかける。
 さすがに哀れに思ったのか、結局知流がフォローする。

「……ごめんごめん。ほら、次郎はさ、大学の関係者だったりすると、後々立場とか大変だろ? 」
「そうですね。飯沼先輩のように出世街道進んでるわけでもないんで、どうでも良いですけどね」
「何で? 次郎、成績はいいんだろ? 大学も首席で出てるし、今だって……ねえ」

 と、澄未さんに助けを求めるが、彼女は正直な人だ。ただ黙るだけで何も言えなかった。

「ほら、さっきコタも言ってただろ? 相手は世界が違うんだから、いきなり襲われたら危ないし」
「そーですねー。あんた達と違って、鈍くさいですからねー、私は」

 どんな三十だ。幼稚園児並の拗ね方しやがって。さすがに知流も困ってるが、俺は何もしないぞ。めんどくさいだけだ。

「次郎さんには他にいろいろやることがあるじゃないですか。面倒なことをコタちゃん達がやってくれるって言ってるんだから、ここでどーんと構えてれば良いんですよ」
「そ……そうですかねえ」

 千紗の言葉で次郎が持ち直したが

「ちょっと待て、俺がやるんじゃない! 知流と麻斗だ! 間違ってる!! 俺は正月は炬燵で蜜柑だ! 」

 立ち上がり、びしっと指さし台詞を決めた。

「どうせ正月は大学には誰もいやしませんよ。それどころか封鎖されてます」
「てかさー、そんなおっさんくさい正月は却下じゃんねー」
「て言うか、何で! 何時の間に!? クロガネを俺達が捜すことになってる? てか、そんな話……」

 続けようと思ったその言葉は、彼女のまっすぐな視線に止められた。仕方なく、麻斗の隣に再び座り直す。

「ま、いいじゃん。暇つぶしだよ。それで知流とカホちゃんが納得するならさ。あの子の話がホントなら、確かに大学に行くのは危ないね。どこに本人がいるか判らないんだからさ。場所突き止めて、なるべく騒ぎを大きくしないように、なおかつカホちゃんが生きてて捜してることもばれないように、こっそり後ろから近付いて、寝首をかくのがベスト。ホントじゃなくても、それはそれで、良い暇つぶしでしょ? どーせ退屈してんだし」

 こんな言われ方して、カホが黙ってるわけ無いのだが、そこをすかさず彼女の言葉を遮り、知流がフォローする。

「カホ。君が真正面から言って、力ずくで彼を押さえつけられたとして、帰れると思う? 」
「……帰れるようにしてみせるわよ」
「判ってるくせに……」

 彼女の頑なな態度に、彼はただため息をつく。仕方ないな、なんて声が聞こえてきそうな、包み込むようなその大らかな態度。

 たった一ヶ月。それなのに、彼ら二人の間に流れる時間の、なんて重さ。

「もう少し、賢くやれってことだな。単細胞」
「コタ! 何よ、その言い方! ホント、超ムカ」
「手伝ってやるっつってんだよ。仕方ねえから」
「良いよ、別に。危ないし……」
「お前と違って、顔が割れてるわけじゃないから全然平気。それよりお前は一人でふらふら外に出歩いてんじゃねえよ。目立つし、どこで敵に会うかもわかんねえのに」

 あのイブの日以来、よほど外に出たかったのか、それとも一人でこの辺りを調査していたのか、短い時間だったが毎日のようにどこかへ出かけるようになっていた。知流がそれを心配して着いていき、それをさらに俺や千紗が追いかけると言うことの繰り返し。

 彼女は焦ってる。そして、大学に一人で潜入することの危険さを十分判ってる。そして、知流が彼女の助けになりたいと……彼女が好きだからこそ、そう言うから、彼女は余計に彼と彼の周りの人間を巻き込みたくない。最初から、彼女はそうだった。だからこその提案。

 一ヶ月間、彼女を見てきて、それはよく判ってる。だから……きっと、こんなに好きになった。でも、俺はまだ「女」を完全に信用は出来ない。まだ他の女が寄ってくれば、いつものように、この「良くないもの」をぶつけてる。

 そして、彼女もそんな女と一緒だというのが、余計に……。

「私は、大丈夫よ。どうせいつか戦わなきゃ、どうしようもないし。そうしなきゃ、戻れないもの。こうしてる間にも、国ではきっと、「天」との戦争の準備が進められてる。だから……」

 彼女の話に寄れば、今現在の彼女の国の「天に対する反抗心」を煽っている、地下組織の存在をはっきりさせれば、何とかこの戦争を止められるかもしれない。国の流れを変えてやれば最悪の結果にはならないかもしれない、と。とにかく早ければ早い方がいいのだと。だから、早く帰らなくちゃ、と……。

 そして、何を思ったか知流は、彼女のことを好きだと、そう言ったくせに、彼女が早く帰れるように動くと。……一緒にいたくないのだろうか?

「ここまで巻き込んでおいて、今さら『危ないから』もないだろう? せっかくコタ達が君の助けになりたいと言ってくれてるんだから、素直に受けたらどうだ? 無責任なのは、感心しないな」

 怒ってるわけじゃないんだが、どうにも表情と口調が固いせいか、あまり良い印象を受けない澄未さんの話し方。
 しかし彼女は特に気にした様子もなく、それどころか手のひらを返したように態度を一変させた。

「そうだね。じゃあお言葉に甘えちゃおうかな……。でも、危なくなったら逃げなくちゃだめよ? 判った、コタ? 」

 危ないのはお前も一緒だろうが……。

 俺には「危なくなったら」と言うくせに、知流や麻斗の申し出は快く受ける。次郎には案内を頼む。彼らも好んで(いない者もいるが)彼女に協力する。
 知流が「人に頼む」と言うことは、彼が彼女と離れる為の行為を、本気で行おうとしているってことだ。そして、彼女もまた帰ろうとしている。

「大学での調査が必要なら、私もできる限り協力をするよ」

 澄未さんも、彼女の思いを受けて動く。

 ……もしかして俺だけか? 俺だけなのか!

 頭で判っちゃいるけれど、それでも彼女を帰したくない、帰って欲しくないなんて。いい年こいて、みっともない。

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