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Voice【最果てから呼ぶ声】(Voice[that is called farthest])

第5章
01
 
 
 クリスマスなんてのは、ゲーセンにもカップルしかいねえのかよ。あえて駅前の大通りから一本入った小さな通りにある、ビデオゲームも大型筐体も同じフロアに入ってる小さめのゲーセンを選んだにもかかわらず、カップルだらけだ。ふざけんな!

 でも、家に帰るのも何だか嫌だったし、あのままカホと同行動するのはもっと嫌だった。だから、寒かろうと、カップルが多かろうと、この入り口付近に置かれた新作格ゲーをやり続けた。

「……飯沼……小太郎くん、だったかな? 」

 何回目のインカムか判らなかったけれど、外はすっかり暗くなっていたから結構時間は経っていただろう。俺の隣に座り、声をかけてきた人物がいる。カップルばかりの店内で、女一人の客。しかも知っている声だった。

「ええと、小泉さん、でしたっけ? 何か用ですか? 」

 この人にはそんなに抵抗がなかったし、一応知り合いの女なのでこの程度だけど……。いまの精神状態で女になんか声をかけられたら、とんでもない罵詈雑言を吐いてしまいそうな気がする。

「いや……こんな所で一人でどうしたのかと思って。家はN町じゃなかったっけ? 」
「あの町、ゲーセンないし」

 めんどくせえ。彼女の方を向くことなく小銭をいれ、キャラを選択。そのままゲーム開始。

「誰かと出かけてきたんじゃないのか? 今日はイブだろう」
「別に、一人ですけど? それより、麻斗と約束してるんじゃないんですか? 昼に会ったときにそんな話してましたけど」
「ああ。待ってるとか言ってたから携帯にかけたんだが、連絡が取れないんだ」

 そういえば、さっき知流達を覗いてたときに、一緒に電源を切ってたような……。

「これから予定は? 」
「こいつ、倒さないと」

 目の前の画面を顎で指してみせる。

「そうか、じゃあ一緒に行こうか。港で花火を見るんだ。いま五時半だから、三十分もあればつくだろう。七時の開演には十分、間に合うな」
「は? なに言ってんの、あんた」

 まだゲームしてるし……。

 そんなことはお構いなしで俺の腕を引っ張り、無理矢理イスから引きずり下ろすと、店の前に路駐してあった濃緑のミニに俺を押し込めた。

「シートベルト締めて。この辺、路駐の取り締まりが多いから、さっさと出よう」
「いや、俺は行くなんて、一言も……。大体、港で花火って……麻斗と行けよ! 」
「だから、連絡が取れないと言っただろう。人の話はきちんと聞く癖を付けた方がいいよ。若いんだから」

 俺がシートベルトを締めるのを確認もしないで、彼女は勝手に港に向かって車を出した。連絡が取れないからって、他の男を拉致って行くか? 最悪だよ、こんな女!

 この人は少しはまともかも、なんて思っていた俺がバカだった……。

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