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Voice【最果てから呼ぶ声】(Voice[that
is called farthest])
第4章
04
もう四時半頃には空が少し薄暗くて、イルミネーションが点灯される駅前の広場にはカップルが集まり始めていた。休憩を兼ねて早めに来たのは良いけれど、余計に疲れそうだった。
イルミネーションも、木に電飾が飾ってあったり、簡単なゲートがあるという程度ではなく、汽車やトナカイのオブジェなどが所狭しと並んでおり、迷路みたいになっていて非常に歩きづらかった。こんな時期にこんな所には来たくないけどなあ……。
「……カップルで来いよ、こういう所は」
「だから、カップルがいるでしょうが。初々しくて、まだ手も握ったことのなさそうな二人が」
麻斗の言うとおりだな。そう言う生臭さゼロだもんな。特に知流が……。カホも、彼と一緒の時はそんな雰囲気は全くない。でも、俺といるときは……。
「そのカップルはどこに行ったのよ? 」
「……あれ? まだ明るいけどねえ」
「二人とも、知流さんたち探してよ。何かあったらどうするのよ」
千紗の指示に従い、落ち合う場所を決めて広場のどこかにいるはずの二人を捜しに、麻斗と歩き出す。
「……もしかして俺達って、すげえ立場弱い? 」
「今さらなに言ってる。千紗に勝てるわけねえだろ。知流以外で。あいつも、ほっときゃ良いのに。なるようになっちまうモンは、そうなるしかないんだから」
「コタちゃん、悟ってるよね。て言うか、かなりオヤジくさくない? 」
「年下だぞ」
「先輩を敬いなよ、少しは」
まだ点灯していないイルミネーションのオブジェの影で、他のカップルに紛れてベンチに座っていた。やっぱ、二人きりになりたかったんじゃねえか……。
「コタちゃん、待って。様子見ようよ」
「覗きって言うんだよ、そりゃ」
とは言ってみたものの、思わず側にあったオブジェの側に隠れる。点灯してないので、四つ足の動物らしいが、いったい何なのかは判らなかった。
「久しぶりに外に出て疲れただろ? 」
「うん。でも、楽しいよ。テレビで見たものが本当に外にあるだなんて、何か現実味がなかったんだけどね。人が多くて、ものもいっぱいあって、不思議な感じ。ここも何だか変わったものがいっぱい」
「ほら、カホが家に来たばっかりの頃、二人でテレビ見てたろ。そこで、ここのイルミネーションのことをやってたんだ。カホが見たいって言ったんだ。覚えてる? 」
「うん。でも、ちょっと、違う感じ……」
「暗くなったら光るから」
二人きりになっても、彼らの会話は何も変わらなかった。何というか……。
「あの二人さあ……かわいいっつーの? 色気がないよねえ」
そう、それだ。不愉快だが、その辺りは麻斗と同意見だ。こちらの声が知流達に聞こえないよう、麻斗が少しかがんで俺に顔を近付け、小声で話す。
「だめだよなあ。好きなら、こうガツンとね」
「お前だって、小泉さんには何も言ってないんだろ? なに言ってる」
「それは、まあ……一緒に住んでるし、俺は居候だし、澄未はちょっとそう言うとこ、堅いからさ。人にはそれぞれ距離の取り方って言うのがあるんだよ」
「距離の取り方ねえ」
近付けないまま、距離を保つことも?
「……ねえ、コタ達どこに行ったのかな? 」
「この広場にはいるよ。また、携帯で呼ぼうか? 」
「うん」
彼女の言葉で、知流が携帯をポケットからとりだしたので、俺と麻斗は大慌てでコートから携帯を探り、電源を切る。こんな所で鳴ったら、気まずいどころの騒ぎじゃないぞ。
「あれ、つながんないや……。ま、いいか。その内、見つかるよ。それより、もう少し話しようよ。俺、カホと話してると楽しいし」
「私も。知流といると安心できる。本当に感謝してるよ。ありがとう」
隣に座る彼に、極上の笑顔を見せていた。ここからは影になってはっきりとは見えないけど、彼を動かすには十分すぎる笑顔だったのだろう。
「だって、俺、カホのこと好きだから。だから……君のためになりたかったんだ」
「……私のこと……? 」
知流のことを好きなんだろ? って聞いたら、彼女は「そうかもしれない」と答えたのだ。
彼にあんな風に言われて、彼女が受け入れないわけがない。
「……コタちゃん、どこ行くのさ」
「わりい、用事思い出したから先に帰るわ。知流達にはそう言っといて」
電源を切ったままの携帯をコートのポケットに押し込め、点灯し始めたイルミネーションの中を通り抜け、広場を後にした。
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