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1日5分!空き時間に読む連載小説 wing of fragment -FT恋愛,FT学園,BL,学園恋愛,携帯向-
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Voice【最果てから呼ぶ声】(Voice[that is called farthest])

第2章
03

「うわー、コタちゃん冷たいねー。実の父親に向かって。もっと優しくしなよ。ただでさえ、愛想悪いんだから」

 研究室に入ったとたん、軽いしゃべりで重い台詞を吐きながら、かなり上から俺の額を力一杯こづく。
 二メートルはあろうかという無駄な身長。妙に赤っぽい薄い色の瞳。天然だと言い張る、緩くパーマのかかった銀色に近い髪。何より人を激しく不愉快にさせるへらへらとゆるみきった顔。

「麻斗! 何でここにいる!? それに……」

 麻斗の後に立つ、この美人はいったい……。クールビューティーという言葉がまさにピッタリの女だった。柔らかい印象は受けないが、とにかく綺麗な顔立ち、スレンダーな体型、凛とした雰囲気、カジュアルすぎない服装。身長も不愉快なことに俺と同じくらいあるから百七十あるか無いかくらいだろう。まるで雑誌のモデルのようで、連れて歩けば自慢にはなるが、隣に立つのが難しい女だ。麻斗と釣り合うのは身長だけだった。

「泉さんの……何だっけ? ハトコの従兄弟の……、とにかく遠い親戚なんですって」

 麻斗と女の後にいた千紗が顔を出す。二人並んでると壁みたいだから、見えなかった。 

「うっわー。千紗ちゃん、アバウトだねえ。コタちゃん、会ったこと無かったっけ? 」
「……無いと思うけど」
「彼とは会って無いよ。知流くんは何度か家に来てるけど。初めまして、小泉澄未です」

 麻斗に対しては、姉のような母親のようなそんな顔をしていたのだが、俺の方を向いたとたん、表情が強張った。イヤな感じの人ではないのでが、非常にぎこちない。

「……どうも」

 女に対するぎこちなさで言えば、俺も人のことは言えないけれど。

「コタちゃん、超態度ワルッ! 最悪! 」
「うるさい。お前みたく、へらへらしてるよりはましだ。黙ってろ」

 わかってるっつーの。一応、知り合いの女だから挨拶したのに! 無理だって。だいたい俺は、女と目が合わせられないんだぞ。

「あれ? 麻斗さあ、今日は平針に免許取りに行くって言ってなかった? なんで澄未さんとこんな所に? 」
「知り合いですか? 知流。彼女はここの四年生ですよ」
「あ、そうか。そんなことを言ってたような気がする」
「そんなことより、早く引き払いますよ。知流、何とかしなさい」
「麻斗なら大丈夫だって」

 女の治療は終わったんだろうが、いま一体どこにいるのだろう? 確かにこの大学に敵がいるかもしれない以上、早く動かしたいのはやまやまだけど。ま、麻斗ならいいのかな。おしゃべりだけど、知流は最終的には彼を味方として呼ぶつもりだったみたいだから。

「大丈夫って? なんかあった? 」

 僅かだけど、麻斗の顔に不安の色が見えた。彼もまた、知流の真剣さをよく知るから。

「カホ、どこにいるの? 」
「奥にいますよ、連れてきましょう」

 奥にあった木の扉から、車いすに乗った女を連れてきた。至る所に包帯が巻かれている姿は、先ほどの血だらけの姿よりも現実に近くて、何とも痛々しかった。

「……何、この子。めっちゃかわいんですけど」

 女は何故か俯き、顔を赤らめていた。しかし、麻斗もいきなりかわいいとか言うか? 

「お前、ちょっと顔のいい女を見るとすぐそれだな。しかも彼女の前で。他にいろいろ突っ込む所はあるだろうが」
「彼女? 澄未は違うよ。それにかわいい子にかわいいって言って、何が悪いのさ」
「程度によるだろう。その点に関しては私も彼の意見に……」

 俺の意見に同意しながら、クールビューティーがじっと俺を見つめる。目線が一緒なのが俺の不愉快度を増す。

「……なんて言ったっけ、君? 」

 俺の様子を察して、次郎が代わりに答えてくれた。

「飯沼小太郎です。理学部の飯沼先生の息子さんですよ」
「ああ」

 女はほとんど表情を変えずに、俺と千紗を交互に見た。どうやら彼女が父の娘だという話は聞いたらしい。

「なるほど、道理で。そっくりですね」
「息子の愛想は最悪ですけどね」
「うるせえよ。それより知流、その女をさっさと連れてくんだろうが」
「もー、何で俺に当たるんだよ。ごめんねカホ。ケガ、つらいだろ? でも、ここにいると……」

 知流の優しい言葉に、女は黙って頷いた。まだ痛むのか少しだけ苦痛に顔をゆがませながら、それでも微笑む。彼に応えるために。
 いい感じなんじゃないの? まんざらでもないみたいだし、知流のこと。

「……何だよ、麻斗。俺、なんか変? 」
「べっつにい。ちょっと、おもしろいだけ」

 おそらく、麻斗も俺と同じことを思っていたのだろう。知流と女を包む空気は、今までの彼からは想像もつかなかったものだ。いつものにやにやした笑みを浮かべながら、それでも嬉しそうに二人を見ていた。

「それより、どこかに移動するの? 知流んち? 俺も行くよ。澄未、用事終わったら迎えに来てよ。別に他に予定は無いだろ? 」
「かまわないが、怪我人がいるんだ、迷惑をかけるんじゃないよ」

 女……小泉さんは特に何も詮索せず、快く彼を送り出した。

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