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1日5分!空き時間に読む連載小説 wing of fragment -FT恋愛,FT学園,BL,学園恋愛,携帯向-
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Voice【最果てから呼ぶ声】(Voice[that is called farthest])

第1章
04

 ……おいおい。この超日本人率の高い地域で、その名前って……。て言うか、ふざけた名前だ。

「もう、なにも話したくない……」
「何ですか? 聞こえませんよ? 」

 でかい声で騒ぐけど、聞こえないフリ。

「ところで、さっき言ってた『麻斗』って誰ですか? 」

 俺が無視したのが利いたのか、どうやら次郎は話を変えるつもりらしい。

「知流んちによく出入りしてる、天パの巨大な奴だよ。見たことあるだろ? 」

 隣の家だし、俺や次郎がこの家にいるときも、よく出入りしてる。

「ああ、その子ならたまに研究室でも見かけますよ。巨大ですかねえ? 」

 次郎は『医者』とは言っても、近所にある大学の医学部に勤務する助手だ。教授のお気に入りらしく、病院よりも研究室にいることの方が多い。麻斗はまだ俺より一つ上の高三のはずだが、そこに知り合いでもいるのだろう。

「お前くらいにはな」

 不愉快さを何とか隠してそう言い放つ。不健康に縦長な次郎と違って、麻斗は健康的だが、俺から見れば二人とも巨大だ。現に、今だって磨りガラスの向こうにもたれてる次郎の影は、天井にぶつかりそうに見えて怖い。

「彼は女の子を拾いますかねえ。彼女の尻に敷かれてるみたいでしたけどね」
「大学にいる彼女には尻に敷かれてるかもしれんが、高校にいる彼女は知ってるだけで十五人目だ」
「ははは。……敵ですか? 喧嘩売ってますか? 」
「妬むなよ。十年間彼女がいないからって」
「九年と十ヶ月です! ちょっと顔がいいからって、図に乗ってると大人になったときに困りますよ? いいかげん、まともに彼女でも作って、将来に備えておかないと…… 」

 力任せに扉を開けると、押されてもたれかかっていた次郎が、少しバランスを崩してよろめいた。

「親父みたいになるだけだろ? 」

 背を向け、バスタオルで体を拭きながら、努めて平坦に言い放った。背中の向こうから苦笑い混じりの大きなため息が聞こえた。
 他のことなら、ここから毒舌説教のオンパレード(二時間)と言ったところだが。さすがの次郎も、このことに関してはため息と共に流してくれる。

「次郎こそ、うちの親父と五つしか変わんねえんだから。三十五で高校生の子供がいるんだぞ? 」
「大きなお世話です」

 適当に制服を着て、学ランだけつかんで脱衣所を出ると、その後を次郎がタバコに火をつけながらついてくる。残りを返してくれる気はないらしい。

「あ、もしもし。忍田です。ハイ……」

 タバコ吸いながら、階段昇りながら、携帯とりながら。忙しい奴だ。
 こいつにもいろいろ言いたりないが。まずは知流だ。どうしてこんな厄介ごとを……。一言いってやらなけりゃ!

「知流! 話は聞いたぞ! ……いで」
「なんですか、急に立ち止まらないでくださいよ。小さくて視界に入らないんですから」

 携帯を切りながら、煙草をくわえながら、思いっきり人にぶつかっといてその言い種か!

「誰が小さいか。お前がでかすぎるんだ」
「コタちゃん! みっともないよ。ちゃんと服くらい着なさいよ、もう」

 いつもより気持ち柔らかい口調でそう言う千紗は、知流とちょうど一人分の間を開けて座布団の上に座っていた。部屋の隅にあるベッドには、ピクリとも動かない女が横たわる。
 血を拭いたあとや、刃物で切られたあとが思ったより酷くて、声を荒げたことを少しだけ後悔した。

 女の顔は整いすぎてて人間味がなかった。微かに残る血で赤く色づいた肌と、妙に現実味のない帷子のような上着が余計にそう思わせていたのかもしれないが。

「まるで人形だな。うごかねえし」

 だからこそ、俺は女の顔を直視することが出来た。動かないから。俺に、何もしないから。

「コタ、それ、冗談にならないから……」

 少しだけ困った顔をして、抑揚のない声で呟いた。

「……悪い」

 目の前で横たわる女同様、知流の顔も日本人離れしている。整いすぎた綺麗な顔。明るい髪の色。薄い色の瞳。死体のように横たわる人形のような女に、彼が酷く似合っていて気分が悪かった。

「準備が出来たようですから、行きましょうか。コタ、彼女を車まで運んできてください。そうっとですよ。知流は千紗と一緒に先に行ってください」
「おい、何で俺が……」

 知流の表情を見て、言葉を飲み込む。かなり深刻な状況なのだろう。青ざめて、震える知流なんて、つきあい長いけど初めて見た。

「ごめん、コタ……女の子、嫌いなのに。麻斗、呼ぼうか? 」

 女は嫌いだけど、ヤれるから平気。……とは言えないけど。

「いいよ、あいつんち遠いし。こんなでかい図体して、こんな小さな女一人が担げない、エセ医者が悪い」

 笑顔で次郎を睨み付ける。大丈夫だと判断してくれたのか、千紗が知流を部屋の外へと促してくれた。

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