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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 続・序章 第6話 続・袖振り合うも多生の縁 03/10



「監査に入られたサエキ大尉の補佐官であられるニイジマ中尉が、本日からいらっしゃったのでご挨拶がしたいと……」

 ニイジマを連れてきたのは、カグラだった。そう言えば、急にもう一人来ると言うことで、補佐官とはいえ、またしても軍部と元老院の一部がばたばたしてたんだっけ。昨日のことを思えば、大したことはないのだろうけど。

「入っていただいて。以前、楽師殿の元でご挨拶をさせていただいたことがあるから。カグラ少尉ありがとう。下がって良いよ」

 ミハマは「挨拶に」と言う名目でここに来たニイジマをフォローした上で、カグラを追い払った。

「カリンが来ていて良かったな。元老院の目がそらせる」
「あ、そっか。元老院が静かだと思ったら、そう言うことか。大変だな……」

 ホントだよ。カリン姫はミハマに会いにだけ来てるんだろうに。

「今日は、サシでお話では?コウタは?」
「外よ。良いから私の後ろに立ちなさい」

 イエッサー、と笑顔で応え、ニイジマは彼女の後ろに立った。

「トージ、カナの持ってたブラックリスト、出せる?」
「端末があれば。カナさんのシークレットの方の携帯預かってるから、これでならすぐに確認できるけど……まさか、見せるってこと?」

 ニイジマは明らかにミハマではなく、サワダを見た。

「そのために呼んだのよ。中王がこの国に執着する理由が判らないって言うから。ついでに、魔物を使って地味な襲撃を繰り返す理由もね」

 彼女はニイジマから、サエキ大尉の携帯を受け取り、操作する。ミハマ達が持っている携帯とは違い、画面が大きく、細身だった。オレが持っている携帯に近いかもしれない。おそらく中央で作られたモノなのだろう。

「どういうこと?」
「これ、トップシークレットなのよね。多分、将官クラスでも、中将以上じゃないかしら、知ってるの。私の所には何も降りてこないから」

 彼女は携帯をミハマに手渡し、確認するように促す。ミハマの後ろからサワダが覗き込む。その様子を、イツキさんに連れられ戻ってきたシュウジさんも隣に座り、確認する。

「……中央武術大会で見たことがあるメンツだね。歴代の上位陣だ。テツも入ってる……」
「統轄本部でも幹部クラスしか知らない、ブラックリストと呼ばれるものよ。現在、水面下で動いている計画のためにターゲットを選定してるって話」

 シュウジさんが渋い顔で携帯を覗き込んでいたが、彼女の話を聞いて、煙草を取り出す。が、隣に座るミハマに止められ、渋々仕舞った。

「水面下で動いている計画とは?魔物の襲撃事件と何か関係が?」

 彼女は頷き、話を続ける。

「中央武術大会の行われる目的は二つ。単純に中王やその側近である『創世記』メンバーの趣味。それから……」
「あぶり出しか。噂は現実だったわけだ」

 名前が載っていると言われたサワダも、不愉快そうな顔を見せる。

「え?どういうこと、どういうこと?」
「中央武術大会は、各国に潜む、力のある者を探すために行われているんだよ。そのわりには、このブラックリストの中に、中王軍の人の名前もあるみたいだけど。そこにいるニイジマ中尉とか……。それに……シンの名前も末席だけど載っているね」

 ミハマは、ちらっとベランダに視線を移動した。イズミが役割上、中央武術大会に出ることも、表舞台に出ることもないのに、中王軍が彼の存在に目を付けていると言うことはどういうことだ?この国に潜んでいるらしい、中王軍のスパイに寄るものか?

「ミハマ、もう少し下の方を見て。『戦士』だけではないから。載っているのは」
「……うん。研究者のリストがあるね」
「そこにイムラツネキという医師が載っているわ。この国の人よね?先日、ミナミ中佐を診察に来ていたって言う話を、中王軍の者から聞いている」

 奥からオレ達の様子を見ていたミナミさんとイツキさんの表情が変わる。

「研究者のリストは2種類あるね。イムラ先生とは別のリストにシュウジの名前が載ってる」
「この国に入る前に、調査させてもらったんだけど。シュウジさんの元に何度か中王軍の研究施設から、引き抜きの話があったみたいね。別に研究者のアタックリストが存在してる。かなりの回数アタックがあったって記録が残っていたけれど、全て断られているみたいだから」

 断ってたって話はホントなんだ。でも、それってまずくないか?今、ミハマ達が見ているのが、中王軍の「ブラックリスト」ってことは、そこに名前が載ってるイズミ、サワダ、シュウジさんは、要するに目を付けられてるってことだ。

「ユノ。イムラ先生に連絡を。後でオレからも連絡させてもらうけど」
「はい」

 ミハマの意志を受け、イツキさんが動く。イムラ先生って言うのは、彼らにとって大きい存在なんだろう。

「充分じゃない?この国が目を付けられる理由。サワダ議員がこの国に執着する理由は判らないけど。昔は中央にいたこともあったって話だから、依存しているとは考えにくいし」

 確かサワダが小さいときに、サワダ親子は中央にいた時期があったんだよな。その話って、確かイツキさんから聞いた覚えがある。ティアスはサワダから聞いたのかと思ったけど、サワダ父から聞いたのかとも思ったけど、それは勘ぐり過ぎか。ここの連中はみんな知ってそうだし。ただ、大声で言わないだけで。

「充分?」
「だって、ブラックリストに載ってる戦士が二人、中王に与する気のない研究者が一人。その3人が、一人の人間に仕えている。このニホンの王以外に」
「魔物の襲撃事件に関係している、計画の全容は?それは知らないのですか?」

 黙って頷くティアスに、聞いたシュウジさんが溜息をついた。
  いつの間にか音も立てずに、ソファの横に黒いファイルケースを持ったイズミが立っていた。シュウジさんにファイルを渡した後、ミハマに促されて携帯を覗く。不愉快そうな表情を見せてから、再びベランダへ向かった。文句の一つでも言うかと思ったのに。

「いま、その件に関しては私たちも調査している最中なの。とは言っても、知ってる人間も限られているし、私自身は「創世記」メンバー以外の上層部とは関わりがほとんど無いし、関わらないようにしている人もいるし」
「あなたの正体を知っているのは、もしや『創世記』メンバーだけなのですか?その話からすると。あなたは、あなたの存在を知る旧中王軍や側近に正体がしれないようにしている、ととれますが」

 イズミから受け取ったファイルを開き、資料を探し始める。サエキ大尉みたいに、携帯に入れたりすればいいのに。めんどくさい人だな。

「……なんだ。そんなことまで調べてたんだ。さすがだな、シュウジさんて」

 もたもたしてるシュウジさんに、先回りで笑顔の肯定を見せた。それでも資料を探し続ける彼をおいて、代わりにミハマが話し始める。

「魔物を統率する力を持った一族って言うのは、こちらで言ってるだけのことだ。実際、あの大陸にあると言われている2つの大国の役割というのは、実際に行ってみないと判らないことが多すぎるよ。この島国では、調査するにも限界がある」
「だけど、判ったんでしょう?」
「仮説でしかない。中王軍が大陸に残る国に侵略したときの話は、現実問題として、ここではシュウジしか知らないし。大陸には、『魔物を統率する力を持った一族の国』と『砂漠に住む魔物達の故郷の国』があることしか判らなかった」
「ああ、ありましたよ。ほっといて話をするの、やめてくださいよ」

 シュウジさんはファイルを開いて、テーブルに乗せた。ニホンがつながった形で変形した大陸の地図に、英語で名称が書いてあった。砂漠の方には『西の果て』。もう一方には『東の果て』と。そして、不自然な形で大陸の真ん中に引かれた黒いライン。
  地図上では東西が逆に見えたけれど、ニホンのある場所を中心に考えると、合っているように見える。となると、この不自然な黒いラインが、「果て」ってことになるのかな。でも、ティアスの持ってた地図にも、シュウジさんが最初に見せてくれた地図にも載ってなかった。

「よく見つけたわね、こんな地図」

 ティアスが驚いていたと言うことは、相当なのだろう。誇らしげな顔のシュウジさんが話を続ける。

「ええ、まあ。で、こちらの東の果てですが……。ニホンでは『魔物を統率する力を持った一族』が住むと言われ、実際は地図上にも『未開拓地域』として存在していません。しかしながら、中王軍の大陸遠征の際には、この国に侵攻したと言われていますし、その話の方が現実的です。また、あなたが中央に現れた時期はその後ですからね」
「同時期に墓になったニホンの小国の関係者とも言われていたけれど?」
「墓になった国の関係者が、顔を隠す必要がないですよ。同時期に墓になった国は確認済みです。唯一確認できなかったのが、この大陸の国ですね。何しろ『危険故に封鎖』されているのであって、『統治した』とは言われてませんから。それと、この砂漠になっている『西の果て』ですが、陸地から侵攻するのは不可能に近いです。海軍は当時出動していないはずなので、中王軍がこの国に入ったと考えるのは難しいですね」

 シュウジさんが指でなぞった部分には、山が描かれていた。それが砂漠を囲んでいた。海沿いにも囲んでいるから、陸から行かなくても結果は同じような気がする。

「でもシュウジさん、オレ、思うんだけど……。何でティアスが大陸の人間だって思ったんだよ。大陸のこっち側の国の人だろうって言う状況証拠はよく判ったけど、そもそも彼女が大陸の人間だって言うのは?」

 彼女がオレに見せてくれた、故郷に対する執着のようなモノを、シュウジさんに見せてるとは思えないし、思いたくない。

『ねえ、君がいた時代って、この辺りはどうなっていたの?』

 ニイジマ曰く、オレを警戒していなかったからかもしれないけど、彼女はオレを信用してくれてる。一緒にいると安心出来るって言ってくれてる。

「中王軍にて、彼女が魔物対策チームの一部と頻繁に接触していることも裏をとっています。対策チームのトップは、中王直属研究室の中でも異例である文官出身の元帥であり、創世記メンバーの一人であるカズキ元帥。またサワダ議員と彼が中央図書館で接触していたのも確認しています」
「創世記メンバーは彼女の正体を知ってるからだろ?」
「ええ。ですから。カズキ元帥は、彼女から魔物について情報を得ていたのではないでしょうか?彼の研究内容は、魔物の生体そのものですから。実際にこの『東の果て』と書かれている国は魔物を自在に操ると言われ、その力が『ニホンに脅威をもたらす』として遠征軍が派遣されているのですから」

 オレには判らん。シュウジさんの言うことがホントなら、彼女の行動は矛盾だらけだ。

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