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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 続・序章 第6話 続・袖振り合うも多生の縁 01/10


 『お互い様だと思ってる』と言った彼の言葉に、嘘はないように思えた。
  少なくともオレは初めて入る、ミハマの持つ応接間の一つに、彼女と彼はテーブルを挟んで向かい合わせのソファに腰掛けていた。彼の後ろにイズミとサワダが立ち、部屋の扉側の角に別に用意された椅子にケガを押して出てきたミナミさんが座り、その横にイツキさんが控えていた。オレは彼女の横に座っているのだが……

「……シュウジさん、その席にいるの、おかしくないです?」
「やっぱそう見えるよな。シュウジさんの場所、ここでしょ?」

 たまらず突っ込んだオレの言葉に、イズミが乗っかりながらミハマの横を指さした。シュウジさんは気にすることなく、デスク用の肘掛け椅子に腰掛けながら、少しだけ開けた窓の隙間に、懸命に煙草の煙を流していた。

「いえいえ。私はここから引いてみてます。テツが座りなさい、そこは。それから、シンはきちんと自分の職務を。ああ、そうだ、お茶でもいれましょうかね」

 立ち上がり、奥にある給湯室に煙草をくわえながら入っていく。どこまでもマイペースに見えるけど。

「シュウジさん、煙草を捨ててください。テッちゃん、こっちを見ていて」

 イツキさんがシュウジさんを追って、給湯室へ向かった。
  彼以外の他の誰も、サワダにミハマの隣に座るように言う者はいなかった。シュウジさんの言い分はもっともだと思ったのだけれど、彼らはそう思っていないし、サワダ自身もそう思っていないと言うことか。
  サワダはイツキさんの言うとおり、隅に座るミナミさんに少し意識を移したようだった。サワダの動きよりも、ミナミさんの態度で判った。イズミはその彼女を確認してから、ベランダへ向かった。あいつが外で何をしてるのか、あまり考えたくはなかったけど。
  窓を開ける彼に、ミハマが声をかける。いつもの笑顔のまま。

「よかったら、外にいる人も呼んできて。誰かいるでしょ?」
「……ミハマ……。彼女の手のものは、この場に入れないって言ったろ?」
「シンの言う通りよ」

 イズミを肯定したのは、他でもないティアスだった。それに、ミナミさんは驚きの顔を見せ、サワダとイズミは苦笑いを見せた。ただ一人、ミハマだけがいつも通り。

「なんか、多勢に無勢って感じだし。その方が、話がはっきり聞けて、良いかもよ?オレは、彼女の周りにいる人は、彼女のことを知っててくっついてると思ってるからさ。一人の話は、状況を判断するには曖昧すぎるし」
「ずるいな、ホントに」

 イズミは彼を責めるような台詞を吐いたが、声が笑っていた。オレにはやっぱり、彼の真意が判らない。

「……だとしたら、あんまりよくないかも……」

 そう言って嫌な顔をして見せたのは、他でもないティアスだった。なんで彼女が嫌そうにするのか。味方が増えて良いことだと思うし、ミハマは彼女の話と、彼女を取り巻く環境を正確に知りたいってだけだろうし。
  彼女も立ち上がり、シンの横へ向かった。

「コウタ、良いから、私の後ろにいて」

 窓越しに二人の正面に立ったセリ少佐の存在に、イズミがちょっとだけ驚いた顔を見せた。しかし、いつもの表情を取り戻すと、彼と入れ替わりに窓から外へ出ていった。

「ティアス、ニイジマはどうしたんだよ?」
「別件。今日はコウタしかいないのよね……」

 彼女に耳打ちをしたら、溜息が返ってきた。そう言えばニイジマは、昨夜サエキさんの部下としてオワリに入るとかなんとか言ってた気がする。なんか、セリ少佐もニイジマも話し合いに向かないタイプに見えるけど、未だニイジマの方がましな気がするな。ティアスの台詞の意味もよく判る。

「知ってると思うけど。今、中王で私の息がかかってるのは、ここにいるセリコウタ少佐、それから先日監査としてやってきたサエキカナコ大尉、今日から監査の補佐に入るニイジマトージ中尉の3人だけ」

 セリ少佐は、ソファに座る彼女の横に立ち、ミハマに敬礼して見せた。給湯室からお茶を持って現れた、二人がその姿を見て驚いていた。

「ねえ、ミハマ。私は何から話して良いか判らないわ。あなた達が一体どこまで把握しているのか判らないもの」

 繊細な作りのティーカップに注がれた薄紅色のお茶をティアスに差し出したのは、それがもっとも似合わない、白衣の研究者だった。横でイツキさんが止めようとするが、聞きやしない。

「シュウジ、説明してよ」

 ミハマはシュウジさんからトレイを奪い、イツキさんに渡すと、無理矢理彼を横に座らせた。ほっとした顔のイツキさんが、部屋にいる全員にお茶を配る。

「……今日のお茶、飲めるのか?」

 立ったままティーカップを持ち、嫌そうな顔で匂いを嗅ぐサワダ。オレも真似して匂いを嗅いでみたけど、お茶の匂いなんて判らない。

「大丈夫よ。この間、先生の奥様からいただいたハーブティーだから。お客さんがいるのに、シュウジさんに勝手な真似はさせないわよ」

 うわ、なんか不穏な会話聞こえるし。ミハマですら、隣に座るシュウジさんをちらっと睨んだ。しかし、彼は何一つ気にすることなく、話し始めた。

「どうでしょう。我々は把握していると言えば把握しているし、していないと言えばしていない。何一つ確証がない状態で、話をしていますから。あなたがかの『中央の楽師』である可能性も、あくまであなた本人と楽師の整合性を検証した結果ですから」

 確証が欲しいばかりに、イズミがあの動きをしたわけね。だけど、サワダはそれ以前にも、彼女が楽師であることを「判っていた」ようなことを言っていた。その点に関しては……イズミ以外の誰が彼に突っ込むんだろうか。

「中央の楽師については?」

 シュウジさんは彼女の台詞に苦笑いを見せる。

「そんなに、疑ってかかっていたわけではありませんよ。ただの親心です」

 その台詞に、彼女が少しだけ、憂えた顔を見せた。彼女に優しくしているミハマを思って?それとも、サワダ?どちらにしろ、彼の言う親心が示す相手を、彼女は思っている。

「中央のあの場所にいたあなたは、自然に考えれば『墓』の関係者なのでしょう。今でこそおとなしいものですが、現中王は見せしめのために、前中王の娘が逃げてからと言うもの、墓の関係者をあそこに置いていた。あなたが来てからは、そんなこともなくなりましたが。けれどあなたは、何故か軍に所属し、墓を生み出すことはなくても魔の討伐に出かける。中王のために」

 多分、わざとだろう。シュウジさんは一呼吸置いて、お茶を手にした。短い沈黙を確認して、彼は続ける。

「しかしながら、それが功を奏したのか、今やあなたが墓の関係者であるなどと思うものは、中央にも、他国にもいない。疑うものはいるかもしれませんが。ただ、私にはそれが情報操作の結果のようにも感じます」
「人はただ、忘れっぽいだけとは考えないの?」
「確かに、人の噂など、ほうっておけば消え去ってしまうようなものですけど、それにしてはあなたは目立ちすぎる」
「窓際だけどね?」
「あなたがおとなしくしていても、あなたの部下が派手ですから。その、後ろに立つ方とか」

 雑誌に載ってたことは関係あるのかな……?いや、まあ経歴見るだけでも、充分目立つか。

「それに、あなたが中央であの地位につくのには、創世記のメンバーであるハスヤ大将の力が大きかったという話も未だに消えていないし」

 創世記ってことは、中王と同年齢くらいの人ってことか?その人の話は初めて聞いた。しかし、そんな人がティアスのバックについてたなんて、おかしな話だ。だけど、それなら彼女が大佐なんて地位にいる理由も納得できる……。

「ハスヤ将軍はメンバーではありません。あの方の兄君であるハスヤ名誉元帥ですよ」

 びっくりした……。いや、オレだけではなく、この部屋にいた全ての人が、セリ少佐が声を荒げたことに驚き、彼を見ていた。そう言うことする人には見えなかったけど。

「コウタ、シュウジさんはリョウのことを責めてるわけじゃないんだから、落ち着いて」
「しかし……」
「言えば判るから。もう少し下がってなさい」

 納得いかないといった顔で、彼は引いた。

「申し訳ない。誤解があったようですね。話を本題に戻しましょう。我々はあなたを墓の関係者、それもかなり地位の高い人間だと考えています。そしてここからは、あくまでも『様々な情報』から導いた、私なりの考えなのですが」

 一瞬、彼がサワダを見たのをオレも、そして多分ミハマもティアスも見逃さなかっただろう。何より、サワダの表情が歪んだのがわかった。

「空から来る魔物を統率する力を持った一族。その王族ではないかと思っていますが、いかがですか?」

 そっち!?そっちなの?!もっと悲劇のお姫様的な国があったろ!?

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