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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 続・序章 第4話 続・敵と味方がいる幸せ 07/10



 もう、見てると胃が痛くなってくる。どう考えても、ティアスってサワダに気があるし、サワダも彼女の前では照れたようにして気持ち悪いし、ミハマはティアスを気に入ったって宣言してるし、何よりそんなミハマしか見てないカリン姫がそう判断してるし。めんどくさいなあ、もう。首突っ込みたくないんだけどな、こういうの。
  判ってるんだけど、……だけど、オレは既にそう言うわけにも行かない状態なんだよなあ……。
  こっちのティアスは、明らかにオレの知ってる彼女とは違うって、判ってるのに。オレは彼女の怖い部分も知ってるのに。この世界に生きるのにふさわしい女だって判ってるのに。オレは早く戻らないと行けないのに。
  戻りたいはずなのに。

「そんなに力入れてんなよ」

 イズミが苦笑いを見せた。毒を含んだ表情のまま。彼にそんなことを言わせてしまうほど、オレはまずい顔をしてたってことか?

「別に?」
「オレは、ミハマの手伝いしかしないけどね」
「別に手伝ってくれとも思わないし」
「邪魔するなら、排除するってことさ。それ以外は、ミハマの言うとおりにするけど」

 ……ミハマが欲しがってるモノを横取りしようとするヤツは、排除するってこと?だけど、ミハマがオレを拾ったから、ミハマがサワダを大事にしてるから、ミハマの言うとおりにそれなりの扱いをするってこと?

『誤解の無いように言っとくけど、オレ、テツのことは敵だと思ってるから』

 あれだけ気を使ってるサワダのことを、コイツは「敵だ」と言った。なら、それ以上に酷い扱いを受けてるオレは?

「……アイハラ、ここを動くなよ。騒ぎがある程度収まったら、元来た道を戻って部屋に戻れ」
「え?何だよ、急に……」

 イズミは、いなくなっていた。こんな狭い通路なのに、いつの間にいなくなったのか判らないくらい突然。
  それに今確かに「騒ぎが」って言った。どこで騒ぎなんか……。

「殿下!」

 テラスに駆け込んできた伝令の声に、オレは食い入るように外の様子を伺った。

「……こっちに来る。殿下!」

 普段持ち歩いている大剣の代わりに、腰に下げていた小剣を抜き、いち早くミハマの横に立ったのは、もちろんサワダだった。でも、来るって一体何が?!

「空から、魔物が!」

 伝令がそう言ったとほぼ同時に、一つ目の黒いプテラノドンのような魔物が、羽を広げテラスへと向かってきた。

「……何で?!」

 ティアスが何に対して疑問を抱いたのかは判らなかった。けれど彼女は魔物が仰ぎ起こす風を受けながら、立ち上がり、空を、魔物を、睨み付けていた。

「姫様!ご無事ですか!」
「無事だ。それより槍を」

 黒プテラノドンがもう一体空から現れたのとほぼ同時に、カントウの従者が1mくらいありそうな槍を2本持って、テラスに現れた。どうやら片方はカリン姫のものらしく、彼女に一つ手渡すと、二人揃って魔物に槍を構えた。
  ティアスは……未だテーブルの横で立ちつくし、空と魔物を睨んでいた。

「ティアス!」

 半ばサワダに引っ張られるようにして廊下に連れ込まれていたミハマが、動かない彼女を案じ、叫んだ。その声にティアスは身動き一つしなかったのに、カリン姫が彼女を睨み付けていた。

「……何やってんだ、あの女は」

 舌打ちするサワダに、ミハマがすがるように訴える。

「オレも……剣を」
「ダメだ。……ダメだ」

 何故だか、ミハマを説得しようとするサワダは、彼の目を見れずに、ただただ否定をしていた。

「近すぎる。それより、オレの剣を……」
「テッちゃん、剣を持ってきた!」

 初めて会ったときに彼が持っていた大剣を、イズミが手渡す。いつの間にかいなくなったと思ったら、サワダの剣を取りに行ってたんだ。
  今度は二人してミハマを引っ込めようと、両脇を二人で抱えて廊下に投げ込む。

「オレ、行けるって。テツは引っ込んでろって、ティアス連れて。シン!オレの言いたいこと判ってるだろ?!」

 港に魔物が来たときの、あの冷静なミハマは見る影もなかった。何が違う?あの時と?

「……カリン姫、下がっていた方がいいですよ?」

 空を睨み続けていたティアスは、魔物に注目したまま、彼女に忠告した。それが、カリン姫の機嫌を損ねたのは、火を見るより明らかだった。

「ティアス殿。あなたこそケガをなさってるのでは?」

 ケガ?そうだ。あの時と違うのは、ケガだ。ティアスもサワダもケガをしてる。だからミハマはあんなに心配して。それをイズミもサワダも、彼に戦わせないようにしているだけなんだ。

「シン、お前援護しろ。オレがあの女を引っ張ってくる。ついでにカリンも。『広がる前に』かたを付ける!」

 広がるって?被害がってこと?それより、オレはどうしたら良いんだ?イズミの言うとおりここにいて良いのか?

「いや、姫はほっといて良いんじゃないか……?邪魔したら怒りそうだし」

 外に出ようと暴れるミハマを抱えて押さえながら、イズミは嫌そうな顔でカリン姫のいる方を見ていた。彼女の護衛が頑張っているものだとばかり思っていたが、彼はむしろ姫の背後から援護をしていて、姫が槍を片手に、空飛ぶ魔物に善戦しているように見えた。
  立ちつくすティアスの横を、掠めるように飛び回りながら。カリン姫は異常なほど彼女を気にしているのに、ティアスは相変わらず、彼女の存在など無視していた。

「それより、テッちゃんこそ!」

 イズミはサワダの肩を掴み、ミハマの後ろへ突き飛ばしたあと、再びミハマも突き飛ばし、ガラスの扉を閉めた。

「シン!バカ!」
「良いから、オレが行くからさ。テッちゃんが援護にまわりなよ?」

 そう言ったイズミの笑顔が、妙に怖かった。何か、オレに見せたあの企んだ笑顔と一緒のような……。

「シン?」

 多分、それにミハマも気付いたんだと思う。怪訝そうな顔で彼を見ていた。

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