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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 続・序章 第4話 続・敵と味方がいる幸せ 01/10


 どうやら、監査にやってくるサエキ大尉の影響も大きいけれど、それと同じくらいにカントウの姫君、「カリン」の影響も大きいようだった。神社から様子を見に来たイツキ中尉が、廊下の壁にもたれながら、せわしなく動く人たちについて解説をしてくれた。「手伝うつもりは全くないけれどね」と言いながら。
  彼女の話によると、軍部は監査の対応に追われ、元老院含む議員と文官はVIPの対応に追われるモノらしい。しかし、どちらも国を挙げて受け入れないといけないから、そこで、軍部と元老院側の力関係が……と、またしても鬱陶しい政治の話をされてしまうところだったので、オレは途中で話を遮り、そう言うもんだと納得することにした。
  話が重くなる度、自分の心も何だか重くなるような、そんな気分だった。

「それよりさ、サワダがお姫様の前では『余計なこと言うな』とか、『気をつけろ』とか言ってたけど、どんな人なの?」
「そうね。全くその通りよね。あの人もね。気が強いって言うか、強引って言うか」
「ミハマの追っかけだって言ってた」
「ええ、そうね」

 うわ、顔色変わった。意外と判りやすいな、イツキ中尉って。まあ、相手がミハマなら判らないでもないけど。でも、どれくらいかな。臣下としてとか?仲間としてとか?

「……オレは、どうしてたらいいのかな?」
「一緒にご飯でも食べましょうか?そうだ、サラさんちに行きましょう」
「あれ?イツキ中尉は……」
「私は待機してるわ、もちろん、護衛部隊としてね。でもサラさんも、こっちの様子が気になってると思うし。あのお姫様が来たなんて知ったら、心配でこっちに来ちゃうかも」
「そんなに……?」

 どんな女が来るんだ。怖すぎるよ。

「……あら、タイミングの悪い女ね。もう来ちゃったみたい」

 イツキ中尉も充分怖いって。タイミングの悪いって……。
  廊下を移動する文官達の動きが、さらに慌ただしくなっていた。「いらっしゃった」「殿下を」という声が聞こえる。

「どこ行くの?」
「殿下の所よ?待機してることをお伝えしないとね」

 颯爽と歩く彼女の後ろに、申し訳なくついていくオレ。かなり情けない姿かも。
  窓の外を見ると、日差しが少しだけ落ちていたのが判る。感覚がおかしくなりそうだけれど、もう夕方だ。

「そう言えば、サワダ議員に言われて、ティアスも監査の人に一緒に挨拶するって言ってた。でもあの人は元老院だから、お姫様の方に気を使わないといけないんじゃないの?」
「そうよね。そんなこと言ってたんだ。ティアス?」

 歩きながら横目でオレの顔を確認していたので、黙って頷いて見せた。

「あの人、ここでもちょっと特別なのよね。元老院の中でも影響力の大きい人だし、何より王の妹婿だし、それに、軍部にも影響力があるのよ」
「軍部に?」
「私たちは生まれる前だから、シュウジさんから聞いた話でしかないけど。元々、あの人が王の妹婿としてここにきたときは、軍部の人だったんですって。まだ二十歳になったばかり位の時期に、今の特殊部隊の基礎をつくって、教官としてそこに所属していたらしいのよ」
「そんな話……」
「今は、おくびにも出さないわ。本当に最初の何年かだけだったんですって。死別されてしばらくしたら、テッちゃん連れて中央にいたらしいし。誰も彼に逆らわないし、王のお気に入りだし、本当のことは誰も口にしないのよね」

 なるほど。当時のことを明確に記憶している人は、派閥に入ってるか、影響の小さいところに飛ばされてるかって所か。オレの知ってる沢田のお父さんって、そんな風には見えなかったけどな。
  ただ、こっちのサワダとサワダ父の関係を見る限りは、もう何があってもおかしくないんだろうなとも思えた。

「それってさ、思うんだけど。シュウジさん、やばくない?」
「やばいわよ?だからなのか、本気なのかよく判らないけど、シュウジさんに関しては、サワダ議員が自ら引き抜きに来てるけど。中央の研究開発部からも来てたかな?」

 それは確か、「楽師」から聞いた。ティアスのシュウジさんへの評価が異常に高かったことに、妙な違和感を覚えていた。

「ユノ。殿下の元へ向かってるの?」

 後ろめたさから思わず話を中断してしまったが、声をかけてきたのはティアスだった。イツキ中尉がすごいのか、ティアスがすごいのか、年が近いことも手伝ってか、二人は結構仲が良かった。でも、ミハマのことが絡んだら、どうなんだろうな、イツキ中尉って。

「ええ。ケガ、大丈夫?随分辛そうだけど?」

 オレと話をしていたときも、少し汗を掻いているなと言うくらいで普通に見えた。だけど、彼女はティアスに「辛そうだ」と言う。もしかしたらあの時サワダにも、そう見えていたのかも知れない。

「……歩く分には」
「テッちゃんが、ティアスは焦ってるって言ってた」

 彼女の前では、そんなこと言ってなかったのに。焦ってる?ティアスが?

「早く治そうとして、動き回るから。心配してた。あの人、言わないけどね」
「……お互い様だわ」
「殿下には、そんな風に言わないくせに」

 照れたように、彼女はイツキ中尉から目を逸らした。その様が余計にオレの不安を膨らませる。イツキ中尉の余裕も、彼女の動揺も。

「サワダ議員の所に行くんでしょ?」

 言葉に詰まっていたティアスを見かねて、イツキ中尉は話を変えた。彼女もそれに甘えるように、照れた表情のまま頷いた。

「ユノは待機?何か、カントウの姫君がいらっしゃるから、その人にも一緒に、って言われてるんだけど」
「……知ってる?カリン姫のこと」

 少し間があった。その間を、イツキ中尉がどう捉えたかは判らない。

「拝見したことは」
「どんなお話ししたか、よかったら教えて。気をつけて歩いてね。またケガを酷くしないように。行きましょ、アイハラさん」

 可愛く手を振って、ティアスから距離をとりながら再び歩き出すイツキ中尉に、またオレは必死でついていく。ちらちらと彼女の様子を伺いながら。

「酷くって?」

 オレは知らない。

「あの人、昨日アイハラさん達を助けに行ったでしょ?」
「うん。もしかして、その時?」
「その時は、テッちゃんがフォローに入ったから大丈夫だったみたいだけど、以前はケガを酷くして医者に怒られてたよ?」
「昨日以外でも、ああやって抜け出してたってこと?」
「みたいね。彼女の行動は、サワダ議員の管理下だから、私たちにはどうしようもないし、彼女の自由だとは思うけど。殿下が心配されるのよね」

 知らなかった。だって、ニイジマがあんなにオレに彼女との連絡係をさせようとしてたってことは、よっぽど動けないのかと思ってたから。ケガは治っていたように見えたけど、それも違ってたってことだし。

「ねえ、何だか面倒だと思わない?」
「何が?」
「だって、アイハラさんだって、判ってるんでしょう?彼女のこと。私、こういうのって、どうかと思うなあ」

 イツキ中尉の真意を、オレは測りかねた。
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