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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 続・序章 第3話 続・支配するもの、されるもの 06/10


 ミハマにオレの言いたいことは伝わったのか、そして彼が伝えたかったことがオレに伝わっているのか。どちらも成されていないような、そんなもやもやとした感覚がオレの中に残った。だからかも知れない、彼が立ち去った後も、ただ黙って彼の座っていた椅子を見つめていた。

 オレが気にしすぎているだけなのかも知れない。ティアスとサワダのこと。本当は、気にする必要もないかも知れないし。大体、オレが欲しいのは、こっちのティアスじゃないはずだ。だけど。

 そのはずなのに。なのにどうしてこんなに心が重いんだろう。
  あいつらが一緒にオレとミナミさんを助けに来た……それだけなら良かった。あいつらが一緒に中庭でこそこそ会ってたりなんかしたから。こんなに引っかかる。

 布団にくるまったまま、そんなことをずっと考えていた。いつのまにか時計は5時を指していた。空は、昼に比べれば暗いとは言え、ずっと明るいままで、そんなに時間がたっていた気がしなかった。
  嫌な気分だ。
  はっきりしたかった。怖かったけれど、オレは再び窓の前に立ち、中庭を見下ろした。もちろん、随分上の階なわけだし、医務室から見下ろしたときのように、はっきり何があるか判るわけじゃないけど。大体もう、サワダもティアスも城に戻ってきてたんだから、いるわけもなかった。

「え?」

 気のせいだろうか。木が揺れるその隙間に、人影が見えた気がした。遠いし、木陰にうまく隠れているせいか、すぐに判別できなくなったけれど……。
  怖くなってきた。あの時、3階の医務室から見下ろした、あの二人だと思ったら。
  スリッパを脱ぎ、靴に履き替えた。その時、自分の足を見てびっくりしたけれど、あんなに赤黒く腫れ上がっていたはずなのに、随分治まっていた。傷みはほとんど無かった。
  急いで部屋を飛び出し、エレベーターに乗り、3階に向かう。この時間は、おそらく外には出られないだろうし、オレが出入りできるフロアは限られているから。

 3階フロアを進んでいく。窓側には全て部屋があるので、中に入らないと、中庭を見下ろすことが出来ない。とは言っても、医務室くらいしか入れる部屋はないんだけど。
  うろうろしながら探していたら、奥の廊下を突き当たったところに、唯一中庭に面している窓があった。その窓は開けることは出来なかったけれど、外の様子を伺うことは出来た。さっきよりははっきりと人影を確認できた。それでも、木々が揺れるその一瞬だけだったけれど。

 やっぱり、サワダとティアスだった。寄り添っているように見えるのは、オレの気のせいか?

「こらこら。口外無用って言ったろ?なにこんな所にまで確認しにきてんだよ。さっさと部屋に戻れって」
「……イズミ……中佐」

 そう言えば、今夜はミナミさんの側にいるって言ってたな。だったら、ずっと医務室にいろよ。

「別に、見たくて見てるわけじゃない……」
「わざわざ、こんな所に降りてきてるのに?あいつら、あれで隠れてるつもりなんだから、ほっといてやれば?」

 いや、充分隠れてますけど。よっぽど目を凝らしてみないと判らないし。 静かに気配を殺したまま、彼はオレの隣に立ち、中庭を見下ろした。

「ほっといても良いわけ?」
「今はね。テツが、ホントの所どう考えているか判んないし。彼女も」
「同病、相憐れむって?」

 イズミは一瞬、押し黙った。彼がそんな態度に出たことに、オレは驚いたけれど。

「誰だよ、そんなことお前に言ったの」

 そうぶしつけに言ってから、また少し、沈黙が流れた。

「……ミハマ?ミハマだよな?」
「オレが、彼にそう言った。サワダとあの中央の楽師の話を」
「ああ、そう。彼は、それを知っていても、口にはしないのに」

『そう、奇遇だね。ティアスにも、彼は同じように思ってるみたいだよ?


 奇遇だったのは、サワダが『ティアス』と『楽師』それぞれにそう思っていたこと?それとも……

「奇遇だな。同じ話をするなんて」
「そうだな。うん……ホント」

 ミハマって、どこまで、何を理解してるんだ?そしてその思いを、彼ら護衛部隊は全員共有してるのか?それともイズミだけか?
  もし共有しているのだとしたら、サワダがあんな行動に出るわけがないだろう。
  それとも、端にティアスのことを楽師だと疑ってるってことだけを共有してる?

「……中央の楽師と、ティアスのこと。似てるって言ってたよ、ミハマは」

 空の色が、すっきりしなかった。再び大きく風が吹いて木々が揺れる。その隙間から見える二人の姿は、深夜の公園でいちゃつくカップルそのままだった。

「ああ。だから、気に入ったんだよ。知ってる?」
「どこが似てるんだよ」
「根暗なとこかな」
「意味わかんねえ。素直に『顔が好みでした』って言う方が判りやすいよ」

 そうだな。なんて嘯きながら、イズミはげらげら声を上げて笑っていた。

「でも、サワダも、同じこと言ってたって、ミハマは言ってた」
「だねえ。ただ、ミハマとテツが似てるって言った部分は違うと思うけど?違うはずなんだけどね」

 げらげら笑うくせに、いやに真面目な表情で外を眺めていた。

「テツは、彼女を疑ってるんだけどねえ」
「ミハマは?」
「さあ。どっちでも良いんじゃない?」

 どっちでも良いって、そんな答えがあるか。そもそも、お前んとこの王子様であり最高責任者じゃねえのか?!でも、やっぱりサワダが疑ってるって言うのは……。

「疑ってるのに、ああいう真似するような男なんだ。サワダって」
「どうだろうね。ミイラ取りがミイラにって所じゃない?その内、答えが出るさ。だから言ったろ?時期尚早だって。あの状況、今は見逃してやろうよ?」
「……それって……」
「どう転ぶか、判んないからさ」

 イズミは、やっとオレの方を見ていた。企んでいるのが、オレにもよく判った。

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