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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 続・序章 第3話 続・支配するもの、されるもの 04/10



 ミハマの表情は変わらなかった。彼の台詞が、本当は何を意味しているのか。オレには判らなかった。判らなかったけれど。

「……同じように?って?」
「うん、だから同じように。テツがあの楽師殿に感じているものを、ティアスにも感じている。あまり良い言葉とは思えないけれど、その、同病相憐れむってヤツだね」
「……そう言う……」
「そんなに、同じように感じる人って、たくさんいるのかな?」

 ミハマの台詞が意図することを、今度ははっきりと理解することが出来たと思う。

「ティアスと、あの楽師殿が似てるってこと?」
「そうだね。オレもテツも、違う意味で、そう思ってる」
「違う意味で?」
「うん。オレは、ティアスも楽師殿も、人の傷みを受け止められる優しい人だと思ってる。アイハラが少し話してくれた、君の時代にいたティアスのような人だって、オレも思った」

 オレは黙って頷く。今は全面的にその意見に賛同できないけれど。オレの知ってるティアスのように感じるときがほとんどだけど、でも少しだけ、強すぎる部分も感じている。

「でも、彼女の優しさって、自分の重みがそうさせてると思わない?表面的な優しさに誤魔化されそうになるけど」
「表面的?よく判んないよ」
「その場限りの、気遣いなんて、出来る人はいくらでもいるし、要領のいい人ならほぼ確実にそうするだろ?」

 この人、このキラッキラの爽やか笑顔で、酷いことさらっと言いませんでしたか?!それを優しさと言わないわけ?この人。イメージ違うな……ってことも無いか。

「ええっと、あれですよね。ティアスは、そうじゃなくて、優しいって言ってるわけだよね?」
「ん?そうだよ?何かおかしなこと言った?」
「いや、言ってない……よ?」

 この人の笑顔って、邪気がないんだよな。台詞はなんか重いんだけど。騙されそうになるな。騙されちゃいけないって言うのは、この人の周りの人を見ていたら、強く思うけど。

「サワダとは違う意味って?」
「うん。まあ、テツはあんまり女の人を、信用してないしね。だから、ちょっとフィルターかかってるって言うか。ティアスも、あの楽師殿も、自分と同類って言うか、ちょっと似てるんじゃないかって言ってる。自分の悪い部分というか、重く暗い部分に」

 ミハマの表情が曇る。こんなにはっきりと、強く重い表情を見せることは少ない。だけど、その表情は大抵、彼らのことを考えるときに見せる。

「オレも、テツとティアスは似てると思ってるよ。でも、あいつが思ってるみたいに、悪い意味じゃなくて。あの人達、根が暗いんだよね」
「サワダが根暗なのは判るけど」
「あはは。ごめんごめん。根暗って言うのは言い方が悪いよね。ちょっと、内にこもる部分があるって言うか。こもりすぎてて、本当に人のこと考えてるのに、それがうまく伝わらないって言うか。テツは口が悪いし、プライベートでは気遣いもそんなにうまい方じゃないから、あまり優しいように見えないかも知れないけど」
「そんなことはない。サワダは、まあ確かに口も悪いし、言い方もきついけど、優しいとこあるなって思うよ」

 それはもしかしたら、比較対象として側にイズミがいるからかも知れないけど。あの二人は、二人とも口が悪いけれど、面白いくらい正反対だ。

「そう、アイハラならそう言ってくれると思ってた。ありがとう」

 何でミハマが礼を言うんだよ。どうして良いか判んないって、そう言うことされると。

「いろいろフォローされてるの、知ってるし」
「良かった。でも本当は、みんな優しいよ。オレだけは、あんまり優しくないんだけど」
「そうかな?ミハマは優しいけど?」
「オレは、喋り過ぎなんだ。何も言わないことも、多分優しさだと思う。テツのことで怒ることも、その理由を言うことも言わないことも。事実を告げることだけが、優しいことだとは思わない」
「それはそうだけど……でも、今、ミハマ」
「だから、オレは優しくなんかないんだって。この手の中の世界を、守り、大きくしていくことだけが全て。そのために動くって決めた。だから、それ以外のものに対して、オレは厳しい。そんなの優しくなんか無いじゃないか」
「仕方ないんじゃ……」

 仕方がないことだと。オレは思ったけれど。だけど、その優しさも厳しさも、オレに向けられているとしたら?
  ミハマの優しさでオレはここにいる。だけど、彼の世界はあの護衛部隊だけ。もしかしたら、この国も入ってるかも知れないけど、この国にだって敵はいる。
  彼は黙っていることも優しさだという。だから、イズミやイツキ中尉がサワダのことを語らないのも、サワダに対する優しさであると同時に、オレに対する優しさだと。
  彼らが黙っていることが、本当の優しさだとしたら、今、ミハマがオレにいろいろなことを告げていることが厳しさだって、彼は言ってるのかも知れない。
  でも、そうは……思えないし、思いたくもない。

「ミハマって、ティアスのこと、ホントの所どう思ってるの?イズミなんかは茶化してるけど?」
「どうだろ」
「どうって?!そこは誤魔化すんだ。ずるいな」
「誤魔化してないって!」

 照れてる!この人照れてるよ!ああいうこと、さらっと言えるくせに、この手のことは全然ダメなんだ。判りやすく顔も赤いし。

「アイハラだって」
「オレ、そんなに判りやすくないって。別に、こっちのティアスは、オレの知らない人だし」

 そのはずだけれど。

「いや、まあ、ね?」
「意味判んないし。何だよ」

 真正面から突っ込んで、こんなにあからさまに照れるとは思わなかったな。でも、この様子だと、サワダとティアスのこと、多分なにも知らないよな。もしかしたら、疑ってもいないのかな?『ティアスよりずっとお似合い』なんて、遠回しすぎる台詞じゃ、ミハマには通じないのかな。

「もし、サワダに彼女とられちゃったら、どうすんの?」
「取られる?別に、オレと彼女は何もないし、テツとも無いよ。でも」

 その台詞は、彼がそのことを考えようとしていない様にもとれた。

「でもって?」
「ホントにそうなったら、それはそれで良い傾向なんじゃないかな?」

 良い傾向って!?
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