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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 続・序章 第1話  続・世界を見る 04/10


彼を見送りながら、シュウジさんはオレのことを見つめる。まるで親のように。

「大変でしょう?1人って言うのは」

彼は箱から最後の煙草を取り出し、火をつける。

「突然、何ですか?」
「いいえ。1人になっていないか、心配してたんですよ、それなりに。……あの子達は、何というか極端なんですよ。敵と味方の差がね。ミハマのことが全てだし、他は敵にしか見えていない。まあ、それなりの価値が、ミハマにはあるからなんですけど」
「知ってます」

ミハマの価値だなんて、オレには判らないけれど。
でも、彼らはオレのことを信用していない。それはよく判ってる。

「極端なりに、歩み寄りを見せてるじゃないですか。あの人見知りが」
「人見知り?サワダのこと?」

人見知りって言うか、引きこもりの根暗だな。精神的引きこもり。普通にしてる分、タチが悪い。

「シンですよ。あれは、扱いにくいでしょう。普段にこやかな分、余計にね。まあ、ミハマやテツのフォローもあるかも知れませんが、随分態度が柔らかくなってると思いますよ。何があったか知らないですけど。良い傾向です」

……あれ、柔らかいのかなあ。

「あれで、まあまあ、柔らかいんですよ」

見透かしたようにそう言った。

「そう言えば、あの客人をお気に入りだとか言ってましたね」
「いや、その……ほら、綺麗な子だし」
「君のいた時代の話ってヤツを、テツから聞きましたよ。あの子は笑い飛ばしてましたけどね」
「別人だよ」
「君の口からそんな言葉が出るなんて、意外ですね」

……意外?なんで?
シュウジさんは、何でそんな……??

「何で意外なんですか?」
「いえ……君は、あの時代に執着してるように見えましたから」
「当たり前ですよ。シュウジさんだって……ミハマ達に」
「そうですね。誰しも、執着するモノはありますからね」

なんて言ったらいいんだろう。
シュウジさんは案外、人を見透かしたような発言をする。まるで、大人みたいだ。
……大人か。

「まだ、元いた時代に戻りたいと思いますか?」
「何ですか。当たり前ですよ。……頼みますって、シュウジさんしか判んないんでしょ?多分」
「私でも、確証はないんですけどねえ。……いっそ、この時代を満喫してみたらどうですか?」
「いやですよ。こんな戦争やら、派閥争いやら、魔物まで現れるような世界。オレ、闘えないのに。戦い方も教えてくれないし。こういう場合、違う世界から来たヤツはスーパーマンになれるもんだって、ドラ●もんの時代から決まってるだろ?」
「そんな都合のいい」

シュウジさんに言われたくはないかも。

「戦えないなら戦えないなりに、生き方ってモンがありますよ」
「シュウジさんみたいに?」
「私だって、戦ってますよ。軍師ですから。あの怪獣達を基準にしないでくださいね。あの子達こそ『特別』ですから」
「極端ってこと?」
「そうですね。中央内ですら、テツは特別扱いというか、希有の目で見られているというか。シンは、表には出てこないのでそうでもないですけど」
「そうなんだ」

嫌がりそうだな、サワダの性格上。人前で平気でピアノとか弾くくせに、意外とあがり性だし。騒がれるのか嫌がるし。

「じゃあ、私はこれで。もうそろそろ戻らないと五月蠅いんで」

煙草を消し、ご丁寧に携帯灰皿を取り出し、捨てると、オレに会釈をして階段室に向かう。

「戻る方法、お願いですからね!シュウジさんだけが頼りなんだから!」
「あまりあてにしないでくださいね」

オレの方へ振り向くことなく、軽く手を振りながら階段を下りていった。

「ホントにお前、タイムスリップとかしてたんだ。漫画か?」
「……うわ!びっくりした!!……ニイジマ……大……尉?」

後ろに立っていたのはニイジマだった。でも、軍服は着ていなかった。

「人の階級くらい覚えとけよ。まあ、制服着てないから無理もないけど」

制服着てても判んないよ。何か書いてあるのか?
それより、ここ、オワリ国なんですけど。良いのか、こんな所にいて?しかも、ここ、屋上だぞ?どうやって入り込んだんだ?
確かに中央の制服を着てても目立つけど、私服で歩いていても目立つぞ、ここは。

「何だよ、じろじろ見て。何か変か?」
「いや……ティアスのことが心配できたのか?もしかして」
「心配……まあ、そんなとこかな」
「セリ少佐が、サワダ達に見られてたけど。一緒にいたのがティアスだとは思ってないみたいだけど」

そう言ったら、ニイジマは人の悪い笑みを浮かべた。

「いいのか?そんなこと言っちゃって」
「だって、ティアスにその話をするスキがないからさ。大抵、誰か一緒にいるし。……何かミハマが妙に気に入っちゃってるみたいだし」

腹を抱えて笑っていた。いくらなんでも笑いすぎだろ。

「姫、性格はあれだけど、見た目はいい女だしな。元々、あの王子様は楽師を気に入ってたわけだし、当然といえば当然だな」
「今、そんな話してないじゃんよ」
「お前、誰の味方なの?」

ずるい。急にまじめな顔すんなって。それは、オレの知ってる新島には無い行動パターンだな。
思わず後ずさりしてしまうが、すぐ後ろにあった柵にぶつかってしまった。
「もう一度聞こうか?誰の味方?」
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