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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第7話  選ぶと言うこと 10/10


「シン、相手は怪我人よ」

 溜息をつきながら、仕方ないといった顔で、一応突っ込むイツキ中尉。
 そんなものはモノともしない。

「知ってるよ」
「殿下に、判断をお任せしましょうよ」
「だから、その殿下がいらっしゃる前に、下調べをしておくのも家臣の役目でしょう?」
「時代劇かよ……」

 よく判らない、といった表情で突っ込み返されてしまった。時代劇……ないのかな。シュウジさんになら通じるはず……!!

「ミハマ!オレも行くって!ったく、しょうがねえなお前は!立場とか判ってねえのか!」
「良いから、テツこそもう少し寝てろって言うの!ふらふら動かないで、じっとしてなよ。怪我人のくせに!!」

 扉の向こうで騒ぐ2人の顔でも見えているかのように、イツキ中尉とイズミの2人は顔を見合わせて溜息をついた。もちろん笑顔だったけど。
 なんか、こうやって騒いでるとこ見ると、ただのバカ騒ぎしてる友達って感じだな。ティアスも吹き出してるし。

「あんた達、少しはおとなしく出来ないんですか!いい年して!みっともない!」

 シュウジさんの声もまる聞こえですけど。それを判っていないのか、なにもなかったかのようにドアをノックする。

「賑やかね」

 そう言って微笑んだティアスに、イツキ中尉が嬉しそうに微笑み返した。イズミも、少しだけだけど。

「失礼しますよ」
「うっさいよ、3人とも。みっともない」
「入った途端、失礼なこと言うんじゃありません、客人の前で!」

 イズミに対して、もっともなつっこみをするシュウジさん。でも、イズミの突っ込みも、的確だけど。

「その客にも筒抜けなんですけど」
「いいえ、大丈夫ですよ。楽しそうで、良いですね」

 穏やかに微笑むティアスに、さすがのシュウジさんも一瞬動きが止まる。

「……この方が、あなたが手こずるような魔物相手に立ち回っていたんですか?」
「別に、手こずってない」
「みたいだね。テッキさんもそう言ってたし。こんなに可愛いのにね」

 笑顔でさらりとそう言い放ったミハマを、ティアスを除く全員が睨み付けるように見つめた。

「……?ミハマ?」
「なに?オレ、なんか変なこと言った?」
「いや……なあ?」

 イズミがオレの顔を見る。オレも思わず頷いてしまう。
 だって、ティアスは……オレのいた時代では沢田の彼女で、この時代では楽師で死神で……やっぱりサワダと何だかいい雰囲気で……、でも、敵同士で……。
 しかも、明らかに敵意をむき出してた、サワダ父の関係者としてここにいるのに。

 王子様がその発言は、やばいんじゃない? 
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