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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第7話 選ぶと言うこと 07/10
ミハマと二人で城に戻ったら、玄関(この場合城門とでも言うべきか?どう考えてもホテルの入口だけど)で待っていたイズミに声をかけられる。
「遅いよ!」
「ごめんごめん。テツと彼女の具合はどう?」
笑顔でイズミに駆けより、謝ってみせる。あんまり申し訳なさそうにしていないところを見ると、いつものことなのかも知れない。
オレは、イズミに睨まれながら、ゆっくりミハマの後を追った。3人で一緒に城に入る。
「テッちゃんは、ちょっと傷が酷いけど、ピンピンしてる。確かに、あんなケガしたのは久しぶりだけど、元気なもんだよ。一応、こっそりイムラ先生にも来てもらってる。後で話する?」
「うん。何か言ってた?」
まるで内緒話でもするかのように、こそこそと話す二人。オレにはまるぎこえですけど……。
もしかしたら、城内の人には知られたくない話?
それにしても、また知らない名前が出てきたな。察するに、サワダの先生(多分医者)って所かな?
でも、それなら最初からその人を呼べばいいのに……治療とは別ってことだろ、要するに。聞いたらまた怒られそうだけど。
「さあ、シュウジさんに何か話があるからって、テッちゃんに内緒で話してたけど。で、彼女……、ティアスって言うらしいんだけど、あとで引き取りたいって、サワダ議員の使いの者が来てた」
一応、手を回していたわけね、サワダ父は。中王の臣下と仲が良い人が、死神を連れてきたわけだから、多分何かあるんだろうな。ミハマ達にそれを教えた方がいい気もするけど……ティアスのこと話さないって、彼女とオレは約束をした。
何があったって、オレと彼女は秘密を共有してる。
「そう。どうしたの?」
「動かすと彼女が大変だと思うので、動けるようになるまではこちらで対応しますからご心配なく、って言っといた」
「ありがと。完璧だね」
「当然でしょ。シュウジさんと一緒にしないでくれる?」
笑い会う二人。まあ、シュウジさんて、そう言うところ、気が利かなさそうだもんな。嫌味たっぷりのくせに、そう言うところがそつなさそうなんだもん、イズミって。よく考えなくても怖いよな。
「アイハラ、この人、なんか怖いこと言ってなかった?」
「怖いことって言うか、全体的に怖かったんですけど」
「あはは、やっぱりね。まあ、そんな嫌そうな顔すんなよ。さすがに、あの人とミハマのいるところに置いてったのは悪かったって」
全然悪いって顔じゃないけどね!!でも、怖いから言わないけど。
「表情で訴えんのやめろよな」
「イズミ……中佐は常に笑顔ですからあ?」
「まあまあ……何でシンもそんなに喧嘩腰なんだよ。そう言う態度だから、アイハラが警戒してんだろ?」
「ミハマのサワダ議員に対する態度よりは、よっぽど?オレはオレの考えがあるんだから」
「それは、重々承知してるからね。だから、これはオレの考え方」
「あ、そう。でも、あまり甘い顔すると、期待させすぎちゃうよ?」
期待させすぎる……。
何を言いたいんだよ、イズミは。ミハマが、ただ無責任にオレに優しいだけじゃないのなんて、判ってるつもりだよ!
「甘い顔をしてるつもりはないよ」
ミハマは、イズミに笑顔を向ける。その笑顔はとてつもなく優しいものだったのに、イズミは表情を強張らせて黙ってしまった。
「テツ、どこにいるの?部屋?」
「うん。彼女も同じ階の客間にいるから……」
「そう。じゃあ、アイハラを案内してあげて。彼もユノと一緒に現場に居合わせたみたいだから、状況を知ってるし」
「状況ったって、ユノちゃん達がついた時点では……」
「いいから、だって、心配だろ?別人だって判ってても」
優しさなのか?甘えさせてくれるのか?それとも他に、何かあるのか?