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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第7話 選ぶと言うこと 06/10
オレとミハマが地震の話をしている間に、サワダ父はいなくなっていた。いつの間に消えたんだ。神出鬼没……。
「悪いね、つき合わせて。みんな心配しすぎなんだ。別にテッキさんと話してたって、何もないのにね。戻ろうか」
そう言ってオレを促し、城に向かって歩き出す。
いや、充分すぎるほど何かありましたが!怖いっつーの、水面下で戦争中だっつーの!!
「アイハラまで、そんな怖い顔しないでよ。早く戻ろうよ。心配だろ?彼女のこと」
「……まあ。でも」
「知ってるよ、君が言ってた人とは別人だってことだろ?でも、君が言ってた女の子も、あんなに綺麗な子だった?」
「まあ。……ミハマだって、相当綺麗な顔じゃん、何言ってんだよ?変な感じだよ」
「だって、オレ、男なんですけど」
「ちゃんと男の顔してるけど、なんつーの、少女漫画系の顔って言うか」
「なにそれ。違うって」
「物腰も柔らかいし。喧嘩腰だけど」
「なんか矛盾してない?」
「矛盾してんのはミハマだって」
「うー……なんか突っ込まれまくってる気がする」
突っ込みまくってますから。て言うか、突っ込みポイントありすぎだよ!
この王子様は、矛盾だらけだ。
知ってて、判ってて、理解してて、どうしてその態度と行動なのか。
「……テツは、彼女のこと判ってて助けたのかな?」
「いや、知らないと思う。オレ、ティアスの写真とか見せてないし。……持ってないし」
「なんか、似合ってる感じの二人だよね」
「……ないって。オレのいた時代はそうだったかも知れないけど、こっちのサワダも、ティアスも別人だ!!」
思わず立ち止まり、怒鳴ってしまったオレに、さすがのミハマも驚いた顔をする。でも、すぐに困ったような笑顔に戻って
「そうだね。そう言ったのは他でもない、オレやシュウジだね。テツも、彼女も、お互いを知るわけがない。テツも、君の話を聞く限り、オレにとっては完全に別人にしか聞こえないし」
「……でも、サワダみたいだって」
「うん。似てると思う。同じ人かも知れないけど、オレの隣にいるテツとは違うかな」
「時々、ミハマの言ってることは判らない」
「どうして?」
「矛盾だらけだ」
「何が?」
「違うことを、たくさん言う。あんたの口から、全く反対の言葉が一緒に出てくるんだ」
「普通じゃない?」
「どの口が普通とか言うかな??」
何をおかしなことを、と言わんばかりだった。
驚くほど彼は矛盾に満ちている。
「君の言っているテツは、テツに似てると思うけど、彼とテツが同じ道を歩むとは思えない。時代も、周りにいる人間も、環境も違う。彼自身の思いも。彼の前に、彼が一緒にいた女性がたまたま現れた。そこには強い縁があるかも知れない。でも、まだ出会っただけだ。何をそんなに不安そうにしてるの?君は」
矛盾に満ちてるくせに……人のことは見抜いてしまう。気持ちよいくらい的確に。
「でも、あんな子だとは思わなかったな」
そう言って、ミハマは少しだけ楽しそうに、彼女を評した。それがオレの不安をますます煽っているのだとも知らないかのように。