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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第7話  選ぶと言うこと 03/10


 「オレは大丈夫ですから、父さん」

 父さんて!?
 そういやおかしいなって思ってたけど……しかも敬語なんだ。

「それより、父さんの知り合いなんですか?彼女は……。一体、何者です?あれだけの魔物相手にあそこまで戦える人物なら、相当名の知れた方だと思いますが」
「いや、オレは知らないけれど。知人が預かっていた娘さんで、世話役にと頼まれただけだから。北に近い国の出身だから、魔物と戦う機会が多かったんじゃないか?軍人の動きじゃないだろう?」
「たしかに、……そうですね」

 父の言葉に同意したのはサワダだったが、ミハマは納得いかない顔だった。

 まあ、軍人でもないのに魔物と戦う機会があっただなんて、適当ないいわけ、通じるわけもない。
 実際、彼女とサワダ父は、昨日、中王の楽師の広場で初めて会ったと言っていたのだから、彼は彼女のことをほとんど何も知らないはずだ。

「随分、顔が広いんですね。北の方にまでお知り合いがいらっしゃるだなんて」
「たまたまだよ。昔の知り合いが、北に行ってた。それで中央で会うことになった。おかしな話かい?」
「いいえ。でも、あなたのお知り合いというと、中央では中王様を中心にした『創世記』を作り上げた方たちだと思っていましたから」

 創世記……?名称から察するに、時代を作ったってことなんだろうけど……あの酔っぱらいのおっさんもそれに入ってるのか?

「ミハマ!あっちの怪我人は警備隊が全員回収したけど」
「そう。ありがと。お疲れさま」

 報告をしに近付いてきたイズミだったが、苦笑いを浮かべているところを見ると、もしかしたらサワダ父との対峙を邪魔しに来たのかも知れない。

「シン、悪いけどテツを連れて戻れる?傷が結構酷いみたいだから。サラとユノも、この女性を連れて……彼女、何て言うんですか?」
「ティアス」

 簡単に、彼女の名前を明かした。ミハマもサワダも、その名前に当然のように反応した。

 オレが、彼女の名前を告げていたから……。
 こんなことになるとは思ってなかったんだ。

「彼女の介抱は、こっちでしようか?」
「いえ。サワダ議員はお一人でいらしたようですし、こちらで手配しますから。女性がいた方が、彼女も目を覚ましたときに安心するでしょう?」
「そうかい?」
「ええ。あなたのお知り合いとはいえ、あなたとそんなに面識があるようにも見受けられませんし」
「そんなことはないよ。君は相変わらず、人が悪いね。何を企んでるんだい?」
「いいえ、別に。ただ、サワダ中佐の話を聞く限り、彼女は新しい魔物に対して有効な手段も持っているようですし、ぜひ、お話をお伺いしたいと思いまして」
「正直で結構なことだね」

 なんでこんなに険悪っていうか、子供のケンカみたいなコトするんだよ、この二人は……。
 対峙してる二人を除く全員が嫌そうな顔をしてるのに、気付いて、お願い!

「えっと……殿下、怪我人もいることですし、早めに宮殿に戻りませんか?」
「うん、それはみんなに任せた。オレはちょっとサワダ議員と話があるから。頼むよ、特にその人は無理するから」

 イツキ中尉がおそるおそる提案したのだが、それを笑顔でかわすミハマ。
 サワダが嫌そうな顔をしていたが、傷が深いのは確かだ。特に、気絶してるティアスの状態は判らない。

「……や、でも……戻らない?」
「戻らないよ。無理したら、怒るよ?」

 サワダの提案も、当然のように笑顔でかわす我が儘王子。
 つーか……誰も逆らえない?もしかして。
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