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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第7話 選ぶと言うこと 02/10
イツキ中尉が携帯で呼び出してから5分もしない内に、ミハマとイズミとミナミさんがやってきた。シュウジさんは……鈍くさそうだから、置いてかれたかな。
「警備隊はまだ来ないの?」
ミハマがクレーターの壁を降りながら、辺りを見渡す。彼の指示を受け、イズミがクレーターの外にいた怪我人の元へ向かっていた。
「テツ……」
「なんだよ、サラさん。そんな顔しなくても……大丈夫だって」
サワダに駆けよったミナミさんが、不安げな顔を見せる。制服を着ていたのに、彼女は彼を『テツ』と呼んだ。
……仕方ないだろ。彼女は、お前のこと好きなんだから。
「アイハラ、その人は?君は大丈夫なの?」
ミハマは、ちらっとサワダを見ただけで、すぐにオレに声をかけてきた。
サワダのこと、心配するかと思ったのに……。ちょっと、イメージと違う行動だな。
「え?オレは良いけど……オレ達がきたときにはこの状況だったんだ。だから、サワダに……」
「そっか。かなり傷が酷いけど、何があったの?テツがそこまで手こずるなんて」
「オレだけじゃないよ。その女もだ」
「どういうこと?」
二人揃って、ティアスを見つめた。
「空から、今まで見たのとは全く違うタイプの魔物が現れたんだ。オレがそれに気付いて、墓からここに来たときには、その女がそこにいる連中を逃がしながら戦ってた」
そう言ってサワダは、イズミと、やっと駆けつけた警備隊が介抱している人たちを指さした。
あれ?でも、この場所って……?
「サワダ、すげーね、やっぱ。墓からこんなに離れてるのに、彼女が戦ってるのに気付いたんだ」
「いや、森にはもう入ってたんだ。……で、その連中は多分、墓の管理をしてる兵の関係者の一般人らしかったんだ。で、まあ、その女が何者か判らなかったんだけど、とりあえず、魔物を退治することにしたんだ」
なんか流された感じがするんですけど。まあいいか。
「強かったってこと?」
「いや、解析が遅れただけ……だと思う。でも、まあ、要注意かもね。動きも早かったし、パワーもある。それ以上に、頭がいい。今まできた連中に比べてね。まるで、兵隊のような動きだったよ。3体しかいなかったけど」
「兵隊?」
オレの疑問に答えてくれたのは、ミナミさんだった。
「今まで襲ってきた魔物達は、一体一体がバラバラで、知能が低い動きをしていました。ただ暴れているだけ、と言うか……。でも、それが統率をされた動きをしていた、と言うことですね。誰か、支配するモノがいたと言うことは?」
「判らんな。いる感じの動きだったけど、存在は」
首を振ったとき、少しだけ苦痛に顔を歪ませた。
「その女は、かなり出来るよ?そのわりには、見たことないんだけど。うちの軍のヤツかと思ったけど、軍人の動きじゃない。近いモノはあるんだけど……何て言っていいのか」
「彼女はオレの知り合いだよ。大丈夫か?テツ」
全く近付いてきた気配を感じさせず、ミハマ達の後ろに現れたのは、サワダの父親だった。
サワダ元老院議員。……王子の護衛部隊とも、王子自身とも、あまり良い関係とは言えない。サワダの父親にも関わらず。