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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第6話 袖振り合うも多生の縁 04/08
「……オレは……こういう嫌な感じのお子さまを側に置くのは反対だな。さっさとどこかに捨てちゃえばいいのに」
「それが出来ない人だから、一緒にいるくせに」
「そうなんだよね。他人ってホントに思い通りにならないよね」
「思い通りにしようとも思ってないのに?」
「もー、ユノちゃんてば、オレの言いたいこと先に言わないでよ、もう」
機嫌が直ったように見えたけど……、もしかしたらイツキ中尉に気を遣って、良くなったように見せてるだけかもしれない。
だって、彼の根本的な怒りの矛先はオレに向けられたままだ。
「サラさんも……テッちゃんのことを大事に思ってるのは判るけど」
「……いや、その、私は……」
え?何、その、もんのすっごく判りやすい反応!!あからさまにミナミさんって、サワダのこと好きなんじゃん!!真っ赤になってるよ。二人でいるときは結構普通にしてたのに!!
すっげえ可愛い!!思わず顔がにやけてしまいそうなくらい可愛い!
ああ、でも、ここではポーカーフェイスでいなければ……。
「大事って言うか……ねえ?」
「そうよねー。シンも苦労が耐えないわよねー」
「だろ?」
しかも当然のように、イズミ公認。メチャクチャ怖い。
なんか、とてつもなく恐ろしい嫉妬をしそうなのに。
「ち……ちが……その……何て言うか」
「ああ、もう!サラさん可愛い!ホントに可愛い!!」
「可愛いねえ!!二人揃って可愛いねえ!!」
てかイズミ!何どさくさに紛れて二人に抱きついてんだよ!!ずるい!オレも混ざりたい!!でもイズミが超怖い!!
「……あ」
思わず声を出してしまった。オレの視線の先には、噂のサトウアイリ……。廊下を、ゆっくりと歩く。おとぎ話のお姫様のようだった。
この世界にいる人たちは、オレの時代の人たちとほとんど変わらない服装だった。この宮殿にいる人たちでもそうだ。軍服が異様なだけで、他はほとんど変わらない。
でも、彼女はまるで今から発表会にでも出るようなドレスを着ていた。
……あれ?良いのか?オレがいた時代でだって、彼女はあんな格好をして、ピアノを弾いていたんだから。
いやいやいや。普段は着ないだろ。確かに彼女はかなりお嬢さん的な格好だったけど。
「……珍しい、彼女が宮殿にいるなんて」
不安そうな顔で彼女の歩いていく先を見つめるミナミさんの肩に、イズミが優しく手を乗せた。
「サラは、ミハマ達の所に戻っててよ。お説教、長くかかっちゃうかもしれないけど。オレはここにいる」
「……シン」
「ユノちゃん、悪いけど、そのお子さま頼むわ」
イツキ中尉は笑顔で頷いた。
ミナミさんは急いでもと来た道を戻った。
「アイハラさん、戻りましょう?」
「……うん」
イズミが彼女にオレのことを頼んだのは……オレにとっても最良の配慮だったのかもしれない。