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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第5話  穴二つ 07/08


 行きはあんなに時間がかかったのに、帰りはあっという間についてしまった。
 わざわざ下道を使っていかなきゃ行けない理由が、やっぱり納得できなかった。
 国について、すぐに王宮に向かうのかと思ったら、車はまっすぐ港へ向かっていた。

 そう言えば、魔物は空と海からやってくると言うことを思いだした。
 今回の魔物は、海からやってきたってことなのか。

 オレ達が港に着いたときには、戦いはもう始まっていた。

 ナゴヤ港を埋め尽くすように、黒い魔物達が海から顔を出していた。一体一体は約5メートルくらい。大きさだけでも充分怖い。
 ヤツらはタコともイカともつかぬ、ぬめぬめした足をたくさん持っていた。どれだけが一体分か判らず、数え切れない。そんなヤツがざっと50匹くらいはいた。

 そいつらを陸に上げないように、オワリ軍の人たちが戦っていた。

 サワダに確認したら、船で海に出て戦っているのが国境警備隊の海軍で、陸から遠距離攻撃をしているのがいわゆるオワリの国軍らしい。違いがよく判らなかった。

 陸の方にいる軍の中へ、ミハマ達は入っていく。中心部にかなり立派で巨大なテント(パオのような形だった)がはられ、その中には簡単な玉座が用意されていた。まわりに控えていたのは、国に残っていた王と王子それぞれの親衛隊、ミナミさんと……隣にいる袴をはいた女の子は確か……。

「王は、あとからいらっしゃいますので、それまでは王子が指揮を執ります」

 ミハマを玉座に座らせ、シュウジさんが当然のようにその横に立った。

「王子御自ら戦場に足をお運びいただかなくとも……戦場は危険です。身をお隠しください」

 王の親衛隊の長が、シュウジさんとミハマを交互に見ながらそう進言した。
 確かに、わざわざ王子が出てこなくても良いような気はする。

「そう言うわけには行かないでしょ。城から指示出してたって、現に魔物が来てるのはこの場所なんだ。あんな所にいて一体何が判る?将官クラスは誰もいない?」

 判りきったことを、彼は聞いているのだろう。親衛隊の人たちがみな黙ってしまった。

「いつものことだね。……戦況の確認を。指示はイズミ中佐とミナミ中佐を通じて行なったけれど?スズオカ准将、確認を。君に任せるから」
「はい、殿下。ソノハラ大佐、殿下にご報告を」

 め……めんどくさー……。なんでミハマがシュウジさんに『任せる』っつってんのに、シュウジさんは自分に報告させないで、ミハマにさせるかな?
 しかも、相手はシュウジさんより階級下なわけだし?
 サワダは入口に立ったまま、オレだけミナミさんに促されてミハマのそばに移動させられた。

「イズミ中佐の援護に向かえばよろしいですか?」

 サワダはまた、別人の顔を見せる。
 従順な、軍人のフリだ。

「そうですね。あなた達を中心に、布陣を。対海用の特殊部隊を投入しましょう。実験的にですが」
「しかし、スズオカ准将!まだあの部隊は……!」
「実験的に、ですよ。思ったより戦況は悪くないですし、今回はイズミ中佐もサワダ中佐もいるし、いざとなればミナミ中佐もいます。イツキ中尉も神社からいらしてます。こんな恵まれた機に投入せずに、いつ投入せよと?いつまでも護衛部隊にばかり頼ってもらっては困りますから」
「しかし……」
「いつまでも実践で使えないような特殊部隊は、金を食うばかりじゃないですか?」

 シュウジさんと王の親衛隊の長(おそらく隊長は王にくっついているはずなので、代理と言ったところだろう)が言い争っている間に、サワダはテントを抜け、戦場に向かった。

「では、特殊部隊への指示はお願いします。私の作戦通りに。殿下、行きましょう」
「……!で……殿下?!どちらへ?」
「どちらへって……決まってるだろ?こんな遠い所じゃなくて、もっと近くにだよ。うちの護衛官ばかり戦わせられないって」
「危険です!なりません!殿下!!」
「大丈夫だよ。イツキ中尉もいるしね」

 巫女さんスタイルの少女が笑顔で答えた。この子がイツキ中尉らしい。

 どこかで見た顔だと思ったら、沢田の妹だ。……そう言えば、妹じゃないって言ってたな。縁は近いけど、兄妹にはならなかったって所かな。
 でも、こんな可愛い(可愛いは関係ないか)、戦いとは無縁そうな女の子に、何が出来るのかな?

 オレはやっぱりミナミさんに誘導され、ミハマとシュウジさんの後ろをついてテントを出た。
 てか、オレは嫌なんですけど!!戦場なんて!!ホントに大丈夫なのか?王子に何かあったら大変だから、心配してるわけだろ?!あの人達は。

「アイハラ、大丈夫だから。助かったよ、そんなに酷い魔物じゃなくて。負傷者もいないようだし、良かった」
「……大丈夫って?」
「ユノがいるからね」

 イツキ中尉は、オレに笑顔で話しかけてくれた。

「はじめまして。イツキユノ中尉相当官です。お話は伺ってます」
「は……はじめまして」

 ホント、普通にめっちゃくちゃ可愛いんですけど?でも、どう見てもサワダと同じ遺伝子入った顔してるけど、兄妹ではないわけね。

「ユノは対魔物なら、ほぼ完璧な結界をはることが出来る、この国でも数少ない巫女なんですよ。なので、この若さで、神社の補佐官であり、軍でも中尉相当官なんですね」
「……オレより年下だよね」

 しかも可愛いのに。中尉ってことは、士官学校卒が少尉スタートだって言ってたから、それより上ってことか。この子こそ、特別待遇ってヤツだな。しかも、護衛部隊か……また。

「あの場所にいるよりは……安全ですよ。我々が守りますから」

 にこやかにそう言ったのはミナミさんだった。
 でも、それって、他でもない王子を守るってことだろう?
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