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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第5話  穴二つ 05/08


「どうした、サワダ?」
「王の側近からの伝令だよ。国に魔物が襲撃したから、出発時間を早めるって。緊急事態だから、一緒に戻るようにってさ。いま、横断道の緊急事態用のパスの申請をしてるらしい」

 サカキ元帥が人の悪そうな笑みを浮かべた。サワダ議員はため息を付く。

「……まったく。こと、戦闘に関しては、王子の護衛部隊に頼りきりだな、我が国は。そう言われませんでしたかね、王子」
「そうですね。せめて状況だけでももう少し伝えてくれれば、多少なりとも対処は出来るのに。……危機感がなさ過ぎますね。張り合いがないんじゃないですか?サワダ議員」
「なにがかね?」

 サワダ父とミハマの間にいやな空気が流れる。

「ことは一刻を争うんじゃないのかね?」
「……そうですね。スズオカ准将に連絡をします」

 ミハマがあからさまに嫌な顔をするのって、この人くらいかもしれないな、と思った。すごく怖かったけど、国にいるときも、ここに来てからも、こんな顔はしなかったから。
 ミハマは彼らに挨拶をすると、オレを引っ張って図書館を出て、シュウジさんに電話をかける。

「連絡来た?うん……オレの名前使って、状況の確認を……あ、もうやってる?そう、大丈夫そうなら良いけど。シンは先に行かせるよ。うん、また何か問題あったら連絡して。とりあえずテツと合流するから」

 最初は早口で焦っていたミハマだったが、少しずつ落ち着きを取り戻していったのが判る。

「シュウジさん、なんて?国は大丈夫?」
「うん。なんとかね。ただ、親衛隊も半分こっちに来ちゃってるし、オレも父もこっちに来てるから。早く戻らないといけないのは確かなんだけど」
「さっき、サワダ議員が『護衛部隊に頼りきり』って言ってたけど……」
「そうだね。その通りだよ。魔物に関してはね。オワリの軍は闘えないわけではないけど、強力ではない……。他の国よりはマシだけど……」

 ミハマは口を噤む。
 魔物に関しては、護衛部隊が強力だけど……人の場合は?
 墓として、名前も書かれない国の載っていた地図が、鮮明に思い浮かんだ。

「悪いね、シンとテツにだけ連絡するね」

 大丈夫だと言ってはいたけれど、何があるか判らない状況だ。ミハマにはやることがいっぱいあるのだろう。携帯をかけながら、オレに一緒に宿舎の方へ戻るよう促した。

「シュウジから指示もらった?うん。その通りやってくれればいいから。状況?うーん、オレの所に入った連絡じゃ、全然判んないよ。……うん、サラとユノとの連携も任せるよ。オレからも連絡しとくよ。うん。良い機会だと思って。何言ってんだよ、オレの護衛するより簡単だって」

 イズミは話が長いからか、随分かかってるな。でも、ミハマも何だか余裕が出てきたみたいで良かったよ。

「……多分、噛んでるよ、あの人は。テツ?まだ合流してないけど。うん、判った」

 宿舎に向かっていたオレの服をミハマが掴んで無理矢理方向転換させた。
 行ったことない方向だな。この先には何があるんだ?
 ミハマに聞こうと思ったけど、イズミが離してくれないらしく、携帯を持ったまま喋ってた。
 仕方ないので案内図を開く。この先は……。

「外?でも、玄関も宿舎もないんですけど?ミハマ?!」

 長い廊下を抜け、極狭い、通用口のような扉を抜けると、墓が広がっていた。
 オワリの国で見た、サワダが掘っていた墓と同じように、白い墓石が所狭しと並んでいた。
 ミハマはその中を歩く。来慣れてるみたいだった。

 でも、この墓……なんか違和感があるな。

「あ、いたいた。じゃあ、任せたからね。……テツ!」

 丘を一つ越えたところに、巨大な木が生えていた。その根元には結構な面積の澄んだ湖が広がっていた。
 木の下に座るサワダにミハマは声をかけたのだ。
 それにしても悪趣味だな。国でも墓にいて、中央に来てまで墓にいるって言うのも。

「連絡、聞いた?」
「聞いたよ。シュウジから連絡あったから。ここに来ると思ってた。パスが出るまでもう少しかかりそうだからな。カトウさんは車の手配してもらってるよ」
「そっか……緊急事態なんだから、さっさとパスくらい出してくれればいいのに」

 そう言ってぼやく二人。横断道って、中王軍の専用道路とか言ってたけど、こう言うときは一応パスを出してくれるんだ。ただ、所詮お役所仕事ってことか。
 ティアスのくれたこのパスって、実は相当貴重なんじゃないの?

「……?なに?」

 二人は黙って同時にこちらに振り向いた。だけど、オレを見ているんじゃなかった。

「使って、このパス。一台片道分しかないけど」
「……なんで?」

 そこにいたのはティアスだった。オレに渡してくれたのとは違う色のパスをミハマに差し出していた。

「面白そうだから」
「そうですか。ありがとうございます」
「え?!そうですかって、お前なにあっさり納得してんだ、こら!」

 サワダの突っ込みももっともだ。ティアスは優しいけど、これはあまりに突然だし、理由もなんなんだ?!
 意味わかんねえし!!
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