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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第4話  敵と味方がいる幸せ 07/07


 入るのが躊躇われるようないい雰囲気の中、オレはだんだん不愉快になってきていた。

「……何だよあれ、楽師殿と出来てるってコトはないよな?」
「何言ってんだよ、アイハラくんはさあ」
「……なるほど。出来てるねえ……」

 呟きながら覗き込むニイジマを、思わずオレとイズミはいぶかしげな目で見つめる。

「いや、ないって。ないない。大佐殿はそんなこと考えていられるような立場の方じゃないし。大体、あの雄将殿だって、そんなつもりもないだろ?実はホモなんじゃないかって言うくらい、女嫌いだって言う噂も聞いたことあるし、そこん
とこどうなんすか」
「いや、ホモは確実にないけど……。そこそこフツーですって、ちゃんと女を好きになってたし。でも、まあそう言うのはないかな。今、疲れてるし、あの人」
「ふうん。奇遇だなあ。大佐殿もお疲れだからねえ。うんうん」

 ……おっさんが二人いる。この人達、オレと一つか二つくらいしか変わらないはずなんだが、どうしてこんなにおっさん臭いのか。

「イズミ中佐……よく判んないんで、お馬鹿なオレにも判りやすく易しく説明してください」
「お、下手に出て教えを請うコトを覚えたな?だから、そう言うことだって。テッちゃんは現在お疲れ中。誰のことも好きにならないって。まあ、あの顔だし、王族だし、肩書きもご立派だから相当モテるけどね」
「雑誌にも載ってたし。見た?あの美少年て記事!!」
「あっはっは。アイハラ、あれ見たんだ。すげえよね。他にもいろいろ載ってんのよ。何たって最年少で武術大会優勝、しかも美形(キラキラ王子様オプション付き)だからね。騒がれない方がおかしいよ」

 イズミ、必死に押さえて声を立てないようにしてるけど……笑いすぎだろう。

 広間から、ピアノの音が聞こえた。サワダが弾いていた。
 やっぱり、オレが知ってる沢田より、ずっとうまいと思うんだけど。気のせいかな。

「平和だね。中王の宮殿内とは思えないや」
「同感ですね」

 イズミもニイジマも、何だかまぶしいものでも見るように、ピアノの音を聞いていた。イズミの発言は、中王の軍人に言うのにふさわしい内容とは思えなかったが、ニイジマはすんなり受け入れていた。

「あ、そうだ。……何つったっけ、えっと、一等兵」
「アイハラユウト。人の名前くらい一回で覚えろよ。ニイジマも、オレのことバカにしてるな?」
「いや、信用してないだけ」

 彼は悪びれずにそう言った。コイツは……!イズミと違って気の遣える大人な男だと思ってたのに。

「ちょっと、来い。すみません、イズミ中佐。アイハラ殿と個人的にお話しさせていただいてもよろしいですか?」
「……どうぞ、私の管轄外ですので」

 イズミもニイジマも、その態度の違いは何だよ!むかつくな。
 オレはニイジマに連れられて、廊下を歩く。知らない道に連れて行かれる。迷ったらどうしよう、この宮殿、広すぎていまいちよく判らないのに。

「ニイジマ、ここは……?」
「中王軍統轄本部。実質上、勅令を直に受け、処理する役割を持ってるから、本部とか直轄部とか呼ばれてる。オレの本来の職場。その制服着てるヤツを中にいれるわけにはいかないから」

 豪華な応接間の扉……って感じだった。扉に貼ってある小さな名札には「統括本部」と書いてあった。扉の横にあるインターホンがわりの電話をニイジマは手に取った。

「直轄部ニイジマ中尉です。サエキ大尉をお願いします」

 インターホンを持ったまま、ニイジマは誰かを待っていた。話しかけようと思ったら、彼は片手でオレを制した。

「ああ、カナさん?いや、お客さんいてさ、連れて入るわけにはいかなくて。大佐殿からの命令で、ちょっとパスを出して欲しいんだけど。……じゃあ、ここで待ってればいい?うん、ありがとう」

 入口から少し離れた場所に、待合い用なのか、ソファが用意されていた。そこに座るよう、ニイジマがオレを誘導する。

「なに。楽師殿の命令って……?」
「言ってたろ?『また時間のあるときにいらっしゃい』って。オワリからここまで普通に来るのは大変だろうからさ。移動用のパスをやるって言ってんだよ」
「パス?どういうこと?」
「ああ……ホントに何も知らないんだな。ここに来るまで、下道使ってきたから時間かかっただろ?」
「うん。でも、……横断道だっけ?何か高速みたいなのがあるって聞いた」
「そ。そこは中王の許可がないと使えない、まあ、ほぼ中王軍専用道なわけだ。一人でも移動できるように、電車も通ってるし、自動車でも移動できる。あんたが一人でこっちに来るときは、そこを使えばいい。そこの通行証と、出入りでき
るところは限られるけど、この宮殿に入るパスを渡せって大佐殿が言うからさ」
「……そんなの、オレが持ってて大丈夫なの?」

 ニイジマが何か言いかけたが、統轄本部の入口が開き、誰かが出てきたコトで喋るのをやめてしまった。
 出てきたのは、オレ達より結構年上の、軍服に身を包んだ美人だった。この人もどこかで見たことがあるけど、思い出せない……。少なくとも、オレの側にいた人じゃないと思うんだけど。

「随分早かったな。さすがというか。どうやって発行したの?」
「企業秘密よ。……オワリ国の軍服?どうして、楽師様がこんな」
「いろいろあってね。また後で話すよ。あ、紹介が遅れた。彼女はオレと同じ直轄部勤務のサエキカナコ大尉。彼はオワリ国のアイハラユウト……一等兵?」
「そう、よろしくお願いしますね」

 笑顔の綺麗な、華やか美人だ。絶対どこかで見てるんだけど。サエキカナコ……?
 ……思い出した。女優の佐伯佳奈子だ。オレが知ってる顔よりも随分若いから判らなかった。こっちの彼女は多分20代後半てとこだろう。すっげえ頭小さい。

 ティアスやニイジマと、随分仲良さそうに見えるな。年離れてんのに。

「なくすなよ?とりあえず、それ持ってたら出入りするときに怪しまれることはないと思うから。あと、そのパスのことは、オワリ国の連中には内緒な?」
「え?何でだよ。あの人達には住むとことか提供してもらってるし……ミハマさんはいい人だって」
「それとこれとは別問題だ。オワリ国の王子には、大佐殿も好意的だ。でも、あくまであの国は中王の支配下。それに、今この国は内戦も多い。中王が国を統治するのを良く思わない国もある。そのためにオレ達正規軍がいるわけだけど」

 墓と呼ばれる地域が、地図上に幾つもあった。
 それを、ニイジマの言葉は現実にした。

「……だから、お前が中王の軍人と交流を持ってるって知ったら、いくら自由をくれているオワリ国王子といえど、いい気分はしないと思うけど」

『オレの味方が君の味方とは限らないし、オレ達の敵が、君の敵とは限らない。それは、オワリの国にいようと、中央にいようとね』

 ミハマさんの言葉が、こんなに重くのしかかってくるだなんて、あの時は思いもしなかったのに。
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