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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第4話  敵と味方がいる幸せ 04/07


 ピアノを弾いていたのはサワダだった。

「……誰も、いないかと思った……。墓にもいなかったから」
「サワダ!お前、体調悪いって聞いてたのに、何やってんだよ」
「お前こそ、何で死神と……」

 急に立ち上がったからか、サワダは少しバランスを崩した。すぐに持ち直したが……。

「少し、席を外していただけよ。あなたこそ、今は懇親会の最中でしょう?こんな所で油を売っていていいの?」
「すぐに戻りますよ。……アイハラ、お前もこんな所にいないで……」

 気のせいか、サワダの顔色が悪い気がする。いや、気のせいじゃないか。だってコイツ、体調悪くて退席してたんだから。

「……トージ、席を外してましょう。研究室に行くから、着いてらっしゃい」
「でも」
「いいから。雄将殿、良かったら、ピアノを使っていてください。ちょっと、出かける用事が出来たので」
「ティ……」

 声をかけようとしたオレに、「しいっ」と言って口の前に人差し指を持ってオレを制した。
 名前……言っちゃいけないんだっけ。

「あの、楽師殿。オレ……」
「また時間のあるときにいらっしゃい。あなたのために歌ってあげるわ」

 そう言って、彼女はニイジマを連れ、立ち去った。
 サワダは、じっとピアノを見つめたまま、止まっていた。

「……どうしたんだよ、サワダ」
「いや、死神は……」
「楽師殿が、どうかしたのか?」
「オレのことに、気付いたのか?」
「……気付いた?てか、お前マジで顔色悪いって!大丈夫なのかよ!?シュウジさんか?ミハマさんか?誰呼んだらいい?」

 サワダの肩を掴み、訴えるが、彼はオレを見ようともしない。

「オレでいいでしょ?ちょっとどいてくんない?アイハラくん」
「……げ!て言うか、お前、いつの間に?!何でこんな所に!??」

 今まで姿すら現さなかったイズミだった。
 サワダを掴んでいた腕を無理矢理はずされ、突き飛ばされた。オレはサワダを心配してたんだぞ。なんちゅー扱いだ!

「テッちゃん、どうする?宿舎に戻る?ミハマにはうまく誤魔化しといてあげるから」
「……シン、か?」

 イズミが苦笑いをしていた。彼もまた、どうしていいか判らないのかもしれない。

「死神が……」
「もういないよ。どうかした?」
「死神は、オレがどういう状態なのか、判ってたんじゃないのか?だから、用があるなんて嘯いて」
「さあ。オレには判んないよ。本人以外にはね」
「墓場にも行った。だけど、死神も誰もいなかった」
「そうだね、さっきまでそこにいたんだし」

 サワダの言ってることは、意味が分からなかった。
 イズミは、辛抱強いなと思った。
 サワダを否定することなく、彼を受け入れる。異常なほど気を遣っているのが判る。

「あの死神は、墓を掘るんだ」
「そうだね」
「オレもだ」
「うん」

 サワダはイズミから目をそらし、俯いた。死人のように生気のない顔が、まるで別人のようで、不気味だった。

「オレもあの女も、自分の墓を掘っているんだ」
「テッちゃん……それは……違うよ」

 イズミが初めて、サワダの言葉を否定した。

「……気持ち悪い。悪いけど、一人にしてくれ……」
「……でも」

 廊下側の出口に、立ち去ったはずのニイジマとティアスの姿が見えた。
 彼女が、オレに判るように頷く。

「イズミ、そこにソファがあるから、そこに座らせたら?」
「何言って、こんな……」
「大丈夫だって」

 そう言って、イズミにだけ判るよう、ティアス達の存在を教えた。
 イズミはいまいち納得がいかないといった顔だったが、サワダをソファまで促し、オレを伴って出口に向かった。

「……あの、この広間……」

 さすがに、イズミが遠慮がちに楽師殿に聞いていた。

「しばらく、自由に使っていていいわ。どうせ、懇親会が終わったら戻るつもりでしょう?トージ、ついでだから、廊下側の出入り口を全部封鎖しといてちょうだい」
「甘くない?大佐殿」
「同病相憐れむって言葉、知ってる?」
「何を下らんこと言ってる、あんたは」

 ニイジマは、楽師殿を見つめ、ため息を付いた。

「ところで、あなたは?オワリ国の人?」
「申し遅れました。オワリ国王子付き護衛部隊で王子の守護を担当しております、イズミシン中佐です。中王の楽師殿。お噂はかねがね」

 どうやら、イズミは彼女と初めて話すらしい。きちんと敬礼をとっていた。
 中身がとんでもない美人だと知ったら、態度は変わるかな?
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