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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第2話  これもきっと何かの縁 07/07


 ミハマさんは、オレに笑顔を見せてくれた。
 それが、どういう意味なのか、よく判らない。

 いろんなこと、誤魔化してんのかと思ったけど、そう言うわけでもないんだな。ちょっとだけ、感じた。

「シン、アイハラになんか言った?」
「あ、酷いなーミハマ。オレのこと疑ってんの?」
「ううん。疑ってないよ。オレのこと、考えてくれてんだって判るけど、やりすぎは良くないって言ってるだけ」
「……決めつけてんじゃんよ!オレ何も言ってねえって」
「信じてあげたいけど、アイハラがこんなにシンに対してびくびくしてるの見ちゃったらなあ……」

 イズミ、そこ、オレを睨むとこじゃないって。
 何でもお見通しかよ、この王子様は。

「サワダ、オレのせい?呼び出し」

 なるべくミハマさんに聞こえないように、オレはサワダの側に行って聞いてみた。

「……否定はしないけど……、まあ、いつものことだよ。犬猫拾うのとはわけが違うからな」
「拾うんだ」
「責任がとれないものは拾わないけど。まあ、お前はちょっと、特例だな。いきなり放り出すのもアイツの性格じゃ出来ないよ」

 うう……サワダが、オレに気を遣ってんのかミハマさんに気を遣ってんのか(多分両方だけど)、言葉を選んで喋ってるのが判る。
 それが余計に悔しくて、辛い。
 なんだかんだ言って、口は悪いし、やな所もいっぱいあるけど、やっぱサワダはイイヤツなんだよな。
 それが嬉しいし、悔しい。多分、これは単なる嫉妬なんだけど。いや、こっちのサワダに嫉妬しても仕方ないんだけど。

「アイハラ」

 ミハマさんが、俯くオレの目の前に来ていた。

「テツもシンもサラも、オレの護衛部隊と呼ばれる人たちはね、ただ、オレのためだけを考えて動いてくれてるんだ。オレのことを守ってくれてる、ただそれだけ。オレは彼らに命令もするし、指示も与えるけど、それら全てを強制する事はしたくない」
「強制しないって?だってそれって、この人達にとってはあなたが一番偉いって事だ」
「そうだね。でもオレは彼らには自由にして貰ってる。だから彼らはオレに意見もするし、オレの行動を制御するし、オレの言葉と違うことをすることもしょっちゅうだ。でも、それは彼らがオレのために動いてることで、オレはその意志だけで嬉しい。それで良い。だから、それを理解した上で、オレの言葉を聞いて」

 何だよ、何が言いたいんだよ。

 何でこんな、オレ、冷や汗とか流してんの?!息が苦しい。
 どうして誰も、何も言わないんだよ?サワダも、ここはつっこむところだろ?イズミだって、お前のしたこと……。
 イズミのしたことも、サワダやシュウジさんの態度も、全て知ってて、受け入れて、その上でってこと?

 ミハマさんは目を伏せ、再びオレの目を射抜いた。

「君は、どうしたいの?」
「……元の時代に戻りたい。その方法を……探したい」

 オレが振り絞った言葉に、サワダが軽く首を振った。

「……なにも手がかりはないし、オレは言っただろ?『滅びることが判ってる時代』に戻ってどうする?」
「だから、すぐ滅びるわけじゃないし、オレの場所は……」
「そうだね。君の場所はここじゃないと思うよ、オレも」

 ミハマさんは、理解してくれてる……。
 しかし、そこに割り入ってきたのはイズミだった。
 その行為は、まさにミハマさんが言った通り、彼の臣下でありながら、彼に意見するものだった。

「ミハマ、聞きたかったんだけど、君はそのアイハラ大尉のそっくりさんを拾ったの?懐に入れるの?オレ達みたいに。オレは、そんな親衛隊にいたような顔のヤツはイヤだし、時間旅行者だか何だか知らないけど、知りもしない、撮った記憶もない写真やら話やらを語るようなヤツは気持ち悪い。オレは……」
「拾ってもいないし、懐に入れるつもりもない。正直、アイハラをオレの懐に入れても、オレは多分責任はとれないし。責任をとる気もないよ、酷い言い方かもしれないけどね」

 うん、酷い言い方。今までのミハマさんとのギャップにびっくりしたって。確かに、気を持たされても困るけど、責任をとる気もないって言い方はどうよ……。

「でもさ、オレは逆にね、ここにいるアイハラが、テツやシンと何らかの関わりを持ってたから、それがそっくりなだけの別人だったとしても、少しでも彼の助けになってあげようと思ったんだ。シュウジが言うような『生まれ変わり』がホントにあるなら。こう言うの、多分何かの縁だって思うんだよ。面白いだろ?元々全然関係なかったはずのオレ達が、ここにこうして集まってるのが、過去からつながる何かの縁だとしたら、オレは嬉しい。オレには、アイハラは「アイハラ大尉」のそっくりさんじゃなくて、オレ達の縁を教えてくれる存在みたいに思ってる」
「だから、自由にさせてやるって?」

 ため息をつきながらそうぼやいたのはサワダだった。噛みついたはずのイズミはあきらめ顔で黙っていた。

「うん。それがアイハラの意志なら、そうさせてあげたい。それは、オレ達がどうこういう問題じゃない。誰かがどこへどう進んでいくかなんて、自由で勝手な行為だ。それを邪魔するのも自由だし、手助けするのも自由だ。だけど、意志すらも封じ込めるようなことはしたくない」
「お前の意志は、手助けしたいってこと?」
「どんな結果になってもね」

 ミハマさんの言葉を、少しだけ理解出来た気がする。
 そして、彼が突き放したように言うように、どんな結果になっても、それはオレの意志で起こした出来事で、責任はオレにある。

「オレを手助けしてくれるなら、トウキョウに連れてってください」
「トウキョウ?いいけど、何でまた?」

 ミハマさんに答えを求められるが、首を振るイズミとミナミさん。フォローしてくれたのはサワダだった。

「中王正規軍の中に、知り合いがいるんだと。多分、死神にくっついてるヤツだよ」

 ちょっと待て、サワダ。死神にくっついてるなんて、そんなことオレが聞いたときには言わなかったじゃないか。

 要するに、誤魔化してたってことか?

「そっか、あの人の側にいるんだ。……オレは、あの人は好きだけどな。テツもだろ?」
「別に。さっさと戻るぞ。呼び出し食らってんだから」
「はいはい」

 そんな二人の様子を見て、イズミとミナミさんが子供を見守る夫婦のように笑ったのが印象的だった。
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