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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第2話 これもきっと何かの縁 06/07
ソノダ中佐が立ち去り、姿が見えなくなったのを確認して、ミハマさんと一緒に来た女性以外、全員でため息をついた。
空気が重いっつーか……やな感じだったなあ。
「ミハマ!仕事はどうした!?忙しいとか言って、すぐそれをいいわけにする!」
「あ、やだな……シュウジみたいなこと言っちゃって」
緊張感がとけた途端、いきなり怒鳴りつける(でも顔は怒ってない)サワダの態度に、ミハマさんは思わず一緒に来ていた女性の後ろに隠れる。
ずっと気になってたけど、この人、どこかで見たな……。
オレがこんな美人、忘れるわけない。
表情は固いけど、何つーか、クールビューティーという言葉がぴったりで……。ストレートのさらっさらの長髪に、ゴルチェっぽいイメージの黒のニットとスカートが、いい雰囲気だ。(サワダもイズミも私服だし。軍隊じゃないの?この人達?!)
「あー!南 紗来さん!」
「……?何故、私のことを?これが噂のアイハラ大尉のそっくりさんなんだろう?」
オレのこと指さしちゃうか、あんたは……。思わず力が抜けちゃうよ。
「あー、この人、ストーカーなの。気にしちゃダメ」
「イズミ!何でそんなあること無いこと言うんだよ!むかつくな!大体、お前がこの人紹介した上で、釘指したんだろ!?『手えだしたら……』」
身長差と体力差がずるい!
イズミはオレの口を無理矢理手で塞ぎ、そのまま頭を持って持ち上げて上下に振り回し、南さん達から距離を取る。
その間、多分2秒くらい。
「……『殺すよ?』だろ?」
「……すみません、もう言いません。イズミ中佐」
あっちの泉は、もっと優しく言ってたって!『冗談』って顔だったって!この人は本気だよ!怖すぎる!
「そんなこわがんなよ、冗談だって。お前みたいな弱そうなヤツ、オレはホントにどうでも良いんだから」
弱そうって……。
なんか、引っかかるよな~。
「シン。あんまりアイハラのこと、いじめちゃダメだって。アイハラ大尉とは別の人なんだよ?判ってる?フツーの子なの。軍人じゃないし、君の敵でもない」
ちょっと困った顔でミハマさんがイズミをたしなめる。
イズミはオレの腕も引っ張り、無理矢理彼らの輪の中に連れ戻したと思うと、わざとらしくオレと肩を組んだ。
「判ってるよ。ほら、仲良し仲良し」
「判ってないよ」
ミハマさんの言うとおりだ!お前のウソなんか、このキラキラ王子様にはお見通しだっつーの!
「でもミハマ、オレの敵かどうかなんて、判んないじゃーん♪まあ、敵にもならないけどねー、アイハラくん」
「シン、離してやれって。なんかいじめっ子みたいになってるぞ、お前。ミハマが怒るぞ」
見かねたサワダが、オレとイズミの間に入ってくれた。軽く手を入れ、引き離してくれる。
「まだ怒ってないよ」
「殿下、顔が怒ってますよ」
殿下……。ああ、ミハマさんのことか。サワダもイズミも呼び捨てだったから、あんまり階級差を感じなかったけど、ミナミさんの態度はその、感じなかった部分がはっきりする。確か、イズミより結構年上だった気がするし。
「……ミナミさん、で良いですか?あなたも、王子の護衛部隊の方?」
「おいおい、アイハラくん、随分オレの時と態度違うし?」
当たり前だっつーの。オレだって人を見て態度を決めるわ!
「ええ。ミナミ サラ 中佐待遇です。実際は大尉ですが」
表情の固い人だな。ものすごい美人だけにもったいない。
それに、階級なんて言われても、よく判んないよ。とりあえず、この人達は王子付きだから特別って事くらい。
でも、大尉って事は、殉職して2階級特進したこっちのアイハラユウトと同じか。
サワダのさっきのフォローを考慮して、ミナミさんの年齢が多分22歳くらいだとして(確か4年生のはず)、もしかして優秀ってこと?これも特別扱い?
「いいよ、そんなの。どうせ元老院とかあの辺りがうるさいだけだし、実際の権限は中佐扱いなんだからさ。めんどくさいよね、王太子付きにするなら階級が低すぎるって言ったり、まだ若すぎるのに出世はさせられないって言ったり」
「ですが、軍に所属している以上……」
「良いの、サラはオレ付きの護衛官。そんだけ」
あれ、彼女、笑った……。すっげー可愛い。
愛想笑いが苦手って事?それとも、ミハマさんの前だから?
「悪いね、アイハラ。ここにいるとちょっと堅苦しいと思うけど。軍とか持ってるし、いろいろな人たちがいるから……仕方ないって言うか。ホント、大変だと思うから。今、外で暮らせるとこ、探して貰ってるから、ごめんね」
……そういうこと?てっきり、ただの厄介払いかと思ってた。
ミハマさんて、いい人だな。好きにして良いって命令出したり、オレが王宮にいなくても良いように、住める所探してくれたり。でも、せっかくの好意だけど、やっぱオレは元の時代に帰りたい。
だって、いくらこの王宮から出たって、この時代が危険で、オレに合わないのは確かだ。
だって、顔とか性格が似てるって言うのは別にしたって、サワダやイズミはオレと同じ歳なのに、戦争とか、戦いとか、恐ろしい世界に首を突っ込んでる。
そんな世界にはいられないし、いたくない。
「アイハラ、どうしたい?君は」
「……いえ、別に」
帰りたい、でも……。
ミハマさんは、好意でしてくれてる。それに、立場もある。
シュウジさん達に言われたときはよく判ってなかったし、サワダやイズミは友達みたいにしてる。でも、ミナミさんのように考えてる人もいる。
オレが思ってるより、ミハマさんて大変なんじゃないの?
なのに?何で簡単にそう言うこと言うんだよ。
一番偉いわけじゃない、面倒くさいことがいっぱいある、堅苦しい、大変だと思うけど……って、全部あんたのことじゃん。
簡単に、我が儘なんか……言えないんじゃないの?これ……。