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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第2話  これもきっと何かの縁 04/07


「は?」

 サワダからの意外なお返事。てっきり、イズミがまたあの意地悪口調で言ったのかと思いきや。

「親衛隊のヤツらに聞いた方がいいよ。一緒に戦ってたから。オレは少し話をする程度だったし」

 なにそれなにそれ。ちょっと話しただけのヤツを、墓に埋めるわけ?!顔もしっかり覚えてて……?何だよそれ!

「親衛隊には、オレから声かけといてやるよ。ミハマに好きにしても良いって言われてるしな、コイツは。親衛隊くらいなら……」
「テッちゃん、それは親切すぎやしない?確かに親衛隊のアイハラユウトは死んだけど、コイツは生きてるんだよ?」
「生きてる人間にも死んでる人間にも気を遣うのは当然だろ?それに、親衛隊はコイツと同じ顔をイヤってほど見てるんだから、事情を話しておいた方が、トラブルが少ない。下手に勝手に動かれて、トラブルでも起こされたら事だ」
「そうだけど……、死人だと思って、優しくしすぎだ。こんな得体の知れないヤツ」

 死人だと思ってって……。どういうことだよ。

「っとに、テッちゃんはバカだ。ミハマが怒るよ?」
「生きてる人間に気を遣うのに、怒るかよ、アイツが」

 なんか、ちょっと、いい雰囲気じゃないよ、な?

 イヤな感じだよ。

 めんどくさい。アイハラユウトが墓から出てきて教えてくれればいいのに。
 何でサワダは、お前のことをこんなに覚えてるんだよ。何も知らないくせに。

「イ……イズミは、知ってたのかよ、アイハラのこと!さっきなんかいろいろ文句言ってたじゃんか」

「呼び捨てにすんな。さん付けか階級付け推奨ね!君は。別に、アイハラ大尉のことなんか、オレは知らない。オレが知らないって事は、テッちゃんも知らないし、その程度の人間がこのひねくれた根暗男のことなんか知るわけがない。ミハマくらいだよ、誰にでも優しくて、誰でも受け入れてくれるのは」
 
 なんか、やっぱり喧嘩腰な上、酷いことを言われてる気もする上に、話を逸らすのにも失敗した気がする……。
 アイハラユウトのことも知りたいし、この世界のことも知っといた方がいい気もするし、こいつらともコミュニケーションとっといた方がいい気がするけど、この二人の雰囲気に耐えられない。
 何でこんなにこいつらの持つ空気は重いんだよ!
 別にきつい口調でもないし、さっきまでのような冗談ぽい言い方なのに、空気が重い。
 内容も、なんかあんまり良い方向に行ってないし。

「ミハマさん……なら、知ってる?コイツのこと」

 暑くもないのに、オレはだらだらと汗をかいていた。
 その汗を指先からとばすばかりの勢いで、オレの墓を指さす。

「多少ね。自分を守ってる連中とは、ちゃんとコミュニケーションとってたからさ」
「……イズミやサワダはとってないんだ。まあ、イズミはヘラヘラしてて笑顔だけど、喧嘩腰だから無理かも」
「さん付け推奨ねって言ったろ?失礼なこと言うんじゃないよ。ちゃんととってるって、この根暗とは違って」
「根暗って言うな」

 あ、ちょっと、雰囲気が良くなった。

「ただ、他の連中がどうでも良いだけだよ」

 前言撤回。

 そう言ったイズミの不敵で含んだ笑顔が、とてつもなく怖かった。
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