Copyright 2006-2009(C) Erina Sakura All rights Reserved
このサイトの著作権は管理人:作倉エリナにあります。禁無断転載・転用
Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第1話 世界を見る 05/05
いやだな。その、まっすぐな感じ。サワダはそう言うところがずるい。
責めるような。だだをこねるような。
でも、あっちの沢田とこっちのサワダが別人だと思ったら、本当にきっちり別の人生を歩んできた他人に見えてくるから不思議だ。
こっちのサワダはひどく不器用で、ひどく優しい。
オレの扱いと立場が違うからかもしれないけど。
「別に、すぐ地殻変動が起こるわけじゃなし。それに、生き残った人もいたわけだろ?もしかしたら生き残るかもしれないじゃん?」
それに、ここには誰もいない。
友達も家族も、……彼女も。
また、彼女の隣に戻りたい。
「だいたいさあ、オレ、この世界は無理、あり得ない。オレがいた時代は、戦争なんか遠い国のお話だったわけ。そんな、手から火を出したり、後ろに剣背負ってたり、マッドな研究者がこんなでかいとこに住めるような時代じゃないの!」
「最後の関係なくありません?!アイハラくん一言多いですよ!」
一応、自覚はあるんだろうか、この人。
「大丈夫だ。この時代でもただのマッドな人はこんな所に住めないから。こいつはこう見えてこの国の王の親戚なんだ。一応、軍師だし」
「あ、そーなんだ。納得。でも、オレ、戦争は無理だよ」
「判ってるよ。見れば判る。なーんにもしてこなかった顔してるよ、お前は」
それはそれで失礼では?
「それに、戦争がないってことは、海とか空とかからやってくるでっかい獣みたいなのと戦ったりはしたこと無いよな、もちろん」
「……すみません、初耳なんですけど!」
今度は思わずシュウジさんを見てしまった。
「説明しましょうか?」
「……聞きたくないですけど、説明してください」
「仕方ないですね。歴史を紐解くとですね、魔物の出現は……」
「地殻変動が悪いんだよ、地殻変動が。史実に残ってる話から、地殻変動とほぼ同時に、海とか空から人にあだなす獣が現れたってわけだ。ちなみに、それと一緒に空と世界を統べる王もな」
「テツ……!私の仕事ですよそれは」
「いいじゃん。お前の説明は長いんだよ。こいつは奴らと戦えるわけじゃなし、細かいこと知ってたって仕方ないだろ」
だめだ!この世界は明らかにオレの肌に合わない!野蛮だよ。無理無理!
思わず首を横に振ってしまう。
しかし、サワダはホントに口が悪いな。どこまで行っても。
引っかかる言葉をいっぱい言う。
「戦う気はないけど……。戦争って、その魔物としてるの?細かいこと知ってたら戦えるわけ?」
「魔物とばっかりじゃないさ。他国との関係もあるし……今、この国は中王の支配下だし。人間とももちろん戦争する。相手が魔物だろうと、人だろうと、戦争するなら情報は大事だろ?」
うーん……なんか誤魔化された感じがするな。
「とにかく、オレは帰る!」
「どうやって?」
「シュウジさんが調べてくれるさ!(多分)」
「あなた、なに勝手なこと言ってるんですか……」
あ、嫌そうな顔だな。大体、さっきから煙草何本吸ってんだよ。
「調べてくれないんですか?オレ、多分他にも色々興味深いもの持ってますよ?」
「……まあ、良いですけどね」
「じゃあ、その間ここでお世話になるってことで!」
「お前、なに勝手なこと言ってんだ!大体、ここに連れてきたのはお前が怪しいからであって……」
「いいじゃん。オレが帰る場所がないって知ってるのも、そう言ったのもシュウジさんだし。そっくりさんを養ってたわけでしょ?」
「……シュウジ……」
「私は知りませんよ。連れてきたのはあなたでしょう?この子の話を聞くように言ったのはミハマですし」
サワダはわざとらしく大きなため息を付いた。
その程度の嫌がらせなんか、何とも思わないし。
こんなわけの判らんまま、はいそーですかと放り出されても困るし。
オレはただ、戻りたいだけなんだから。