無料連載小説サイトwing of fragment です。 ファンタジー恋愛群像劇、学園恋愛物、学園恋愛FTをテーマにメルマガ、サイト上にて小説を連載しています。
Copyright (C) Erina Sakura All rights Reserved. Please don"t distribute any texts and images from this website without permission

連載,小説,FT恋愛,FT学園,BL,学園恋愛,携帯,女性向,ファンタジー恋愛群像劇,学園恋愛物,学園恋愛FT

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 序章 第1話  世界を見る 04/05


 シュウジさんが何を言ってるのか、オレにはよく判らなかった。

「しかし、あなたは嘘をついていない。それも本当です」

 じゃあ何でこんなことに?オレも世界も嘘をついていないのなら、このズレはいったい何なんだ?

「……シュウジ、詳しく話せ。そう言うからには、何か根拠があるはずだ」
「ええ。とりあえず、アイハラくんを椅子に座らせてあげてください」

 シュウジさんがあいていた椅子をオレのそばまで運び、沢田がオレを支えるようにして椅子に座らせた。彼の力を感じたとき、初めてオレが「何とか立っていられるだけ」の状態だったことに気付いた。

「アイハラくん、私の声が聞こえますか?」
「……聞こえてます。シュウジさん、オレに判るように説明してください。なんか、混乱しちゃって……どういうことですか?」
「アイハラくん、君のいた世界では、暦をなんと言ってましたか?」
「西暦とか平成とかの元号ってこと?」
「まあ、そうですね。平成は和暦に当たります。西暦というのは地殻変動以前に使われていた紀年法ですね。あなたにはその方が判りやすいでしょう。今、あなたが別の世界だと思っているこの場所は、西暦で言えば2500年ごろに当たります。現在は使われていない元号なので、正確な年数は知りませんが。ですから、あなたはパラレルワールドに来たわけではなく、タイムスリップをしたわけですね。何かのショックで」

 パラレルワールドも充分すぎるほどショックだけど、タイムスリップて!?別世界なのは一緒だよ!500年も経ってんなら!

「なんで、そんなこと言えるんですか?何かのショックって……」
「500年前、この星の環境を覆すほど、大きな地殻変動が起こりました。それに伴い、ほぼ全ての都市が壊滅。この国も例外ではありません」

 壊滅……?

 思わず沢田の方を見てしまったが、彼はただ目を伏せた。

「生き残ったものは僅かでした。しかし、何とか復興し、今に至っています。500年……いえ、300年ほどかけて文明を取り戻したのです。この国はその時の生き残りが出来る限り元の状態のまま復興させようとした結果こうなったのです。その際、あの壊れた城などはあの災害を忘れないために残されたものです」

 この国が、そう言う歴史をたどってきたのは判ったけど……。

「でも、オレの国のことじゃないかもしれない。違う国の歴史かも」

 シュウジさんは悲しそうに微笑んだ。 

「だといいのですが、根拠があります。1つ、あなたはあの崩壊した遺跡の元の状態を知っている。そして、崩壊したことを知らなかった。2つ、この街の作りを知っている。3つ、あなたはあの災害を全く知らないのに、この国の過去を知っている」
「過去って?」

 彼は部屋に戻ると古びた(と言うよりぼろぼろの)本を持ってきた。本よりひとまわり大きい、透明な密閉容器に入れてあった。

「あなたが見せてくれた作家の本ですよ。何度もリメイクされて世に出る内に、物語を知る人は多くても、誰の作品かは判らなくなってしまった。おとぎ話のようなものです。地殻変動前の貴重な資料です。なかなか、目にする機会はないんですよ。あなたは、貴重なものを持っていた」

 年月を経てはいたけれど、はっきりと読みとれる。オレの持っていた本と、全く同じものだった。思わず、発刊日も確認するが……オレの持ってたヤツの3年後。確かにオレも古本で買ったけど……。

「じゃあ、沢田の写真とか、泉のこととか……」
「それこそまさに、パラレルワールドの否定です。確かに似ているし、関係性も近い。しかし、姿形が似ていても、性格や言動が同じようでも、生き方は全く違うでしょう。少なくとも、ここの連中は例外として、シンはカンタンに他人に写真に撮られるようなタイプではありませんし、彼が男の友人と連む姿は考えにくいですね」
「じゃ、なんでこんな、そっくりさんが」

 こうなったら、逆に沢田にも何か言って欲しかった。
 でも彼は、彼の優しさで、ただ黙っていた。

「ここからはあくまで仮説です。輪廻転生、と言う考え方を知っていますか?肉体は滅んでも霊魂は永遠に消えず、再びこの世に生まれ変わる。災害前にあったある宗教の言葉です。様々な解釈があるかと思いますが、平たく言ってしまえば生まれ変わりのことを指しています。生まれ変わった魂は、前世でのことを覚えてはいないですが、同じような存在になると。それは男が女になるかもしれないし、虫や動物かもしれないけれど」
「シュウジさんは、オレの知ってる人たちは、生まれ変わりだって言いたいの?」
「ええ、まあ。そんなものでしょう。そっくりかもしれないけど、全く違う人生を歩む、別人。そっくりだと思ってるのは、おそらくあなただけです。テツの様子を見る限りは。そしてあなたも我々から見れば、ただそっくりなだけの別人です。あなたの場合、別人過ぎですがね」

 そうだよな。
 ここには、別の「アイハラユウト」がいたんだ。
 そいつは、サワダの手で埋められたんだ。

「ねえ、シュウジさん。何かのショックって言ったよね。その原因が分かったら、オレ、元の世界に……時間に帰れるのかな?」
「かも、しれませんねえ……。確証のない話です」
「……そのうち、地殻変動で、一旦滅びる世界だと判っていて、何で帰るんだよ?」
 prev<<<  Switch[The moratorium is selected] list  >>>next
 >>>アルファポリスに登録中。
 >>>ネット小説ランキング>「Switch【モラトリアムを選ぶと言うこと」に投票
 >>>「小説家になろう」にて連載中。ぜひレビューお願いします。

関連コンテンツ

 >>Switch Charactors(イラストつきキャラ紹介)
Copyright 2006-2009(C) Erina Sakura All rights Reserved
このサイトの著作権は管理人:作倉エリナにあります。禁無断転載・転用