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Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと]

Switch[モラトリアムを選ぶと言うこと] 続・序章 第7話 続・選ぶと言うこと 05/10


実の息子に喧嘩をふっかけた男の顔は、怒ってるようには見えなかった。ただ、この人はホントのところ、何を考えてるのかよく判らない。

「職務を遂行してるだけです。最後まで責任をとるのが、主のやり方ですから」

 わざと?わざとなのか?この人にあえてそのキーワードを出すか?ミハマと犬猿の仲だというのに。

「最後まで、ねえ。拾ったからか?ホントのところ、どうなんだ?この子の話はどこまでホントなんだ?お前が拾ったと聞いたけど、彼とどこで会ったんだ?」
「N町のカフェで。いつの間にか横に」
「なんだその答えは」
「そう言われても、そうとしか言いようがない……です。座ってたら急に横にいましたから」

 えっと……まあ、事実ですから仕方ないですよね。
  そして、当然オレに矛先は向きますよね。

 全員の視線が、オレに注がれる。

「君は?どうしてたんだ?テツの隣に座るまで」
「いえ、その……あんまり覚えてないって言うか……。同じ顔のオレの友人の横に、座ってただけです。そしたら、でっかい剣を持った人と入れ替わってたって言うか。何度か地震があったのは覚えてるんですけど」
「だろうね。君の話が本当なら、地震なんかしょっちゅうあっただろう。その、そっくりの別人がいるって言う話が似すぎていて、どうも引っかかるんだ。君の話が本当だって言う証明はあるのか?」

 ちらっとティアスを確認してから、携帯をとりだした。多分、新島とかの写真は見せない方が良いのかな。ニイジマのこと誤解されるから。でもそうすると、イズミのこと知らなさそうなサカキ元帥の手前、泉の写真も話が変な方向に行きそうだし。
  ああ、もうめんどくさい。空気とか読めるわけもないし!!!でも彼女の手前、読んどかんとまずいだろう、自分。

「それ、貸して」

 空気読むとか以前の問題。サワダ父は当たり前のように手を差し出した。何だろう、この人。実はものすっごくマイペースなんじゃないか?
  しかも口が裂けても本人たちには言えないけど、ミハマに似てないか?
  彼はオレからほぼ無理矢理携帯を奪うと、ちょっと戸惑いながらも目当てのファイルを見つけたようだ。

「なんで、オワリの奴が中央で作ってる携帯を持ってるんだ?」

 サワダを連れたまま、サワダ父の後ろから画面をのぞき込むサカキ元帥。親子共々めんどくさそうな顔をしていた。

「似てるけど、違うだろう。よく見ろ。こんな耐久性が低そうな機種、作るのか、お前らは。インターフェイスも似てるけど、微妙に違う」
「いんたーふぇいす?」
「……もう良い、黙ってろ。オレが悪かったから。多分、このあたりの写真のことだろ?彼らが言ってるのは」
「確かに、妙な写真だな。正規軍で見たことある顔もちらほら写ってるな。これなんか、お嬢ちゃんとこのニイジマとか言う奴じゃないか?」

 大丈夫か?なんか余計なこと言われないか?
  思わずティアスを見るが、彼女は落ち着いていた。オレの方は見てくれなかったけど。

「それくらいの年の頃、ニイジマ少尉は士官学校に入ってたから、トウホクの方にいたはずよ。そこからオワリに行くなんて、不可能なのよね。私もその写真の中に何人か正規軍で見た顔がいたから調べてみたけど、年齢も出身もばらばらの人たちが、同じ画面に同じ年で写ってるのはおかしいのよ。合成の線も考えたけど、私の写真もあったし」

 調べたんだ。なんかちょっとだけショックだ。

「たしかにな。イズミ中佐が写ってるのも不思議だし。テツと同じくらいに見えるな、この写真の彼は。イズミ中佐が写ってるだけなら、アイハラ君が彼と交流があったから、という線も考えられるが」

 イズミが写ってることを、シュウジさんたちも不思議がってたな。何なんだ、あいつは。

「しかし、君はろくなものを撮ってないな。何だ、このチラシの画像とか」
「勝手に人の携帯を見といて、文句つけないでください。地図とか写メっといた方が忘れなくて良いじゃないですか」

 こういうとこ、ホントに親子だ。サワダも嫌そうな顔をしてるけど、お前も結構同じこと言ってるぞ!!!

「ああ、おもしろいもの出てきた。確かにこれは変だ」

 そう言って、サワダ父はサカキ元帥にではなく、サワダに携帯を見せた。

「ライブのチラシのようだな。お前と、彼女が写ってる」
「オレが、ピアノ?」
「羨ましい話だな」

 それだけ言うと、彼は携帯をミズキさんに渡した。

「オレが?」

 サワダの疑問は、当然オレにも向けられた。はっきり言って答えたくありませんけど。

「私と一緒に写ってるって言ってた。そんな写真あったっけ?」

 チラシの地図の部分を写したやつだったから、見逃してたんじゃないか?ティアスの口からその話題が出なくて、ちょっとほっとしてたのに。やっぱり気になるんだ。

「違う人だよ。二人とも。オレの友達の話だから」
「……その、お前のお友達ってのは、一体何してんだ?」

 そういう聞き方するか?サワダを捕まえたままの元帥も、ちょっとだけ苦笑いしてた。自分にそっくりだから、気持ち悪いんだろうけど。

「詳しくは知らないよ。呼ばれて見に行ったりはしてたけど。……受験で忙しかったからあまりしてなかったみたいだし。沢田が後ろでピアノを弾いて、ティアスが歌って。割とハードな感じのピアノ・ロックだった」
「二人で?」
「うん。バンドのほかのメンバーは入れ替えてるって言ってたし。でも、沢田は『巻き込まれた』って言い方してた」

 そうだよ。別に気にすることじゃない。あいつらが傍目から見て、どう考えても付き合ってるように見えたとしても、本人達は違うと言い張ってたわけだし。

「オレの知ってる沢田は、ここにいる男とは違う。ティアスも。」

 自分に言い聞かせるように。

「そうだな」

 そう言ったサワダが、少しだけ目を伏せた。残念ながら、オレは彼の「痛々しさ」を無視できるほど、彼を嫌いではなかった。本当に残念だ。
  だから、何もフォローできない自分の歯がゆさが、それこそが不愉快だ。

「テッキ、携帯渡されても!規格が違うから、データの吸出しはできないよ」
「何で?なんかあるだろう。コピーも取れないのか?つーか、データ自体の検証もできないのか?」
「あんた簡単にそういうこと言うけど、どうしようもないときはどうしようもないのよ、もう」

 オレのケータイだっつーの。勝手に何しようとしてんだよ!!
  ……と言ってやりたかったが、残念ながら囚われの身。縛られてるし。
  こりゃしばらく帰ってこないな、ケータイ……。ミズキさんからケータイを受け取ったサワダ父が、シュウジさんが見てたときと同じ目つきで眺めてるし。この人ももしや、壊すタイプの人だろうか。

「私も聞きたいな。私や中佐に似てるその人たちは、どんな風だったの?」
「……どうって聞かれても。別に、普通だよ」

 普通て言葉、超便利。どうって聞かれたって、何をどういえばいいかわかんないしね。

「しかし、正規軍の死神と呼ばれる女と、オワリの雄将殿が、二人でライブとは。ずいぶん平和な話だな。だとしたら、あのオトナシには酷なことをしてるのかもな」

 サカキ元帥が、サワダの後ろでため息をついた。中王であるオトナシハルカのことを、彼らは心配しているように見えた。

「もしやとは思うけど、君は『オトナシハルカ』って名前に覚えは無い?この子達みたいに、知り合いにいたりとか」

 そういえば……オトナシハルカ?この名前、聞いたことあるぞ?

「……聞いたことある。知り合いじゃなけど、オレのいた時代のジャズピアニストだよ。CDも持ってる。ゆーめいじん」

 といっても、泉やティアスから薦められたから知ってるんだけど。

「……CD?それ、何か顔がわかるものはある?」

 CDって無いのかな、この時代には。サワダ父はインターフェイスがどうのとか言ってたくせに、妙な感じだ。

「いや、今は持ってないですけど。さすがに」
「だけど、顔は知ってる。そういうこと?有名人って、どういうこと?」

 ミズキさんがこの話題に食いついてきた時点で、余計なことを言ってしまったことを後悔した。なんか、心配そうだったから、言ってみただけだったんだけど。

「CDって判ります?」
「判らないよ」
「えっと……ミュージシャンです。彼は音楽で生計立ててたんですよ。たまにテレビにも出てたらしいし、CDは要は音楽のデータが入ってるんですけど、それがお店に行けばどこでも買えたし」

 オレはこの世界に来てからテレビを見させて貰えてないのでどんな感じか判らないけれど、ミズキさんたちはそれで納得してくれた。

「君の知ってるオトナシは、何かあの子と関係があった?」
「いや、オレは直接関わったことはないから、よくは知らないですけど。でも、オレの知ってる時代のティアスは、もともと彼と仕事をする可能性があったって言ってましたよ」

 そういったら、彼らは妙に納得した顔をしておきながら、黙ってしまった。

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